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一般相対性理論を超えた重力波レンズ効果 シカゴ大学の研究
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宇宙が時間と空間でできているという事実は誰もが知っている常識だが、宇宙における重力の存在が、時間を遅らせたり空間を曲げたりしているという事実を認識しているのは、宇宙物理学を研究している科学者か、一部の宇宙好きに限られることだろう。だが、この事実は20世紀にアインシュタインが一般相対性理論で唱えてきたことで、後世になってその正しさが観測データによって証明されてきたことでもある。
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重力波の存在は一般相対性理論で予言されてきたことだが、それが宇宙空間でどのようなメカニズムで伝播してゆくのかということまでは、一般相対性理論では示されていなかった。この謎の解明に取り組むシカゴ大学の研究者らの論文が、アメリカ物理学会(American Physical Society: APS)の論文誌『Physical Review D』で公開されたので、今回はその概要について紹介する。
2015年以降、人類は重力波の観測を可能にしてきたが、これまでに確認された重力波のすべては、非常に重い複数の天体(ブラックホールあるいは中性子星)が衝突する際に生じる、時空構造の波紋を捉えたものであった。このような形で検出される重力波は、発生源から地球へ伝播する途中の宇宙空間に非常に大きな質量のブラックホールや銀河団、つまり重力レンズとなりうるものが存在する場合、それらの影響を受けてその形態を変化させるのだという。
このような重力波形態の変化は、エコーの形をとる場合とスクランブルの形をとる場合がある。これは重力レンズによって、もとの重力波から派生した別の波形が生じるためだと説明されている(論文ではこれを重力波の複屈折と表現している)。この派生した波形のもとの重力波からの遅延時間が長い場合には、派生波がエコーの形態をとり、遅延時間が短い場合には、スクランブルの形をとる。
このように重力波が重力レンズで複屈折を起こす原因の可能性の1つとして、人類がまだ見出すことができていない未知の粒子が、この宇宙には存在しているからだと研究者らは主張している。
重力波が地球に届くまでの間に通過する重力レンズが1つの場合は、先に示したような現象として捉えられるわけだが、複数の重力レンズを通過してくる場合には、より複雑な形態をした重力波が観測されるに違いない。このような様々なケースの重力波の観測を増やしていくことで、近い将来、未知の粒子の謎が解明されていくことだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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