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老化に伴う葉酸代謝物の蓄積とがん化のメカニズム(画像:理化学研究所報道発表資料より)[写真拡大]
理化学研究所や関西学院大学などは6日、ショウジョウバエについて、老化によって腸幹細胞ががん化する仕組みを解明したと発表した。研究グループでは、幹細胞のがん化は、ショウジョウバエと哺乳類で共通にみられ、今回の研究成果は、将来的にヒトの老化によるがん発生の仕組み解明に貢献するものと期待している。
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なお腸幹細胞とは、成体幹細胞の1種で、分裂・増殖する能力と腸を構成する細胞に分化する能力を持っている。
■老化による腸幹細胞の過度な増殖
研究グループは、ショウジョウバエの野生型(正常型)3系統と、white変異体の2系統について、それぞれ老化に伴う腸幹細胞の増殖の程度を調べた。
すると、野生型には老化に伴って腸幹細胞の過度な増殖がみられたのに対して、white変異体ではそのような腸幹細胞の過度な増殖はみられなかった。
■なぜ腸幹細胞は老化に伴って過度に増殖するのか
そこで研究グループは詳しく分析を進めたところ、ショウジョウバエの腸幹細胞が過度に増殖するのは、次のような仕組みで起こることが解った。
ショウジョウバエのwhite遺伝子は老化に伴って発現量が増えるが、このwhite遺伝子は、ABCトランスポーターと呼ばれるタンパク質をつくる遺伝子で、ABCトランスポーターには、葉酸(ビタミンBの1種)代謝物を細胞内に取り込む働きがある。この葉酸代謝物は、DNAの合成を促進し、細胞の増殖を促進する働きを持つ。
こうして老化に伴い、腸幹細胞内に葉酸代謝物が蓄積し、腸幹細胞が過度に増殖して、最終的にがん化につながるというわけだ。
なおwhite遺伝子は、紛らわしいが、ショウジョウバエの眼を赤くする遺伝子であり、変異が入ると、ショウジョウバエの眼が白くなる。眼が赤いショウジョウバエが野生(正常)型である。
研究グループによれば、white遺伝子の発現や葉酸代謝物の蓄積を抑制することで、腸幹細胞のがん化が抑制され、ショウジョウバエの寿命が伸びることも確認されたという。
ショウジョウバエのwhite遺伝子と似た遺伝子はヒトにも存在しており、また、葉酸の代謝はヒトのがんとも深く関係している。研究グループでは今回の研究成果について、将来的にヒトの老化によるがん発生の仕組みの解明につながるものと期待している。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る)
関連キーワード理化学研究所(理研)、遺伝子、がん、老化、DNA
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