日本固有のブドウ品種「甲州」、全ゲノムを解読 ワイン高品質化に期待 東農大と山梨大

2020年11月18日 12:15

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欧州で栽培されている他品種と甲州の比較ゲノム解析結果(画像: 東京農業大学の発表より)

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 東京農業大学と山梨大学による共同研究グループは16日、日本固有のブドウ品種で、白ワインの製造に使われる「甲州」の全ゲノム解読に成功したと発表した。ワイン製造に特化した欧州のブドウ品種と比べ、機能性が異なる遺伝子が発見されたほか、遺伝子上の差異は、ポリフェノールなど柑橘系の風味に違いをもたらすことがわかった。ワインの高品質化に向けた品種改良などに期待がかかる。

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 甲州は、商業栽培されている唯一の在来ブドウ種で、修行僧の行基が開山した真言宗大善寺で栽培を始めたのが起源とされる。フレッシュで軽やかな味わいが特徴で、世界的なワインコンクールで受賞するなど、高く評価されている。

 近年は、世界的なブームである和食に合うワインとして認知されるようになり、2010年には国際ぶどう・ぶどう酒機構のリストに登録された。一方で、甲州種ワインの品質向上に向けては、甲州の明確な成分指標がないことが課題であり、2010年代からゲノムを持つ遺伝情報を総合的に解析するゲノム解析を用いた研究が進められてきた。

 ゲノム解析は、DNAの塩基配列を解読し、農作物のゲノムの最適化を促す狙いがある。ゲノムの最適化によって、有用な種の選別やデザインに要する時間が削減され、育種の効率化が図られる。また、作物の特性に合った生育環境の選別も可能になるという。

 研究グループは、そうした狙いを含みながら研究を進めてきたが、今回、ゲノム配列情報を高速、並列に読み取れる次世代シーケンサーを用いることでゲノム解読に成功した。さらに、欧州で有名な白ワイン品種「トンプソン・シードレス」と、赤ワイン品種「トマ」を用い、リシーケンス解析でゲノムの機能的、構造的な特徴付けも行った。

 結果、天然芳香化合物の1種であるフェニルプロパノイドの経路などで、赤ブドウに似た変化を発見。比較対象のトンプソン・シードレス、トマに対しては、細胞組成や分子機能といった指標で遺伝子の変化量が大きいことも判明した。

 研究グループは遺伝子解析を深掘りし、フェニルプロパノイド、フラボノイド、グルタチオンといった代謝系に関わる遺伝子の変化にも着目。それらの遺伝子が、ポリフェノールなどの機能成分や柑橘系の風味に関連していることを明らかにした。

 今回の研究で突き止めたゲノム情報は、甲州種ワインの高品質化を図る上での遺伝資源となる。遺伝資源がその後の研究に応用されれば、ブドウ栽培とワイン醸造の双方の活性化に寄与する可能性が高い。その意味で、本研究は、甲州種ワインの発展におけるターニングポイントになりそうだ。(記事:小村海・記事一覧を見る

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