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哺乳類細胞の遺伝子のスイッチを光でオンオフ 京大が技術開発
研究の概要(画像:京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学は8月28日、哺乳類の細胞に青色光を照射することで、哺乳類細胞における遺伝子のスイッチをオンオフする技術を開発したと発表した。
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■遺伝子の発現を決める「スイッチ」
細胞核内のDNAには遺伝情報が含まれており、この情報をもとにタンパク質が合成されることで生命の活動が維持される。だが、DNAの遺伝情報はすべてが発現されない。遺伝子にはスイッチがあり、働いているものと働いていないものが存在する。どの遺伝子がオン状態であるかやオフ状態であるかは、個人によって異なり、物理的要因などによって決定される。
京都大学の研究グループは、遺伝子発現のパターンを人工的にコントロールする技術の開発に取り組んできた。これまで、酵母細胞をもとに光の照射で遺伝子発現をコントロールする技術が、ショウジョウバエやゼブラフィッシュ等の生物を主にして開発されてきた。だが光の照射を止めても、遺伝子の発現がオン状態のままになっている等の問題があった。
■脳の損傷に対する再生医療研究に貢献
研究グループはこの問題を解決するために、酵母細胞で開発された、光に依存するさまざまな遺伝子発現システムを調べた。シロイヌナズナに由来する光の照射による遺伝子発現システムと組み合わせた結果、遺伝子発現のオンオフが効率よく機能することが、マウスの脳を使った実験で明らかになった。
本成果により、脳内の神経幹細胞の増殖や分化についての遺伝子の発現パターンをコントロールすることで、その機能的な意義が明らかになり、脳損傷などの再生医療研究への貢献も期待されるとしている。
研究の詳細は、米iScience誌にて26日にオンライン掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る)
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