FTXが破綻して被害全貌すら見えない中、最大手のバイナンスが日本に?

2022年12月2日 13:41

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 11月11日に連邦破産法11条の適用を申請して破綻したFTXのサム・バンクマンフリード元CEOは、暗号資産業界の開明派とみなされていた。どこまで本気だったかは不明だが、業界にルールを導入することに前向きで、そのためのロビー活動にも積極的だったという。30歳の若さで、兆円単位の資産家として人々の羨望を集めていた上に、2020年の大統領選挙に民主党に500万ドル(6億円)以上を寄付して気前も良さも見せつけていた。

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 競合関係にあった暗号資産取引所バイナンスのジャオ・チャンポンCEOは、FTXへの懸念が膨らんだ11月7日に、「以前は彼らを支援したが、離婚後も愛し合うフリをするつもりはない。業界の関係者を敵に回して、ロビー活動をする人は支援しない」とツイートしている。読み取れるのは、「束の間の親交を結んだ後に、考え方の違いが表面化して疎遠になった」ということだ。もしかしたら、激しく対立していたのかも知れない。

 FTXの経営を引き継いだのは、2001年に不正会計が明るみに出た世界最大のエネルギー取引業者エンロンの破綻処理を担って、敏腕振りを知られたジョン・レイ氏だ。そのジョン・レイ氏はFTXについて、「今まで目にした中で最悪の機能不全企業で、恐るべき無秩序が横行していた」と語っている。

 機密データをブロックしないでやりとりした上に、その記録が短期間で自動削除されるように設定されていたばかりか、従業員にも利用を勧奨していた。会社の資金が公然と私物の購入に費消され、人事部門が余りに杜撰なため従業員名簿すら整備できなかったという。

 21年7月に個人顧客が100万人を超えていたFTXの債権者が同程度になることは、十分懸念されることで、返還を求められる債権額も数兆円と伝えられるばかりでいまだに詰め切った状況にはない。もともと杜撰な資金管理状況が狙われて数億ドル規模のハッキングの痕跡も見られるようだから、顧客資産の保全は相当厳しい環境にあると考えるべきだろう。

 暗号資産取引所にルールの導入を進めていたFTXが破綻したことで、より厳しいルールが設定されそうな機運になっているのは皮肉なことだ。そして、ルールなどはいらないとの立場を占めていたバイナンスは11月30日、日本のサクラエクスチェンジビットコインの全株式を買収した。

 過去に無登録でサービスを提供していたとの警告を2度受けていたが、事業者登録が認められれば正式に日本市場へ参入することになる。FTXの被害状況が曖昧なまま、事業者のペースで事態が進む状況に不安を感じるのは当然だ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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