巨大ブラックホールの形成過程を統一的に説明可能な新説を提唱 東北大ら

2020年6月4日 07:08

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数値シミュレーションにより重元素を含むガス雲から超大質量星が形成 (c) Sunmyon Chon

数値シミュレーションにより重元素を含むガス雲から超大質量星が形成 (c) Sunmyon Chon[写真拡大]

 2019年に渦巻銀河M77の中心に存在する巨大ブラックホールの撮影に成功したことは記憶に新しい。このような巨大ブラックホールの形成には謎な点が多い。東北大学は2日、国立天文台のスーパコンピューターを用いた数値シミュレーションにより、重元素を含むガスから巨大ブラックホールが形成されることを示す新説を発表した。

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■巨大ブラックホール形成の謎

 ブラックホールは、大質量星が自らの質量を支えきれなくなり、重力崩壊を起こすことで誕生すると考えられている。このようなブラックホールは小規模であるのに対し、銀河の中心にあるブラックホールは、はるかに大きい。その質量は最大で太陽の100億倍にも及ぶという。

 巨大ブラックホール形成プロセスの説として有効だったのが、「始原ガス」と呼ばれるビッグバン直後に存在した元素からなる物質だ。水素やヘリウム等の軽元素からなる始原ガスが作るガス雲は、収縮により10万倍から100万倍の質量をもつ巨大な星が形成される。このような超大質量星がブラックホールへと変貌し、周囲のガスを吸収することで巨大ブラックホールへと成長するというシナリオが考えられている。

 だが軽元素からなる始原ガスは、ビッグバン後数億年以内の初期宇宙にのみ存在した。宇宙の進化過程で超新星爆発により、始原ガスは炭素や酸素等の重元素を含むようになったが、重元素はエネルギーを失わせるため、超大質量星の形成が難しいと考えられていた。

■宇宙初期でなくとも巨大ブラックホールは形成可能

 東北大学、国立天文台の研究者から構成されるグループは、重元素を少量含むガス雲から、巨大ブラックホールの起源となる超大質量星が形成されるかどうかを数値シミュレーションによって実証した。

 その結果、重元素によりガス雲は分裂するが、ガス雲の中心に激しいガスの流れが存在するため、超大質量星が形成可能なことが証明された。これにより、巨大ブラックホールの起源が、統一的に説明される可能性が開かれたとしている。

 研究の詳細は、5月出版の王立天文学会月報に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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