電装化加速の自動車市場、車載3万点の部品に求められる「機能安全」とは?

2019年11月24日 21:39

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記事提供元:エコノミックニュース

ロームが開発した、最新の半導体ヒューズ「BV2Hx045EFU-C」。業界で初めて単独でシステム保護に成功。電装化が進む自動車の高信頼のシステム構築に貢献

ロームが開発した、最新の半導体ヒューズ「BV2Hx045EFU-C」。業界で初めて単独でシステム保護に成功。電装化が進む自動車の高信頼のシステム構築に貢献[写真拡大]

 自動車業界は今、電気自動車や自動運転など電子化への道を加速している。かつてはSF映画の中でしか見られなかったような技術が続々と搭載されており、完全自動運転の自動車が公道を走りだす日も、そう遠い未来のことではないだろう。

 しかし、その一方で一抹の不安も過る。車は、ひとたび事故を起こせば人の命を奪う凶器にもなり兼ねない。運転者や同乗者はもとより、制御不能に陥って暴走でもしたらと考えると恐ろしくもなる。

 実際、最新の家電製品などでも突発的な故障や事故は後を絶たない。家電の場合は火災や爆発でも起きない限り、たとえ故障しても人命にかかわるようなことは少ないが、自動車の場合はそうはいかない。部品一つ一つに至るまで、最高レベルの安全性能が求められる。

 とはいえ、1台のクルマに使用されている部品は小さなネジまで数えるとおよそ3万個。その全てにおいて100パーセント不具合を起こさないというのは不可能に近いだろう。そこで必要となってくるのが、より安全な車載システムを構築するために、有事の際に事故のリスクや規模を低減する「機能安全」という考え方だ。機能安全とは、安全を確保するための考え方の一つで、自動車分野においては、電子システムの故障などによって機能不全が発生した場合、人体への危害を発生させないようリスクを受け入れられるレベルまで減らして安全にすることをいう。

 例えば、自動車が重大な故障を起こさないための安全策として、最も大事なところでは「エンジンコントロールユニット(ECU)」に付属するヒューズなどがある。

 ECUは、電気自動車や自動運転車などの先進技術車において、エンジンの運転制御や電気的な補助装置などを総合的に制御するマイコンで、いわば自動車の脳ともいえるもの。もしも、周辺部品が誤動作、ショートして、過電流でECUが故障してしまうようなことになると、自動車は正常に動作できなくなってしまう。エンジンが停止したり、急減速するだけならまだしも、不慮の事故にもつながりかねない。

 この過電流対策としてはこれまで、自身を溶断することでシステムを守るヒューズが採用されていたが、溶断後のメンテナンスや経年劣化に課題があった。そこで現在では、半導体技術により、壊れず、劣化せずに回路を保護できる半導体ヒューズ(IPD)の採用が進んでいる。

 ところが、メンテナンス不要のシステム構築に貢献することができるといわれているこのIPDにも弱点があった。通常、IPDは起動時に回路に流れ込む突入電流だけに対応し、それ以外の定常電流はマイコンや過電流検出ICなども使って過電流保護を実現している。しかし、定常電流の過電流が検出されたとき、IPD出力に接続される後段回路との相性によっては、IPDが過電流に対する保護と復帰を繰り返してしまい、制御不能になる可能性があるというのだ。これでは安全とは言い難い。

 そんな中、日本の電子企業であるローム株式会社〈6963〉が、業界で初めて、単独でシステム保護が可能なIPDの開発に成功したという。

 同社が開発した新しいIPDは、独自の過電流保護機能により、単独で突入電流と定常電流の過電流からシステムを保護できるため、安定してシステムを駆動させ続けることが可能だという。より信頼性の高いシステム構築を実現するだけでなく、異常発生時にマイコンに対してエラー信号を発信することもできるため、システムの機能安全構築にも貢献するという優れモノだ。しかも、同社によると、一般品でのソリューションと比較して、最大で7点の部品点数削減と70%の実装面積削減が見込めるという。

 完全自動運転車が公道を走る未来も、もうそこまで来ているのは間違いない。日本政府も、2020年代の前半の内に高速道路でレベル3の自動運転車を走らせたいという考えを示している。その先駆けとして、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、トヨタ〈7203〉が昨年の「CES2018」でコンセプトカーとして発表した自動運転EV「イー・パレット」を移動手段の一つとして活用する予定だという。

 便利なだけでなく、安全に安心して乗車できる日が一日も早く訪れるよう、日本のモノづくり企業の絶え間ない努力と、高度で誠実な技術力に期待したい。(編集担当:藤原伊織)

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