やはり今回も最強だった! 解散総選挙のアノマリーと「原油高」の行方 後編

2021年10月21日 16:02

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 日本の株式市場における海外投資家の売買動向は、JPX(日本取引所グループ)が公表している投資部門別売買状況にて確認できるが、その公表は毎週第4営業日午後3時となっている。衆議院解散が宣言された先週の売買状況は21日に公表されるが、その前週である10月4日~8日の売買動向では、海外投資家は大きく買い越しに転じている。

【前回は】やはり今回も最強だった! 解散総選挙のアノマリーと「原油高」の行方 前編

 つまり、菅前首相の辞職と共に、海外投資家の大幅な買い越しによって急上昇を続けた株価は、同じく海外投資家の大幅売り越しで大幅に下落したものの、その売り越し分が再度半分まで買い戻されているような状況である。日経平均株価も海外投資家の売買動向と近しい動きをしていると分かる。

 海外投資家にまだまだ買い余力があるとすれば、選挙中もう一段の株高を期待できるかもしれないが、アメリカ市場が再度好調な動きを見せているため、日本市場を狙って資金がどれほど流れ込んでくるかは今のところ不明だ。

 そして、コロナ禍からの経済正常化に大きく水を差す可能性があるのが、度々指摘している原油高の影響であろう。原油の価格動向については、毎週水曜日のニューヨーク時間に公表される米週間石油在庫統計の影響を受けやすい。

 10月20日(水)の結果は、原油在庫予想129.3万バレルの積み増しに対して結果は-43.1万バレルの減少、ガソリン在庫予想-71.3万バレルの減少に対して、-536.8万バレルの減少となった。ともに市場予想をこえる需要増となったことで、この指標を受けて、原油価格は2014年10月以来、約7年ぶりの高値を更新し、1バレル=83.87ドルとなった。

 日本はアラブ諸国と良好な関係を保っているが、原油の輸入もそのほとんどを中東に依存している状態だ。アラブ諸国を中心に構成されたOPEC、そして、ロシアなどのOPEC非加盟国も加えて組成されたOPECプラスでは、原油の減産や増産などの話し合いが行われているが、コロナ禍後の原油価格暴落時は死活問題であったものの、高騰に関しては左うちわである。

 もっとも、これまではアメリカもエネルギー源の確保を裏のテーマとして、中東への戦争にも積極的に関与し、イラク戦争やアフガン侵攻などを行ってきたが、アメリカ国内のシェール革命によって、中東へこだわる必要は無くなった。

 もちろん、アメリカ以外の国が原油高に苦しめば、その影響はアメリカ自身にもおよび、懸念されているインフレ高には波及するだろうから、多少の関与はしてくるであろう。だがもはや世界最大の産油国となったアメリカの興味は、原油高ではなく原油安なのである。

 原油高は、経済正常化が進むにつれて、今後も一定期間は継続するであろうが、世界中がドル高となるなか、日本も円安の影響を強く受けており、原油高騰と円安は二重苦となっていくだろう。

 このままでは、日本国内であらゆる物価が高騰し、岸田首相を始めとする各政権が掲げる成長や分配の前に、家計を厳しく圧迫することになる。新政権は二重課税ともいわれているガソリン税の軽減などに踏み込むことができるだろうか。もはや時間はかぎられている。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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