ファーストリテイリングも実施 株式分割のメリットとデメリットは?

2022年12月28日 08:16

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 ユニクロを展開するファーストリテイリングは12月15日、株式分割を発表した。2023年3月に1株が3株に分割される。配当金も分割を考慮した金額に設定される。

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 株式分割とは、現在の1株にあたる株式を分割して発行済株式数を増やすことである。ファーストリテイリングの例で言えば、10株保有している投資家は分割後には30株を保有することになる。当然ながら、1株あたりの価値は下落し、株価は下がることになる。

 日経新聞の報道によれば、今回の株式分割には、東京証券取引所による最低投資金額の引き下げ要請が背景にあると言う。「貯蓄から投資へ」の流れの中で、投資単位が50万円を超える企業に対しその引き下げを促し、 それによって個人の投資機会を増やす狙いがある。

 実際、ファーストリテイリングの株価は12月15日終値で8万4,570円だ。購入するためには100株単位となるため、約845万円が必要となる。今回の3分割によって、単純計算で投資単位が約282万円になる。

 この投資単位が高いか安いかは投資家によるであろうが、政府が12月に発表した新たな「NISA」(少額投資非課税制度)で定める年間投資上限の360万円と比べると、まだ高額である感は否めない。

 株式分割は、投資家にとっては株式が購入しやすくなることや、配当や優待の設定によっては魅力ある銘柄となることがメリットである。実際、ファーストリテイリングの分割後の配当金は1株あたり230円に設定されており、従来の予想と比べると実質増配である。

 株式分割する企業にとってもメリットはある。株主が増えることで特定の大口投資家の影響を減らせ、株価形成の安定性も高められる。結果、企業へのファンを増やすことにもつながる。また分割実施後は流動性が高まることが投資家に歓迎され、株価が高くなる傾向があると言われている。

 日経新聞によると、東証がまとめたデータでは、投資単位が50万円を超える企業は、10月26日時点で上場企業全体の5%にあたる197社存在している。株式分割によるメリットが企業、投資家双方にあれば、さらに多くの企業が分割を進めれば良いと思われるが、一方でデメリットも存在する。

 企業にとっては、株主が増えることにより株主総会や株主対応の事務コストが増える。投機的な株主が増えることにより、企業価値と合わない時価総額になるリスクもある。また、分割手続きにかかるコストも発生する。

 ファーストリテイリングは、TOPIXの構成比率がトップで7%を超える。そのような大企業がドラスティックな分割をすると、株価や流動性の変化が市場全体に影響を与える恐れもある。

 投資家にとっても、ボラティリティが上昇する可能性があることはデメリットだ。一般に分割後の株価は安定すると言われているが、投機筋の参入によって価格変動幅が大きくなることは想定される。

 株式市場全体から考えれば、株式分割によって投資活動が活発化することは望ましい動きと考えられる。2022年は、任天堂の分割も大きな話題となった。今後もこうした動きは期待されていると言えるだろう。(記事:Paji・記事一覧を見る

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