為替週間見通し:ドル上げ渋りか、米大規模緩和継続の思惑残る

2021年5月15日 14:46

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記事提供元:フィスコ


*14:46JST 為替週間見通し:ドル上げ渋りか、米大規模緩和継続の思惑残る
【今週の概況】
■ドル強含み、米インフレ進行の懸念残る

今週のドル・円は強含み。4月米雇用統計は市場予想を下回る内容だったことから、週初はドル売り・円買いが優勢となり、11日に108円35銭までドル安・円高に振れた。しかしながら、12日発表の4月米消費者物価コア指数は市場予想を大幅に上回ったことから、インフレ進行を警戒して長期金利は上昇し、ドル・円は一時109円79銭まで買われた。ただ、米国のインフレ見通しは不透明との見方が多く、債券利回りの上昇は一服し、リスク選好的なドル買い・円売りは一巡した。

14日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時109円19銭まで下落した。この日発表された4月米小売売上高や5月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は市場予想を下回ったため、ドル売りが優勢となった。しかしながら、米国株式や原油先物の反発を意識したドル買い・円売りも観測されており、ドル・円は109円45銭まで反発し、109円38銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:108円35銭−109円79銭。

【来週の見通し】
■ドル上げ渋りか、米大規模緩和継続の思惑残る

来週のドル・円は上げ渋りか。米連邦準備制度理事会(FRB)は緩和政策の長期化方針を堅持しており、引き続きドルに下押し圧力がかかりやすい。4月米消費者物価指数(CPI)は、予想を大きく上回る内容となり、FRBによる大規模緩和策の早期縮小への思惑が広がったが、FRB当局者は「インフレの大幅上昇は一時的な現象であり、物価目標である2.0%水準を持続的に上回るのは困難」との見方を示している。

19日に公表される連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事要旨(4月27-28日開催分)は、その点についての記述が注目されるだろう。現行の金融緩和政策の長期化を支持する意見が多かった場合、ドル売りに振れやすい。また、来週発表される地区連銀やマークイットの製造業関連の経済指標が市場予想を下回った場合、大規模金融緩和策の継続を想定したドル売り・円買いが強まる可能性がある。なお、英国、欧州の早期景気回復への期待が高まった場合、欧州通貨買い・ドル売りの取引が再び活発となり、この影響でドル・円の取引でもドル売りが優勢となる可能性があるため、この点にも注意が必要か。

【米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨】(19日公表予定)
FRBは5月19日に4月27-28日開催分のFOMC議事要旨を公表する。資産買入れの段階的な縮小(テーパリング)が開始される時期は多少早まるとの思惑は消えていないため、議事要旨で緩和継続の必要性が指摘されても、米国景気について楽観的な見通しが示されていた場合、ドル売り材料にならない可能性がある。

【米・5月フィラデルフィア連銀景況調査(製造業景気指数)】(20日発表予定)
5月20日発表の5月フィラデルフィア連銀景況調査(製造業景気指数)は43.2と、前月の50.2から伸びは鈍化する見通し。指数の水準自体は高いものの、市場予想を下回った場合、ドル売り材料となる可能性がある。

予想レンジ:108円00銭−110円50銭《FA》

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