ダスキン、訪販グループは「衛生のダスキン」へ更なる進化 フードグループは商品戦略で売上回復

2021年3月16日 17:45

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記事提供元:ログミーファイナンス

沿革

井出丈晴氏(以下、井出):みなさま、こんにちは。株式会社ダスキンでIRを担当しています、井出丈晴と申します。本日は当社の会社説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。

私のお話が、みなさまの投資判断のお役に立てれば幸いです。そして、少しでも当社に興味を持っていただき、応援していただきたいという思いでお話しさせていただきます。どうぞ、最後までよろしくお願いします。

今日のお話は、会社概要、新型コロナウイルス対応の取り組み、ESG的なお話になりますが、企業価値向上に向けた取り組み、最後に、株主還元の4つとなります。

まずは沿革です。当社は昭和38年創業の大阪の会社です。創業の翌年、年配の方はご存知の方も多いと思いますが、スライド右上の写真にあるように、黄色のぞうきんを開発し、レンタルを開始しました。同時に全国に加盟店を募集し、その加盟店網が全国に広がるとともに、売上を急拡大させました。

このぞうきんから始まった、モップやマットの事業の加盟店は、現在全国に約1,900店あります。1971年には拡大した全国の加盟店オーナーに対し、次の事業として「プロのお掃除 サービスマスター」、そして、フード事業の「ミスタードーナツ」をアメリカから日本に導入し、現在の当社の原型ができました。その後、2006年に上場しています。

社名の由来

井出:当社の社名の由来ですが、近年いろいろなところで紹介されており、当社のネタ的な話になっています。スライドの写真にある創業者、鈴木清一は少し変わった方で、当社の社名を「株式会社ぞうきん」にしたかったらしいのです。

商品も黄色いぞうきんですし、ぞうきんは自分を汚して相手をきれいにするということから、そう考えていたようです。とはいいながら、「ぞうきん」ではいろいろ不都合があります。私どもはいつも「ダスキンさん、ダスキンさん」と言われていますが、「ぞうきんさん、今日はどうですか?」みたいなことになってしまいます。

八木ひとみ氏(以下、八木):インパクトはあります。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):そうですね。

井出:今考えるのなら、「アリ」かもしれないですね。このように、いろいろ不都合だということで、他にないかと考えた結果、ほこりの「ダスト」と、ぞうきんの「きん」を取って、ダスキンとなった次第です。

八木:そうだったのですね。

フランチャイズビジネス

井出:沿革にあるとおり、当社は創業当時よりフランチャイズで事業拡大をした、フランチャイズのパイオニアです。現在でも、ほとんどの事業をフランチャイズで展開しています。

スライドの図にあるように、当社の決算上の売上のほとんどが加盟店に対するもので、「売上①」は前期で1,591億円です。一方で、加盟店のお客さまに対するサービス・販売・レンタルの売上を「お客様売上」と呼んでおり、こちらは「売上②」ですが、前年で3,804億円となっています。

事業構成と売上構成

井出:「お客様売上」の3,804億円の構成は、グラフにするとこのようになります。セグメントとしては、訪問販売の「訪販グループ」と「フードグループ」の大きく2つに分けられます。

全体の71パーセントが訪販グループです。訪販グループは、モップやマットのダストコントロールが中心であり、それに続いて、スライド右下にある写真になりますが、お掃除・家事代行・害虫駆除などのケアサービスとなります。

スライド下部、円グラフの真下になりますが、介護用品のレンタル・販売のヘルスレント事業、イベント資材のレンタルを手掛けるレントオール事業などが続いています。

フードグループは全体の21パーセントですが、そのほとんどがミスタードーナツの売上となっています。

ダストコントロールの事業概要

井出:こちらでは、売上の約半分を占めるダストコントロール事業の概要について、少しお話しします。

スライド上段をご覧いただくと、まず全国に45ヶ所ある当社の洗浄加工工場から、約1,900店ある加盟店に商品が配送されます。そこから、加盟店に所属する訪問販売員がみなさまへお届けしています。約460万件のご家庭のお客さま、112万件の事業所のお客様があります。

訪問販売員は、みなさまのところでモップの先端部分だけを新しいものに交換して、汚れた部分は持ち帰ります。店に持ち帰り、お店から工場に返却します。そして、再度工場で再商品化され、また加盟店に出荷します。これは商品の寿命が尽きるまで繰り返されます。ダスキンの循環型ビジネス、ダスキンのエコを約55年以上前から続けています。

