「酸化ストレス」見つける新たなセンサー発見 治療薬開発に期待 東大

2020年7月13日 07:35

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免疫応答によって、活性化されたMTK1がSAPK経路の長期活性化をもたらし、インターロイキン6の産生を誘導することを示した研究結果(東京大学医科学研究所の発表より)

免疫応答によって、活性化されたMTK1がSAPK経路の長期活性化をもたらし、インターロイキン6の産生を誘導することを示した研究結果(東京大学医科学研究所の発表より)[写真拡大]

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 酸素が体内の細胞や組織などと結合し、ダメージが蓄積していく酸化ストレス。生活習慣病や老化の危険因子とされ、ガンを進行させるとも考えられている。近年の研究では、東北大学東北メディカル・メガバンク機構が、酸化ストレスを感知するセンサーの役目を果たすタンパク質「KEAP1」(キープ1)が、複数のアミノ酸「システイン残基」を使い分けて酸化ストレスを感知する仕組みを解明している。

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 そんな中、東京大学医科学研究所の武田睦寛教授らのグループが、生体内の酸化ストレスを検知し、細胞死や炎症といった細胞応答を導く、新たな酸化ストレス・センサーとして、タンパク質リン酸化酵素MTK1を発見したと発表した。

 分子解析を通じ、細胞内の酸化・還元状態を検知するMTK1が、ガンの増殖を高める酵素「MAPキナーゼ」経路の活性化を誘導し、炎症性サイトカインの生成や、細胞死誘導などの細胞運命決定に重要な役割を果たしていることを見出した。研究成果は、米国科学雑誌「Science Advances」に掲載されている。

 ヒトを含む生物は、酸素呼吸の副産物として生体内に活性酸化種を作り出す。この活性酸素種は、生体内で脂質やタンパク質、酵素、DNAなどと結び付いて体内にダメージを与え、老化やガン、慢性炎症性疾患など様々な疾病をもたらす。そのため、生体内の酸化ストレスを正確に検知し、その低減に向けた対策を実施することは、病態把握や未病診断、老化制御に役立つとされているが、酸化ストレス状態を検知するメカニズムは依然として未解明だった。

 そこで、東大医科学研究所の研究グループは、細胞外のシグナルを核内へと伝える鍵分子と機能するMAPK(SAPK)経路に着目し、このメカニズム発生の機序特定に挑んだ。

 研究グループはまず、SAPK経路の上流に当たるタンパク質リン酸化酵素(SAPKKK)のうち、MTK1が酸化ストレスによって強く活性化することを発見。続いて、MTK1の分子機構を解析したところ、MTK1に存在する特定のシステイン残基が酸化ストレス刺激に応答してすぐに酸化することや、システイン残基が抗酸化分子のチオレドキシンによって緩やかに還元されることで、酸化活性が著しく進むことがわかった。

 これにより、MTK1は酸化ストレスの刺激を受けた後、構成するシステイン残基上で起こる酸化還元反応を通じて活性化するSAPKKKである事実を明らかにした。

 さらに研究グループは、MTK1の生理機能を解析した結果、MTK1を介したSAPK経路の長期活性化が、酸化ストレスによる上皮細胞の細胞死に直結していることを特定。免疫細胞においては、病原菌感染後にマクロファージ内で作り出される活性酸素種に反応してMTK1が強く活性化し、サイトカインの産生のほか、炎症や獲得免疫の成立に重要な役割を果たすタンパク質・インターロイキン6産生の鍵を握ることを見出した。

 研究グループは、これらの研究成果を踏まえ、「MTK1を介したSAPK経路の活性化は、細胞死を誘発して組織障害をもたらすと同時に、炎症や免疫応答を引き起こす」としている。本研究の知見を生かし、活性酸素種が引き起こすガンや慢性炎症性疾患、メタボリックシンドロームといった疾患の新薬開発を目指すという。(記事:小村海・記事一覧を見る

関連キーワード東京大学免疫老化メタボリックシンドロームDNA

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