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ヒトiPS細胞から作製の腱細胞、アキレス腱断絶のラットに治療効果 京大ら
移植後のラットの運動学的評価(日本医療研究開発機構の発表資料より)[写真拡大]
京都大学と日本医療研究開発機構は8月31日、ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)からつくった腱細胞を、断裂したラットのアキレス腱に移植したところ、負傷した腱が早期に回復していることが確認されたと発表した。ヒトのiPS細胞から腱細胞を抽出し、細胞治療につながる治療法を確立するのは初めてという。両者は、この治療法について、再生医療や遺伝子疾患の研究での応用が期待されるとしている。
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腱は骨格筋の両端にあり、筋肉を骨格などに結びつけている結合組織で、筋肉の伸縮を骨に伝える役割を果たす。運動機能にとって重要な役割を果たすが、血流が少ないため、損傷しても治療が難しいという欠点を持つ。別の組織を用いた腱の再建手術は、合併症のリスクや再負傷率が高く、従来の治療法に恒常的な課題を抱えていた。
研究グループは、そうした課題を解消する治療法の確立にむけ、ヒトのiPS細胞を使った治療法を開発することにした。京大らによると、これまでにマウスのiPS細胞や間葉系幹細胞から腱細胞は作製されていたが、ヒトのiPS細胞から腱細胞を誘導し、細胞治療へとつなげる研究が実施されたのは今回が初めてだという。
300万個の腱細胞を、アキレス腱が断裂したラットの患部へ移植し、4週間の経過を観察。かかとの高さは移植後2週間で、健康なラットのかかとの高さと同程度になっていることが判明。足首の角度も、移植後2~4週間後に健康なラットと同程度までに回復した。
アキレス腱が破断する最大荷重を測る実験では、移植後2週間後のアキレス腱は、未治療の物と比べ、最大荷重が高かったほか、耐久性と物性が回復していることが判明。移植した腱細胞の生着や組織の状態を調べる研究では、免疫染色を行ったところ、ヒト特有のビメンチン陽性の移植細胞が、コラーゲンを発現していることを確認。これにより、ラットのアキレス腱の一部としてある程度機能していることが示唆されたという。
ヒト由来のiPS細胞を用いた腱細胞の移植実験の成功は、従来の再生医療を代替する可能性がある。筋肉や腱、靭帯損傷を対象にした幹細胞治療など再生治療は、自家細胞を使っており安全性が高い反面、増殖能力の低下やコストが高額といった欠点があった。
一方、体細胞に遺伝子を注入して人工的につくるiPS細胞は、高い移植能力を持つとともに、再生医療のコスト低減に寄与すると言われている。このため、今回の実験で成功した技術が実用化されると、さまざまな再生医療の欠点を克服し、医療技術の推進に貢献するとみられる。
実際に研究チームは、「ヒト由来のiPS細胞を用いることで、細胞治療の課題であった、移植する腱細胞の不足を解決できる」と強調。細胞の若返りを図るため、老化によって弱った腱に有効であることから、老年ラットを用いた移植治療効果の検証のほか、アキレス腱以外の腱障害への治療適用を進めるとしている。(記事:小村海・記事一覧を見る)
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