スライド下段は、主な商品とシェアについてです。ご家庭用の商品はやはりモップが中心ですが、それ以外には換気扇のフィルターのレンジフードフィルターや、さまざまな洗剤類があります。家庭用にモップをレンタルしている競合は少なく、シェアは90パーセント以上です。

事業所の商品は、マット、化粧室まわり、あるいは厨房まわりの衛生関連商品が中心です。こちらは競合が多く、業界シェアは約55パーセントとなっています。

ミスタードーナツの事業概要

井出:次に、ミスタードーナツですが、こちらはかなり一般的なモデルといえると思います。当社の事業部から、全国約1,000店の加盟店、ショップに原材料とノウハウを提供しています。

そして、ほとんどのお店でドーナツを一つひとつ手づくりされて、お客さまに提供させていただいています。売上の構成については、70パーセントが原材料の売上です。あとは、ロイヤルティと直営店の売上等となっています。

坂本:家庭用の掃除の部分などを含めて、基本的に直営ではなくフランチャイズでほとんど行っているという話だったのですが、ミスタードーナツの直営店は何店舗ぐらいありますか? 

また、直営店にする意味といいますか、戦略的なものが何かありましたら教えてください。

井出:ミスタードーナツのショップは先ほど約1,000店とお伝えしましたが、お店の数は直近で965店となっています。この中で、直営店と子会社の店舗の数は57店で、全体の約5.9パーセントになっています。

先ほどお伝えした訪販グループのダストコントロールの直営店と子会社の構成比も、実は5.1パーセントでした。

坂本:直営店があるのですね。

井出:基本的には、店数の約95パーセントは加盟店で、加盟店中心で展開しています。しかしながら、加盟店だけでは新しい開発や人材育成ができないため、ある程度の規模の直営店が必要だと考えています。

連結売上・純利益推移

井出:こちらのスライドは、2010年3月以降の売上と純利益の推移を示したものですが、売上については、残念ながら少し右肩下がりのトレンドが続いています。しかしながら、昨年はわずかながら増収となりましたが、今期は新型コロナウイルスの影響で減収の見通しになっています。

純利益も回復基調でしたが、こちらも新型コロナウイルス対策に費用を使ったため、減益という予測になっています。

新型コロナウイルス感染症対応の基本方針

井出:ここからは新型コロナウイルス対応について、最近の取り組みなどをお話しします。基本方針はスライドに記載のとおりで、お客さまの安全確保が第一ということに尽きますが、当社が次に重要と考えているのは、フランチャイズチェーンの維持ということです。

当社の加盟店は上場企業もあって、規模が大きい企業もありますが、その多くは小規模の加盟店です。これら加盟店とその従業員、訪問販売員で、全国のみなさまに商品・サービスをお届けしています。

フランチャイズチェーンの維持こそ最重要と考え、フランチャイズ本部として加盟店の店舗、営業拠点を持続・維持するために、加盟店のバックアップを優先的に考えているということです。

ここで、訪販グループとフードグループの新型コロナウイルスの影響について、少しお話をします。訪販グループでは、事業所の休業要請などに伴い、飲食店が営業していないことなどが大きく響いて、飲食店を中心に商品のレンタルやサービスの定期的な提供ができなくなりました。

家庭用でも、定期的なレンタルについては実施できる状態ですが、新規の営業が少し難しい状況となっています。加えて、イベントのお手伝いをするレントオール事業については、イベントの開催自体がなくなったことにより、売上は前期比75パーセント減という状況です。

一方で、フードグループは、店舗自体の休業を余儀なくされたことから、店内飲食、イートイン売上が大きく減少しています。このような状況で、どのような対応をしていくか、この後、少しお話をします。

フランチャイズチェーンの維持

井出:まず、フランチャイズチェーンの維持については、スライドに記載している5つの施策を実行しています。1つ目が、当社全事業、すべてのフランチャイズ加盟店とその従業員に対して、5月にお見舞金を支給しています。こちらは総額で16億5,000万円となっています。

2つ目は、加盟店の未使用製品の本部返却、ミスタードーナツの使用期限切れ原材料の引取などで、加盟店の在庫の負担を軽減しています。3つ目に、加盟店の売掛金の棚上げと融資も上半期で実施しています。

4つ目は、ミスタードーナツの店舗についてです。ミスタードーナツの店舗では、カフェテリアタイプという店舗のタイプがあります。こちらはお客さまがそれぞれお好きなドーナツを取っていただくタイプの店舗です。700店ぐらいはそのような店舗ですが、こちらのお店に対して、スライドの左下の写真にあるような大きな扉付きのショーケースを、本部の費用で設置しました。

八木:これまでは扉がついていませんでしたよね?

