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ソフトバンクGが、アリババの含み益を吐き出してしまった怖さ!
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ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は、無名時代のアリババに果敢な投資をしたことで「投資先を見極める目を持つ男」と思われてきた。そんな孫氏が得意としてきたのは、新しい産業領域のスタートアップ企業の上位先に軒並み投資することだ。
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投資先の中で半数が伸びて、半数が淘汰されるとする。例えば、4社に1億円(SBGの例にしてはスケールが小さいが)ずつ投資して5年後に2社が10倍の価値となり、2社が破綻したとする。2社が10倍なので20億円、当初の投資が4億円だから、精算すると16億円のリターンになる。
元々業界の上位先を抑えているので、突然現れるダークホースの懸念はほとんどないから、安全・確実で「企業分析」なんかも必要としない。マーケットが拡大している限りは、金さえあれば、誰でも確実に儲けられる方法だった筈だった。
10兆円ファンドを創設した孫氏の思惑は、21年3月期に過去最大になる約5兆円の純利益を計上して見事実現した。孫氏が決算説明会で「5兆円や6兆円の利益が出ても満足しない」と口にしたのは、その時点での高揚感を物語る。
翌22年3月期には反対に2兆円近い過去最大の赤字を計上して、「取るべき行動は徹底した守り」と意気消沈するのだから、分かりやすい。現在はその流れを引き継いだままなので、23年3月期に再び大幅黒字計上で復活することは不可能だろう。
不調の要因は言うまでもなく、米中対立の激化とロシアのウクライナ侵攻による世界経済全体の収縮だ。
どちらも根が深く、簡単に収束する見込みは薄い。全体が収縮するなどというネガティブなことは、孫氏の想定外だったのかも知れない。
22年9月期に、アリババの株式先渡契約を現物決済したため、持分が大幅に減少した。今まで簿価評価が許されていた持分法適用会社だったが、時価評価に変更されたため含み益を吐き出し、数字上の利益は膨らんだ。
例えば、100円で買ったもの(簿価)を、時価の1万円で評価したので、帳簿上は9900円の利益が生まれたことになるが、手持ちの現金は一切増減しない。逆に時価評価になったことで、今後中国政府のテック企業に対する厳しい対応が、SBGの決算を直撃することになる。そしてアリババ株が時価を維持したとしても、SBGがアリババ株を処分した際に、キャッシュは生まれるが利益は生まれない。
SBGの本当の試練は、ここから始まる。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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