中外製薬が国内販売高で「トップグループ」に顔を並べた理由

2022年2月23日 08:55

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 国内の医療用医薬品メーカーの存在感を「国内販売」に照準を合わせ、「序列」を論じることに異論を唱える向きも多いと思う。だが斯界のアナリストは、「国内販売で中外製薬(東証1部)が第一三共(同)を抜き去り、武田薬品(同)に追い付き先頭集団に躍り出たのは事実」と指摘した。

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2月16日の日刊薬業は『中外製薬が国内トップ、今期は引き離しへ がん領域・ロナプリーブ(抗体カクテル療法)で盟主交代、ロシュとの提携開花』と題する記事を配信している。興味深さを覚えた。中外製薬の現状を見定め、今後を考えてみた。

 アナリストは「20年度までの3年間の国内売上高は武田薬品、第一三共、ファイザーの順位に変化はなかった。しかし21年度はファイザーが長期収載品や後発医薬品をヴアトリス製薬に分離したことで売り上げ減。第一三共もネキシウム(消化性潰瘍剤)をアストラゼネカに返還し前期並みにとどまる。武田薬品は糖尿病治療薬4剤の帝人ファーマへの売却額を差し引くと実質の国内売上高は5000億円前半水準」とした。

この限りでは、中外製薬の前12月期の国内製品売上高は26.8%増の5189億円は「地殻変動」の予兆と捉えることができる。

 前12月期の中外製薬の国内製商品は、「オンコロジー領域」「プライマリー領域」に大別される。何が伸びたのか・・・

【オンコロジー】―20年12月期比26.8%増収の5189億円。適応が拡大された主力の「テセントリク(抗悪性腫瘍剤)」や「カドサイラ(細胞内の超小管を組成する蛋白質の重合阻害剤複合体)」が堅調に推移。加えて20年5月に発売の「ポライビー(抗悪性腫瘍剤)」や、8月に開始した血液検体の検査サービス(遺伝子変異解析プログラム)の検体数が伸長。

【プライマリー】―45.6%増の2574億円。血液凝固剤第VIII機能代替製剤「ヘムライブ」、ヒト化モノクローナル抗体「アクテムラ」が好調に推移。政府を納入先とする「ロナプリーブ」など新製品の寄与。

 中外製薬の21年度を牽引したロナプリーブ(売上高774億円)について日刊薬業は奥田修社長の「ある程度以上の確度があると見込んでいる」とするコメント記し、「22年通期予想は1990億円に膨らむ」としている。

 5年余の低成長率を潜り抜けた中外製薬の今後を見通す上では、新製品の伸びが注視に値する。例えば昨年5月発売の「ポライビー(抗がん剤:ADC)」は中央社会保険協議会(中医協)ではピーク時(10年度目)の売上高予想を120億円としているが、中外製薬では22年実績を既に167億円としている。同様に20年8月発売の「エンスプリング(視神経脊髄炎障害再発予防剤)」のピークを中医協は「6年度目・54億円」としているが、21年で既に97億円実績を残し22年には167億円を見込んでいる。

 中外製薬は雌伏の時から脱し始めたように捉えられるが・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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