2桁株価企業:アルデプロの社長取材の機会を得て考えたこと

2021年7月19日 15:20

印刷

 月刊株式投資雑誌:株主手帳から「6月24日の午後4時からのzoomミーティングに参加しないか。東証2部のアルデプロの椎塚裕一社長が登壇する」と誘いを受けた。アルデプロ自体を知らなかった。調べた。そして「是非参加したい」と返答した。

【こちらも】KOAの収益動向に、製造業の立ち直りを実感

 調べた結果抱いた興味は、「2桁台株価(6月24日終値57円)企業」「特異なビジネスモデル」「筆頭株主:秋元竜弥氏と僅か1字違いのNO2秋元和弥氏の関係」「取引銀行が限られた中小機関という事実」だった。

★2桁台株価: 2012年から昨年までの9年間のうち大納会の終値は7年間2桁。そしていまも俗に言う「ボロ株」「倒産企業株価」で推移している。他の参加者から「(ボロ)株価についてどう考えているか」という質問で先を越された。

 椎塚氏の「自社株買いでの対応を基本に据えている(詳細は省くが実行されている)」に対し質問者は、「株式併合は視野にないか」と具体的な施策で問い続けた。椎塚氏は「考えていない」とした。私も併合には賛成できない。併合すれば、資産価値等に全く変化は生じないが理論的に株価は高くなる。だが併合による株価高は個人投資家を軸に投資家離れの懸念が強い。

 ボロ株の場合、個人投資家に「投資ゲーム」の対象とされやすい。いまはむしろ「安定した個人投資家づくり」が肝要だと考える。ようやく収益も軌道化し始めた。自社株買いの継続と並行して、掲げる「配当性向3割」の実現こそ重要であろう。

★ビジネスモデル: 主業は築古(マンション等)建屋の権利調整を済ませ、リノベーションを施しデベロッパーに売却する。かつて企業・産業欄にバブル時代代表的なノンバンク:クレディセゾンが故竹内敏雄社長の厳命で「どんなに銀行から金がついてくる案件でも、一切不動産担保融資は私の目が黒いうちはまかりならん」となったと記した。その理由を竹内氏から「不動産にくっついている権利関係は余りに複雑。我々が手を出せる仕事ではない」と聞いたと伝えた。

 権利調整について椎塚氏は「マンションの管理組合との調整を図るために、当社自身が区分所有者なることもある」とし、「一口で言えば、培ってきたノウハウが最大の武器」と語った。問うた。「培ってきたノウハウの中には、失敗して得たものもあるのか」と。「その通りだ」とした。

★2人の秋元氏: 「和弥君は竜弥氏の息子」と知った。アルデプロはこれまでに倒産の危機を何回か潜っている。リーマンショック後の債務超過転落。東日本大震災後の大幅赤字。東証の「内部管理改善が確認できない」という理由から、特設注意銘柄への指定。これらの危機を、いわゆる「ADR再生」で凌いできたが最も揺れた時期を乗り越えたのは「実質上の創業」と称される秋元竜弥氏による大型第3者割当増資引き受け⇔ADR再生だった。

 その子息がNO2として営業を牽引している。「秋元親子にとっては、引くに引けない大仕事のはず。遮二無二に収益回復の軌道化に向かってくるはず。今後のアルデプロの動向の全てを握っていると言って過言ではない」と痛感した。是非論はともかく、抱いた実感である。

★銀行: 取引銀行に関しては、HPで確認して欲しい。信金・信組が占めている。前記したビジネスモデルを遂行するためには椎塚氏自身が語った通り「マンションの区分保有者」になるケースも少なくない。リノベーションも必要。権利調整(主に退去)を進めるためには、代替地の斡旋・融資も必要になる。そのためにはアルデプロ自体が、しっかりした金融機関とパイプを太くしておかなくてはならない。

 「金融機関開拓は進んでいるか」という質問に椎塚氏は、「努力している」とし、そのうえで「当社のビジネスの認識が高まってきている。出口はデベロッパーへの売却。返済資金が担保されるという認識から具体的にはK銀行が取引行となることが決まり、地銀筋の反応が確認され始めている」とした。


 ちなみに20年7月期は「営業利益32億4500万円(19年7月期6億6200万円損失)」。今期は「9.1%の営業減益(29億5000万円)」計画だが、第3四半期の実績は24億5000万円と進捗率83%という状況。四季報は【回復続く】の見出しで業績欄に「22年7月期の配当性30%へ」とし、営業利益を「35億円」と独自予想している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連記事