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EVシフトと中国市場への傾斜
●何故EVに注目が集まったのか
「1充電走行距離」ひとつをとっても、未だに「自動車としては未完」のEVが、急激に自動車マーケットの中心に躍り出たのは、何故だろうか?
【こちらも】ハイブリッド車とEV車 生き残りの道は
1つは、現在の内燃機関が主力の世の中では、向こう10年以上、自動車先進国に技術的に追い付くことが不可能だと認識したであろう中国政府の、強権的な転換政策が大きい。
モーターとバッテリーを組み合わせるだけで、内燃機関程の部品点数も必要が無くて、新しい土俵でなら戦えると、安易に考えたのだろう。
●日本の高い技術水準
従来の、内燃機関を主体とした自動車産業は、過去に蓄積された技術と、裾野の広い部品供給体制が不可欠だ。
これは一朝一夕には到底解決出来る問題では無い。
東日本大震災でも、EV車やハイブリッド車で「感電死」が発生していないのは、日本の高度な技術と、厳格な規格のお蔭だ。
バッテリー発火が原因で、日本ではブランド名を伏せざるを得なくなった某国製携帯電話は、航空機に持ち込むことすらできなかった位だ。
当然、事故を起こした新幹線擬きの高速列車を、埋めてしまって隠蔽を謀る様な国とは次元が異なる。
ネット検索すれば、「日産リーフ」や「三菱i-MiEV」の火災事故が皆無に近いのに対し、「テスラ」や「現代コナ」の火災事故は幾つもヒットする。EVには高度な技術が要求されるのだ。
●排気ガス不正の追い打ち
もう1つの、EV推しの原因は、「米国市場で排気ガス規制」をクリア出来ない様な、技術的に劣ったVW製ディーゼルエンジン排気ガスデータを、不正な手段で誤魔化したことによる、一般ユーザーに対する裏切り。
この結果、ディーゼル車の都市乗り入れ禁止等の、世界レベルで排ガスや燃費を巡る規制が強化される流れを引き起こした。
当初、ハイブリッド技術で日本車に後れをとった欧州勢は、ガソリン車より燃費が良い、ディーゼル車で対抗しようとしていたが、これにより、一気に内燃機関、殊にディーゼルエンジンに対する社会的な信用が失墜したのは事実だ。
西欧の新車版売に占めるディーゼル車は、15年の52%から20年1~6月には28%まで下落した。
●VWの動向
日本経済新聞によれば、VWは25年に販売全体の20%を目指し、9月28日、合弁3社と共同で中国でのEV分野で2024年までの5年間に、計150億ユーロ(約1兆8千億円)を投資すると発表した。
25年までに中国で、新エネルギー車を15車種投入し、製品の35%を電動車にするという。
成程、中国は、現時点では世界最大のEV市場であるが、米中摩擦も激化する状況下、5年後も中国が現在と同じ様な市場規模、経済規模で存在出来るかは不明だ。
●テスラの動向
テスラの場合は、中国事業が成長を牽引し、7-8月には34%を中国市場で販売している。そして「モデル3」を追加し、このモデルが中国販売の9割程度を占めると見られる。
2020年7月9日の「ハイブリッド車とEV車 生き残りの道は」にも書いたが、テスラはモデル“X”なら1,059万~1,299万 “S”でも989万~1,229万と高額だ。
物珍しさで高額車を購入出来る層は、複数車両を併有することは容易く、他にも車を併有しているだろう。
これは、数百万円超のプライスタグが付く「宝飾時計」のジャンルに近い品を、富裕層が物珍しさだけで、複数保有するコレクションの中に、1本追加する様なものだ。
「モデル3」の車両価格は、従来の「宝飾時計」のジャンルからは少し降りて、513万~713万3000円となった。
数十万~100万程度の「高級時計」のジャンルで、例えれば、宝石や金無垢とかの装飾を省いた、簡素版のロレックス程度まで降りてきただけなのだ。
勿論、「ロレックスの高性能」は望むべくも無く、「防水性能も耐震性能にも優れた普段使いの実用時計」レベルにも遠く及ばない。華やかさ、煌びやかさが失われただけで、「日常生活防水も無い単なる普及版時計」の性能すら満たしていない。
「日産リーフ」と比較すれば、価格帯は「テスラ3」が高額だ。航続距離も、寸法も似通っている。
但し「日産リーフ」は、国産車であることの信頼性もあり、価格面では有利だが、当然、未だ複数台数保有が不可能な「オンリーワン」ユーザーの選択肢とはなり難い。
●取り組むべき課題
EVは「車載電池」性能の向上に期待したい。殊に、「バッテリーの安全性確保」は喫緊の課題だ。
また、「燃料電池車」と「水素エンジン車」普及のための「水素インフラ」充実にもっと積極的に取り組むべきである。
過度な「EV推し」と、将来的な不安が伴う「中国依存」は避けるべきだろう。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る)
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