トヨタショックで夏枯れ相場か

2021年8月26日 17:08

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●トヨタが減産を発表

 トヨタ自動車が9月の世界の生産台数を4割削減すると発表し、波紋を広げている。

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 トヨタとそのグループ会社だけでなく、ホンダや日産自動車、三菱ふそうトラック・バスまで減産を余儀なくされており、様々な影響が出ている。

 原因は、東南アジアでの新型コロナウイルスのデルタ株感染拡大により部品調達が停滞。東南アジア各国のロックダウンによって、部品工場の停止が相次いだことだ。トヨタでは特に、マレーシア・ベトナムでの停滞が大きく影響した。

 トヨタ株は、発表後数日間で10%以上下落。豊田通商、デンソーなどのグループ株も先行きに対する不安が広がり、約10%以上下落している。

 日本株全体への影響も心配される。

●グローバル企業トヨタ

 トヨタは言わずと知れた世界販売台数世界一を争う、世界屈指のグローバル企業である。

 現地生産をしているとのイメージも強いが、未だに生産台数の半数以上(2018年)を国内で製造し、輸出している。これは日産やホンダよりも圧倒的に多い。

 日本の就業人口の約1割にあたる530万人が自動車産業に関わっていると言われる中で、トヨタの従業員数は7万人(2021年末)を超え、2位のホンダの倍以上である。

 連結合わせれば36万人を超えており、下請けの中小企業なども合わせると、非常に多くの雇用を生み出している。

●日本株全体にも影響

 今回の4割減産では、8月24日から9月末まで14の工場を停止すると発表しており、一時的とはいえ影響は大きい。2022年3月期までの生産見通しは変えないとしているが、先行きは不透明である。

 東南アジアでのロックダウンはいずれ解除されるにしても、一旦棄損されたサプライチェーンは簡単には戻らないことは、昨年からの半導体不足で経験済みだ。

 五輪も終わり夏枯れ相場の様相の日経平均は、トヨタの発表があった19日から20日まで一時27,000円を割り込む場面もあったが、週明けの23日からは上昇に転じていることを考えれば、大きな影響はないとみられる。

 トヨタの減産はパンデミックの影響を織り込み済みで、ジャクソンホールのパウエルFRB議長の発言、国内では自民党総裁選や衆院選の動向を投資家は見極めているのだろう。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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