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今のEV車が担える守備フィールド
ヤマト運輸、トヨタ、日野の3社による、EVトラックでの集配業務の実証運行車両(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]
「現時点のEV車技術レベル」と「電源事情」で「EV車が担える守備フィールド」を考えて見たい。
【こちらも】EV車炎上で考えさせられること
●今のEV車の弱点再確認
*1充電走行距離が短い
*充電に時間がかかる
*充電インフラが未整備
*駐車場の制約が大きい
*ハイブリッド車に比べてCO2の総合排出量が多い
*「自動車メーカー」としての基礎技術を備えた企業が極めて少ない
*開発途上国には電気すら満足に得られない国が有る
*国産以外は「発火事故」を起こすメーカーが多い
*電源構成からEV車に回す電力に余裕が無い国が多い
他にもいろいろ有りそうだが~。
●電動ゴルフカートの環境を参考に
エンジンを搭載した乗用カートも見受けられるが、一般的なゴルフ場のカートの主力は電動だ。
ゴルフ場の外に出ることは無いため、「1充電走行距離が短い」ことは問題にならない。充電量の関係で、もう1ラウンドが無理なら、カートハウスに戻った際に、フル充電のカートと交換すればよい。
「充電に時間がかかる」問題も、カートは夜間に稼働することが無いため、夜間に充電すれば時間を気にする心配も無い。
社会的に「充電インフラが未整備」でもゴルフ場内のカートハウスで行うから、これも問題なし。当然、「駐車場の制約」も無関係だ。
CO2排出に関しては、あれだけ広大な土地だから、太陽光発電を活用すればカートへの充電用位なら、電力会社から「発電段階でCO2を排出した」電気を買う必要も無い。
そして、電動カート用バッテリーは、リチウムイオンバッテリーも有るが、殆どは一般のガソリン車、ディーゼル車に搭載されているのと同じ「鉛蓄電池」である。つまり、「発火事故」の危険性は極めて低い。
勿論、傾斜路や、カーブでの安定性等に関しては、蓄積されたノウハウも必要で、ぽっと出のメーカーにマトモな「ゴルフカート」が造れる筈も無いが、3月12日付「自動車メーカーの基礎体力」で述べた通り、決定的に違うのは、「自動車」ではないということだ。
●現状でのEV車の守備範囲
上記の「電動ゴルフカート」の自動車版がEV車の守備フィールドと考えられる。つまり、「電動ゴルフカートが活きる環境に準じて」なら、EV車でも守備できるフィールドは存在する訳だ。
EV車が「長距離バス」や、「物流を担う長距離トラック」、「重量物運搬トラック」等の用途には不向きなのは明白で、これ等の動力源は、将来的には「燃料電池」となるだろう。
「都市交通としてのバス輸送」は、決まった経路を走行し、バス車庫に戻って充電することが可能である。従って、限定されたエリア内で稼働する「路線バス」や「スクールバス」、「社員送迎バス」の類なら、EV車が使用可能である。
「宅配便の貨物トラック」や工場団地内での「部品搬送トラック」であれば、域外に出る必要も無いので、1充電走行距離に縛られずに利用可能である。
●現在の「自動車」は堅持すべき移動・搬送手段だ
普通に「自動車」といえば、全国津々浦々に整備されたガソリンスタンドが有り、満タンでスタートすれば大体700km前後の距離を走れるガソリンタンク容量を備えている。
そしてガソリン車、ディーゼル車なら、燃料エンコしても、携行缶で補給が可能だから、この冬に起こった「想定外の大渋滞」でも対応可能だ。
講釈を垂れれば、危険物であるガソリンのタンク容量は、上限が100リッターに決まっているが、大まかな設計上の目安は「東名・名神536kmプラスα」とし、迂回や渋滞等も勘案して無給油で走破可能な100リッター以下の容量のタンクを備えている。
だから乱暴な言い方をすれば、45リッタータンクの車と90リッタータンクの車は、大まかな燃費は90リッタータンクの車は45リッタータンクの車の半分と考えればよい。
保管場所(車庫)は、タワーパーキングであろうが、機械式の段積み駐車設備、青空駐車等々のどんな場所でも問題ない。
●結論として
以上の様な状況から、トラックやバスに関しては、EV車にここまでの性能を求めず、車載バッテリーの革命的な進歩に希望を繋ぐなら、現在のEV車にも、それなりの役割を果たすことは可能だろう。
乗用車の場合は、複数台数を保有可能なら、「街乗り専用として近距離しか使わない車」や、ポルシェ・タイカンの様な「スポーツ走行を愉しむ車」と割り切ったEV車ならお勧めするが、1台だけを保有するマイカーの場合には、泊りがけの遠距離ドライブに際しては、レンタカーを利用する等の割り切りが無ければ、EV車を選ぶのは避けるべきだと思う。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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