ツングースカ大爆発を発生させた張本人は太陽系でまだ存在か 英国の研究

2020年5月21日 08:05

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半径50mの小惑星が地球をかすめる際の軌道を示す図(右上挿入図から地球上空の通過距離が3000kmであることが読み取れる) (c) Khrennikov他

半径50mの小惑星が地球をかすめる際の軌道を示す図(右上挿入図から地球上空の通過距離が3000kmであることが読み取れる) (c) Khrennikov他[写真拡大]

 ツングースカ大爆発とは、シベリアのツングースカ川上流で1908年6月30日朝7時2分(現地時間)に起こった、小惑星が原因と考えられる大爆発事件を指し、天文マニアでなくとも聞き覚えがある人も多いのではないだろうか。最近、イギリス王立天文学会で発表されたロシア人研究者たちによる論文では、驚くことにこの大爆発事件を起こした張本人は実は地球上空をかすめただけで、事件後は宇宙空間に飛び去り、現在も太陽の周りを公転している可能性が高いことが示されている。

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 この事件は、人がほとんど居住していない地域で発生したこともあって、目撃談も少なく1920年代までは科学的な調査が行われていなかった。一方この事件では、2,000平方キロメートルを超える広い範囲にわたって森林の樹木がなぎ倒されるという、人類史上まれにみる規模の爆発が起きていた。だが不思議なことに、小惑星が衝突した痕跡であるクレーターは現在でも見つかっていない。

 この事件での爆発規模は、5メガトンの核爆弾に相当すると推定されているが、それだけの規模の大爆発を起こしていながら、クレーターが見つかっていないのはミステリアスであるとしか言いようがない。この爆発と類似する事件が2013年にチェリャビンスクで起きているが、この時は70mの大きさの隕石が地球上空で大爆発を起こし、その本体は地面に衝突せず、爆発の時に落下した破片だけが見つかっている。

 チェリャビンスク事件と異なるのは、ツングースカ大爆発も地球上空で小惑星が大爆発を起こしてはいるものの、その破片はいまだに何も見つかっていないことだ。つまり小惑星は地上に猛烈な衝撃波をもたらしただけで、爆発で断片化することなく、地球上空をかすめただけで宇宙空間へ飛び去ったと考えるのが妥当であろう。

 今回発表された論文では、数値解析によってツングースカ大爆発を起こした小惑星の挙動をシミュレーションしている。それによれば、小惑星は鉄を主成分とした存在で地球大気中を通過した距離は約3000km、地球に最も接近した際には、地球の約10~15km上空を通過したものと推論している。

 またこの爆発から数日は、世界の広い範囲で夜空が明るく輝き、ロンドンでは真夜中でもあかりが無くても新聞が読める状況であったと言うが、この現象についても彼らの推論によって説明がつくという。

 私たちは中学校の理科で第1宇宙速度、第2宇宙速度について習ったが、みなさんは覚えているだろうか。前者は地球に落下せず周回を可能にするための速度で秒速7.9km、後者は地球の引力圏から抜け出すのに必要な速度で秒速11.2kmである。したがってツングースカ大爆発の犯人は地球上空を秒速11.2km以上の高速で移動したため、地球にクレーターの痕跡を残すことなく、地球脱出に成功したのだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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