井出:そうですね。

坂本:なかったですよね。

井出:こちらの費用は当初計画でおおよそ15億円とされていますが、少しだけ残っています。特に、この扉の設置については事業を続けるためにも必要不可欠な策ということで、本来、加盟店で負担すべき費用ですが、本部の費用としました。これが、のちほどではありますが、積極的な販促展開につながる結果となりました。

5つ目は訪販グループの売上回復に向けたグループ横断の販促活動に、広告販促費用を投じています。先ほども少し触れましたが、営業活動がなかなか難しかったため、この第4四半期は広告販促費用を大きく投入しているということです。

生活調律業への進化

井出:セグメントのうちで訪販グループの新型コロナウイルス対応ですが、訪販グループは中期経営方針で「生活者の暮らし、職場環境を整える生活調律業」の進化を現在目指しています。

こちらはどのようなことかといいますと、家庭用ではさまざまな事業を展開しているため、家族の暮らしの総合窓口でありたいと思っています。そして、事業所市場では今までのマットの交換やお掃除を中心としたところから、衛生管理のノウハウを提供する企業となりたいと標榜し、中計を進めていました。

この進化の過程で、新型コロナウイルス感染症の拡大に見舞われまして、社会環境もニーズも大きく変化し、衛生意識が高まり、「イエナカ」需要、そして「癒し」などのニーズが拡大しました。

この大きな変化に柔軟に対応し、お客さまへさらなるお役立ちをすることが生活調律業だと再定義し、生活調律業への進化を続けています。

「お掃除のダスキン」から「衛生のダスキン」へ

井出:具体的には、スライドのタイトルにもあるように「お掃除のダスキン」から「衛生のダスキン」へということです。先ほどのスライドでご説明したように、訪販グループには衛生に関する商品・役務の高いレベルのノウハウがあり、事業所に向けては空間・厨房の衛生マネジメントをすでに展開をしているところです。

このノウハウを生かして、新たに空間除菌や非接触の衛生の新商品、あるいは基幹商品であるモップ・マットの衛生機能の進化などにより、感染症対策価値を追加した衛生パックへと進化させています。

これを現在の、既存のお客さまはもとより、新たにイベント会場や集客施設、一般家庭まで提案の幅を広げていきたいと思っています。新型コロナウイルスによって社会課題となった衛生対策とダスキンは確実にマッチングするだろうと考えており、「お掃除のダスキン」から「衛生のダスキン」へとブランドの進化を目指しています。

新たな価値提供:イベント衛生サービス

井出:「衛生のダスキン」に向けた事例として、1つ具体的な事例をご紹介します。現在、世界中でリアルなイベントの開催ができなくなっている状態です。

コロナ禍におけるイベントの自粛から再開に向けて、当社がお役に立ちたいということで、感染症対策型の衛生マネジメントの「イベント衛生サービス」を提供させていただくことになりました。

当社には、イベント資材のレンタルを行うレントオール事業がありますが、新型コロナウイルスで一番苦しんでいる事業が中心となり、清掃・衛生用品のダストコントロールやプロのお掃除の「サービスマスター」、また、総合衛生管理の「ターミニックス」のサービスとパッケージ化することで、ワンストップでイベントの衛生面を全部サポートするというサービスです。

こちらのノウハウは、今話題のワクチン接種会場でも生かせるものと考えており、現在あらゆるところで提案を進めています。

訪販グループ 売上推移

井出:このような取り組みを進めている訪販グループの売上高前期比は、新型コロナウイルスの影響を受ける一方で、アルコール手指消毒剤や空気清浄機の衛生関連商品、ならびにエアコンクリーニングサービスなどの売上が好調で、第1四半期のマイナス7.0パーセントから、第3四半期にはマイナス3.3パーセントまで回復しつつあります。

坂本:こちらについて、訪販グループ全体の売上は落ちているのですが、これは新規に営業ができなかった部分があり、もともとある自然な解約の部分を新規で補なえかったからだとは思っています。そちらの部分についてと、コロナ禍で需要があったアルコール以外の部分があれば教えてください。

