諸刃の剣を振りかざすアメリカとIT巨人GAFAM+Nとの戦い (完)

2021年6月17日 07:55

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 アメリカ議会における巨大IT企業をターゲットとした今回の反トラスト法の改正案提出について重要なのは、前トランプ政権が率いた保守派・共和党の内部の捻じれと、現バイデン政権率いるリベラル派・民主党の内部の捻じれの中で、大きな道しるべとなったことである。

【前回は】諸刃の剣を振りかざすアメリカとIT巨人GAFAM+Nとの戦い (3)

 かつて、トランプ元大統領がSNSにおける発言にて支持を集めていたことは間違いないが、その発言が誤解を生むとしてアカウント規制の対象になっていたことも記憶に新しい。これらの措置はリベラル派・民主党寄りであるとしてトランプ元大統領の攻撃対象となった。

 そもそも、巨大IT企業の従業員にはリベラル派が多いとされており、格差問題の是正を打ち出していたリベラル派・民主党のサンダース氏やウォーレン氏への献金額は、トランプ元大統領への献金額と比べても圧倒的に多かったことからも明らかである。

 つまり、保守派・共和党寄りの発信を規制する巨大IT企業に対しての取り締まりを主張していた前トランプ大統領に対して、反トラスト法の対象として巨大IT企業が規制されることに反対していたのは、前トランプ政権が率いた保守派・共和党という捻じれがあったのだ。

 さらに、その捻じれはリベラル派・民主党の内部でも生じている。サンダース氏やウォーレン氏大統領候補争いを行ってきたバイデン氏は中道派であるが、トランプ元大統領に勝つためにはリベラル派の票を取り込まなければならなかった。

 実は、同じく中道派のカマラ・ハリス副大統領には、巨大IT企業に所属する支援者が多く存在し、義弟はウーバーの主任法律顧問であるなど、シリコンバレーとの深いつながりをもっているのである。

 このような混沌とした状況下で、バイデン政権は「巨大IT企業の規制へ」と大きな舵取りをした。それは、FTC(連邦取引委員会)委員の1名として、「巨大IT企業解体」を論ずるコロンビア大学法科大学院准教授のリナ・カーン氏を指名したことからも明らかだ。

 もちろん、舵を切ったからには進むしかない。巨大IT企業の租税回避を阻止すべく提案された「デジタル課税の対象範囲の拡大」は、「法人税の最低下限税率制定」の人質とされ、後には「富裕層への増税」も待ち受けていることであろう。

 しかしながら、これまでアメリカ経済をけん引してきたのはGAFAM+Nを中心とした巨大IT企業に他ならない。これらの大規模な規制は、諸刃の剣となり得ないだろうか。急成長を遂げる中国のIT企業を背後に感じながら、バイデン政権はノアの方舟を目指して、難しい航海へと旅立つことになる。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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