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ロシアのウクライナ侵略によるEV車環境の激変
Photo:有事の避難行動には古くてもVWの方を選ぶだろう(画像:トヨタ博物館所蔵)[写真拡大]
2022年2月24日に発生したロシアによるウクライナ侵攻で、EV車に対するお気楽な議論環境が激変した。
【こちらも】自動車を国産技術で生産できる国
●中国のEV車推し
『自動車を国産技術で生産できる国』(2022年2月9日)で述べた如く、 世界中で、自国の技術だけで「自動車」(ガソリンエンジン搭載の純粋な車。現状ではEV車は“自動車”とはカウントできない)を生産できるのは、米国、ドイツ、日本だけだと言われる。
内燃機関の自動車が主流であり続ける限り、未来永劫、中国が自動車をリードする事は不可能だ。生産を支える広い裾野の部品工業と、技術の蓄積が貧弱だからだ。
そこで、「モーターと蓄電池を見繕えば、EV車が造れる」と、自国の電源構成も無視して、EV車への転換を画策したのが原因だ。
●ドイツのEV車追従
ドイツは、日本の自動車産業には当初、「クリーンディーゼル」で対抗しようと考えた。
だが、日本のクリーンディーゼル技術には及ばず、VWは北米での排ガス規制をデータ捏造し「規制対応した」と虚偽の申告をした結果、世界的な「ディーゼル忌避反応」を引き起こす原因を作った。
本来なら、ここで日本の「ハイブリッド技術」や「クリーンディーゼル技術」に学べば良いのに、日本に屈服する事を潔しとせず、EV車押しの中国の尻馬に乗った。
●平和な時代でも未成熟なEV車
「1充電走行距離」ひとつとっても、内燃機関を搭載した車とは比較にもならないEV車は、国の電源構成に余裕があって、充電インフラが整備されている事が最低限クリアされてこそ「限定的な用途」にのみ実用可能となる。
●非常事態に使い物になるか
ロシアの暴虐に曝されているウクライナの方々には、不謹慎な例示で申し訳ないが、今回の侵略戦争の被害者の立場でEV車が使い物になるか評価して見れば、冷徹な評価が出来るだろう。
例えば、攻撃を受けている街に住んでいて、「テスラ・モデル3」と「古いVWビートル」を保有していたとする。
家族を隣国に避難させる際に、テスラを使うのは正しい選択だろうか?
「満充電」のテスラで出発し、途中砲撃を受けなくても、渋滞が無くても、充電が切れた段階で「終焉」を迎える。
テスラ・モデル3の充電は、通常の自宅での200V充電だと約15時間、最短の専用の充電スポットで約30分、一般急速充電(CHAdeMO・40kW)なら約70分かかるから、(テスラの相談窓口 https://tesla-kawai.com/qa/56/より)平和な状況下であっても最初から無理な話だ。
しかし、「古いVWビートル」なら、途中で携行缶を使って燃料を入手する事が出来れば、何とか隣国まで辿り着ける。
●お気楽なドイツとEU
米国が反対していたにも拘わらず、メルケルのロシアに対する警戒心の無い、能天気な対応で、「ノルドストリーム(Nord Stream)」、「ノルドストリーム2」なんぞという、バルト海底を経由してロシア・ドイツ間をつないだ天然ガスのパイプラインで、ロシアから供給を受ける事にした。
この天然ガスを頼りにして、原発を廃止し、フランスにも電力供給を頼った。
EUは、ドイツに引っ張られて「35年ガソリンエンジン禁止」とまで踏み込んだ。その結果は、今回のロシアのウクライナ侵攻で、各国とも電源構成の問題にまで大きな課題を抱え込む事になった。
結論から言えば、平時でさえガソリン車(内燃機関)の無い社会は成立しない筈だ。まして、今現在は世界大戦まで危惧される世界情勢である。
「カーボンニュートラル」とか、楽観的な議論をしている場面では無いだろう。
●平時にも危機管理を怠らず
ロシアは原発に対してまでも攻撃を行った。原発もテロリスト対策レベルから、テロ国家による軍事攻撃にまで対処する準備が必要とされる時代になってしまった。
3月21日、経済産業省は東京電力管内の電力需給が22日に極めて逼迫する恐れがあるとして、政府初の「電力需給逼迫警報」を出した。
宮城県を中心とし、最大震度6を観測した16日の地震で停止した火力発電所が未復旧な中、気温低下で電力需要が高まり、需給が逼迫すれば、周波数が乱れて大規模停電につながる恐れがある為だ。
平和な日本にして、この様な電力事情であるのに、EV車押しは無謀な試みだと言わざるを得ない。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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