井出:そうですね。おっしゃるように解約については、ある程度一定数で毎年出ていますが、今期は新型コロナウイルスの影響で、事業所において解約がやや大きく出ています。

坂本:事業所なのですね。

井出:率としては、家庭用はそれほど変わらない状況ですが、通常との一番の違いは解約ということではなく、休業要請などで定期契約している商品やサービスが一時中止したことです。「今回はいらない」とか、あるいは、行ってもお店が閉まっているという状況で、何回か売上が飛んでしまった状況でした。あるいは、訪問しても解約かどうかわからない状況がありました。

八木:はっきりとわからなかったのですね。

井出:そのような状況で、実際には、水面下の解約がある程度あると理解しています。

坂本:ただその分、新規がもう戻ってきています。

井出:そうですね。事業所はある程度、解約が出ても、新規契約をしっかり取っていけばと考えています。

商品については、先ほどお伝えしたものが大きなところですが、アルコールの手指消毒剤、空気清浄機などの衛生関連商品が、前期比で76パーセントくらい成長しています。エアコンクリーニングなども15パーセントほど、前期よりも多くご注文いただいている状況です。

坂本:新型コロナウイルスの影響で在宅の時間が増えて、個人の掃除への関心は非常に高まったと思っていて、エアコンを清掃したい人はいると思います。

個人の利用者との接点といいますか、これまでは訪販の部分であったと思いますが、インターネットを使ったインバウンドの注文というかアクセスがあって、御社の営業のパターンは変わられたのでしょうか? 

井出:在宅の時間が増えて、家にいると、おそらくちょっとしたほこりが気になったりするようになってきたのかなと思います。

訪問して、お約束させていただいているので交換はできるのですが、やはり従来のように長時間「ちょっと、この商品が」などとご提案することは、なかなか難しいところではあります。

衛生関連の商品については、お客さまのほうが聞きたいところがあり、家庭用でもある程度、衛生関連商品が伸びて、売上を補えているところがあります。

一方で、新規のお客さまに関しての営業は、これまでは「ピンポーン、ダスキンです」と、ひたすら訪問して、20軒に1軒は開けていただける方がいらっしゃったくらいでした。

このようなところで、現状、積極的な営業展開ができないというのが、第1四半期から第3四半期で、しっかり行っていただいている加盟店、そして訪問販売員のみなさまもいらっしゃるわけですが、例年と比べるとやはり厳しいということです。

現在の中計ではWebへの誘因もしていますが、新しい出会いというところでは、正直難しいところです。

そのようなことで、第4四半期は加盟店の売上回復を目指して、広告販促費用を大量に投下します。プル型の営業、「ダスキンさん、来てください」と呼んでいただければ、しっかりと説明ができるのが当社ですので、そのようなかたちで第4四半期は取り組んでいるところです。

いいことあるぞ mister donutの実現①

井出:次は、フードグループのミスタードーナツについてです。こちらはコロナ禍で店内飲食のお客さまが大きく減少する一方で、テイクアウト需要が拡大し、お持ち帰りのお客さま数やお持ち帰り個数が増加しています。

これを牽引しているのがスライド左側の「misdo meets」という商品戦略と、スライド右側の「ポケモン」等のキャンペーンです。

「misdo meets」というのは当社だけの商品開発に頼らずに、世界中の最高水準の素材や技術を持った企業やパティシエと組ませていただき、当社のノウハウが出会ったらどのようになるのかと、ちょっとわくわくするような商品を作りたいという共同開発の企画です。こちらは、おおよそ四半期に1回くらいの割合で、ここ何年か行っています。

直近では、ベルギー王室御用達の「ピエール マルコリーニ」と組ませていただき、これが大好評でした。

八木:まったく買えませんでした。

井出:大変申し訳ございませんでした。

八木:お店によっては、販売する時間などを決めていたようですね。

井出:そうですね。あるだけ商品を作ってしまうと、わずか数日で商品が終わってしまうため、ある程度限定的に出していったかたちになります。

八木:なるほど。

井出:毎日ある程度商品は出していたのですが、時間帯によってはせっかく並んだのに買えなかったというお叱りをたくさんいただいています。

八木:それでも、ミスドに来たからには、他のものを買って帰るようになるとは思います。

井出:おっしゃるとおりです。

八木:このようなコラボレーションについて、「misdo meets」と名前がすでについているということは、これからも進めていかれるご予定があるのでしょうか?

