ブラックホール誕生につながる2億光年かなたの閃光現象をキャッチか MIT

2021年12月15日 07:50

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不思議なバーストAT2018cowのイラストイメージ (c) 国立天文台

不思議なバーストAT2018cowのイラストイメージ (c) 国立天文台[写真拡大]

 マサーチューセッツ工科大学(MIT)は13日、地球から2億光年の彼方にある銀河で起こった、人類がかつて観測することがなかった非常に珍しい閃光現象に関して、研究報告を公開した。この閃光現象はAT2018cowと名づけられており、2018年6月16日にヘルクレス座の方角にある系外銀河CGCG 137-068で発見されたものである。

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 MITの研究者らは、AT2018cowからの信号を分析した結果、X線パルスが60日間にわたって4.4ミリ秒ごとに周期的に発生していたことを発見した。この信号周波数から、X線パルスの発生源を幅1,000km以下で太陽質量の800倍未満であることを突き止めた。

 この閃光現象の瞬間にブラックホールかパルサーが誕生し、その際に起こった複雑な現象が、観測網にキャッチされたのではないかと研究者らは見ている。この信号が発せられた付近の宇宙空間を捜索すれば、ブラックホールかパルサーが見つかる可能性が高いと主張している。

 パルサー誕生のきっかけとなった閃光現象は、実は日本でもまだ望遠鏡が全くなかった時代の事件として、小倉百人一首で有名な藤原定家が、陰陽師・安倍泰俊(やすとし)からの伝聞として明月記に記している。

 それによれば、1054年の夏におうし座に出現した超新星は、昼間でも観ることができ、出現後約2年間もその明るさを保っていたという。藤原定家は、1162年から1241年にかけて生きた歌人であるため、彼が直接超新星爆発を目にしたわけではないが、このような貴重な記録を伝聞として日記に残してくれていた日本人がいたことは、誇らしいことである。

 明月記に出てくるおうし座の超新星爆発は、現在おうし座のかに星雲M1として知られており、M1の中心星はパルサーの代表的存在である。だが残念ながら、当時の観測記録は世界中でも数えるほどしかなく、西洋の記録は皆無だという。その点からいえば、AT2018cowは最先端科学を駆使した研究が可能な対象であり、ブラックホールやパルサー誕生の謎に迫る新たな発見も、今後大いに期待ができるかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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