井出:もちろん、そうです。今後も世界中のすばらしい企業やパティシエと、「あれと、あれがドーナツになったらどうなるの?」といったわくわく感や、「今回おいしかったから次もまたあれが食べてみたい」などということを狙って、継続して「misdo meets」の企画を続けていきたいと思っています。

いいことあるぞ mister donutの実現②

井出:次に、お店についてです。コロナ禍の状況において、お客さまの生活様式や価値観が変わったりしていますので、ミスタードーナツではこの状況下において、安心してもっと便利に利用しやすい店舗を作っていきたいと思っています。

持ち帰りがしやすいWeb予約システムの導入や、郊外においてはドライブスルー、さらにはデリバリーなどの取り組みも積極的に進めています。

都市部の出店を強化するためのセントラルキッチンについては、山手線沿線などでの出店は難しいため、セントラルキッチンを置いて、小規模のテイクアウト中心のお店などを考えています。

特に、私が個人的に期待しているのが、Web予約システムです。今やファーストフード店では当たり前のことかもしれませんが、実は、ミスタードーナツでは非常に難しいことです。バイオーダーで注文されてから作るわけではなく、何十個ずつ揚げて並べて、お客さまが1個ずつ取っていくかたちをとっているため、在庫の問題が出てきます。

八木:先ほどまであったのに、なくなってしまったということもありますね。

井出:そのようなことになるので、非常に難しくて実現していなかったのですが、導入できそうな準備が整いつつあります。これで少しでもお並びいただく時間や、お並びいただく列も短くなると期待しているところです。

八木:「ピエール マルコリーニ」の話ばかりで申し訳ないのですが、あの商品を買いたいと思った時に、都心の渋谷などで店舗を探したのですが、意外と少ないことがわかりました。

井出:そうですね。これは当社の課題、ミスタードーナツの課題でもありますので、セントラルキッチンを使って、小規模といいますか、キッチンレスや、テイクアウトのお店を作っていく準備を進めています。

坂本:ポップアップショップのようなかたちで、ショッピングセンターの中に「ポコッ」といきなりありますよね。

井出:現在はそのようなお店が多いので、少し構成比を変えて、再編していきたい考えもあるようです。

ミスタードーナツ お客様売上推移

井出:これらの取り組みによる、フードグループの売上です。前期比で、第1四半期は16.2パーセントまで落ち込んでいましたが、第3四半期はプラス1.7パーセントまで回復しています。足元では、先ほどの「ピエール マルコリーニ」効果があり、大変良好な状況です。

海外展開

井出:海外について、少しだけご紹介します。現在、ダストコントロールとミスタードーナツを中心にアジア圏に絞って展開しています。成長著しいアジアで、同じ東洋人というところで商品・サービスを提供することを考えており、スライドに記載の地域で収益の拡大を図っていきたいと思っています。

坂本:日本と比べてインドネシア、フィリピンの出店数がすごいことになっていますね。

八木:3,000店以上あるのは、すごいですね。

坂本:こちらについては、フランチャイズで有力な会社があって、そこが行ったのですか?

井出:いいえ。実は、これはそのようなことではなく、フィリピンとインドネシアは日本とは異なり、独立した店舗以外でも商品を取り扱っていただいているところが多くあります。例えば、コンビニやガソリンスタンドに販売拠点があるため、そちらもカウントして3,000数百店となっています。

坂本:そのようなことがあるのですね。

井出:それだけドーナツを買える拠点は多いということになります。

坂本:知名度の向上にもなります。

井出:おっしゃるとおりです。そのため、「こんなにたくさん出ているのか」というと、少し違うということです。

八木:メニューは日本と違いますか?

井出:出店国によって異なりますが、基本的には大きくは変わらないですね。

八木:アジア全般に受けているということなのですね。

井出:ミスタードーナツで出しているところは、同じような商品になります。

企業価値向上に向けた取り組み

井出:ここからは、企業価値向上に向けた取り組みということで、ダスキンのCSV経営について、少しだけお話をしたいと思います。当社は冒頭で紹介させていただいた、鈴木清一という方が「祈りの経営」「道と経済の合一」という経営理念を提唱して、そこに集った加盟店のオーナーとこの理念を共有しているフランチャイズ企業です。

「道」は人や社会に対する優しさで、こちらは普遍のもの、「経済」はその一方で、商品やサービス、事業の形態は常に変えていくべきもの、時代に合わせて変えていくべきものと考えています。

この考えは今でいう「CSV経営」で、社会的な価値創造と営利企業としての経済活動を両立させることが、社会と企業の持続的な成長を実現するためには不可欠ということです。つまり、目指しているところは一緒であり、今でいうと「CSV経営」になります。

経営理念は「道と経済の合一」ということで、これは創業以来、加盟店も含めて経営理念を共有しており、今の経営者にも受け継がれているところです。

CSVの取り組み 進捗状況

井出:具体的な取り組みですが、「社会の持続的な発展」「環境との共生」「人づくり」の3つのテーマから成り立っており、それぞれのテーマに対して「何ができるのか?」ということを考えて、テーマに沿って具体的な項目ごとに目標が設定されています。

当社において、社会の持続的な発展への貢献は、やはり事業活動を通じたものでありたいと考えています。ここから2つの取り組みを紹介します。

CSVの取り組み事例(1)

井出:1つ目は、超高齢化社会や働き方、暮らし方の変化に対応して、地域社会の持続的な発展に貢献するソリューションを展開するということです。

少し簡単にご説明すると、高齢者の代わりに家事サービスを提供して、身体的な苦労を緩和したり、働く女性に代わって家事サービスを提供して、その時間を使って家族と一緒に過ごしていただくということです。

そのようなサービス拠点を増やして、サービス拠点を拡大させて、地域社会の持続的な発展に貢献したいと考えています。5年間で、235拠点増やすことができています。

坂本:こちらの「サービスマスター」は、かなり増えていると思いますが、客単価も上昇しているかということと、最近、需要があるサービスがあったら教えてください。

井出:「サービスマスター」については、実は、客単価はそれほど変わっていないです。私も調べてみて、エアコンの抗菌コートのところで単価が上がったりしているのかと思いましたが、1件あたりの単価はそれほど変わっていませんでした。

それよりも、むしろ客数が10パーセント以上増えており、衛生意識の高まりから、現状では特にエアコンクリーニングが非常に大きく成長しています。

八木:家に知らない方を招くということに対しての抵抗感はありませんか?

坂本:最近は、比較的それが薄れている感じでしょうか?

井出:この事業を始めた頃は、「人にお掃除を頼むなんて」といった方や、「周りの目も気になるから、あまりおおっぴらに来ないでください」という方もいたということですが、現在では、そのようなことが当たり前になってきています。

特に、シニアについては協力していかないと、社会自体が成り立たなくなってきていますので、そのような意味では、ハードルが下がってきていると思っています。

八木:「コロナ禍でも」ということですよね?

井出:むしろ「コロナ禍だから」かもしれません。

八木:衛生の高まりのほうが、その上を行ったというところでしょうか。

井出:それに加えて、「知らない人だと嫌だな」ということもあり、そこはやはりブランドが大事ということです。

坂本:そうですよね。「ダスキンさんだから」とか「何回か来るから」という感じもあると思います。

CSVの取り組み事例(2)

井出:2つ目の取り組みは「環境との共生」というテーマで行っている循環型社会づくりの一環として、食品廃棄物のリサイクル率の向上に取り組んでいます。

スライド上段には、食品廃棄物の再生率をお示ししていますが、これはフード事業全店舗で取り組んでいます。家畜の飼料などへの再生利用の実施率の数字が記載されていますが、年々上昇しており、今期は53パーセントとなる見込みです。

また、スライド下段はミスタードーナツの調理オイルのリサイクル率について記載しています。こちらのリサイクル率は100パーセントとなっており、工業用の原料や店舗で使用する液体洗剤としてリサイクルされています。

ESG評価による企業価値向上

井出:そのような取り組みが強化されていることで、当社のESGの評価は大変よい評価をいただいており、GPIFが採用しているESGの指数の4つの構成銘柄に選定されています。直近では、FTSEのBlossom Japan Indexにも選定されました。4つすべて選定されているという評価をいただいています。

株主還元

井出:最後のテーマは、株主還元についてです。今期は、新型コロナウイルスの影響で純利益がかなり低い予想になっているので、自社株買いは一切行っていません。しかしながら、前期までの総還元性向をご覧いただくと、100パーセントを超える期が多いということで、しっかり還元させていただいています。

配当については、前期に配当方針を変更しました。記念配当で50円だった時はありますが、これまでずっと40円だったところを、連結配当性向50パーセントをめどに、かつ安定的な配当を行いたいと変更しています。

昨年は50パーセントということで56円でした。ただ、今期の純利益の予想から配当は寂しくなりそうですが、安定的な現金配当ということで、以前の40円の水準に戻させていただく予想にしています。

坂本:自社株買いをほぼ毎年行っているということと、かなり安定した配当とお話しいただいたのですが、自己株については、購入した分をモスフードとの提携のように将来的なM&Aを含めたものに使うのか、償却するのか教えていただけたらと思います。

井出:自社株買いの自己株については、発行済み株式数でいうとおおよそ3パーセント前後を、提携などに備えて手元に置いておくことになっています。それ以外は、自社株買いをした最後のところで、その都度、償却を繰り返しています。

株主優待

井出:最後は株主優待についてです。当社の商品・サービスはBtoC向けの会社ですので、まずは利用していただきたいという思いで、優待券を送らせていただいています。9月と3月の年2回、100株以上300株未満お持ちの株主さまには1,000円分、300株以上お持ちの株主さまには2,000円分送らせていただいています。

こちらの優待券については、提携しているモスフードサービスが運営しているモスバーガーでも利用いただけます。相互利用できる珍しい優待券のため、株主さまに大変好評いただいています。

また、やはり長期で持っていただきたいという願いがありますので、3年以上継続してお持ちいただいている株主さまに対しては、さらに半年ごとに優待券500円分を1枚プラスして出させていただいています。

長期でお持ちいただきたいと考えており、現在、株主数に対して67パーセントの方々が長期保有となっています。私からの説明は以上です。長時間ありがとうございました。

質疑応答:イベント衛生サービスにおけるスタッフの教育について

坂本:個人投資家と、会場からのご質問です。昨年より、イベント向けの衛生サービスの提供が始まりました。お話にも少しありましたが、実際に作業するスタッフの教育等は、どのように行っていますか? もともと、ハウスクリーニングを行っていた人に来てもらったり、新規で採用することもあると思いますが、このあたりを教えてください。

井出:イベント衛生サービスについては、お伝えしたように一番影響を受けたレントオール事業が中心となり、ハブになって、他の3つの事業をつないでいます。

これにより、専用に人を雇っているということではなく、従来の「サービスマスター」の人員、「ターミニックス」の人員、ダストコントロールの人員がこの企画に対して集まり、レントオール事業の人間が差配して行っています。

研修は、当然ながら新型コロナウイルスに対する研修なども含めて、それぞれの事業部で行っています。サービスの人員を集めて、イベントごとに差配して体制を作っています。

坂本:もともとのお掃除のプロが行っているということですね?

井出:おっしゃるとおりです。

質疑応答:モスフードとの取り組みについて

坂本:最近、モスフードとの取り組みは何かありますか? 

井出:モスフードとは昨今は目新しい展開はありません。以前は「モスド」という店舗を出していましたが、特に増やしたりはしていません。新しい企画はありませんが、お互いにいろいろなところで意識し合っており、私もそうですが、モスフードのことはかなり参考にさせていただき、勉強しているところです。

ダストコントロールとミスタードーナツのシナジーについて

八木:個人投資家の方から、「ダストコントロールとミスタードーナツのシナジーについて、衛生面以外であれば教えてください」とあります。これはいかがですか?

井出:これは、いつもよく聞かれます。

坂本:そうですね。

井出:もともとが、50年近く前に相互のシナジーを考えて始めたというところとは少し異なり、成長してきた加盟店に対して次の事業、次の事業という展開で現在に至ります。

ただ、今となっては衛生面で、ミスタードーナツの衛生面を担当しているエリアマネージャーがダストコントロールの衛生面の人員になることもあります。

お客さま向けとしては、ダストコントロール、あるいは役務提供サービスのお客さまへの顧客サービスとして、ミスタードーナツの割引券などをある一定期間、年に1回お渡しさせていただいたりしています。

それによって、今度はミスタードーナツへの送客ができます。家庭のお客さまは400万件以上いるため、現地のミスタードーナツの地域と一緒になって、そのようなことを行っています。

坂本:以前、会計でそのような券出している人を見たことがありました。そうだったのですね。やっとわかりました。

井出:たくさん買うと安くなる券などがそれに当たります。

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