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ゴーン被告とケリー被告の不始末が波及する不条理は、日産西川社長辞任へ! (2-2)
SARの配分を受けていたゴーン被告以外の6名が、SAR受領権をどのように捉えていたかどうかは分からないが、役員報酬の一部程度の認識だったのだろう。「独り占めしている」と恨みを買わないように慎重なゴーン被告が、SARのごく一部を配分していた6名の中に西川社長もいたというだけのことだろう。
【前回は】ゴーン被告とケリー被告の不始末が波及する不条理か、日産西川社長辞任へ! (2-1)
西川社長は自らのSARが嵩上げされていたと指摘された5日、「ゴーン体制の仕組みの問題」と発言した背景はここにある。”知らないところでケリー被告が勝手にやっていた”ことに、「関わってはいない」という思いがこもった発言だ。
問題は、SAR受領権の配分を受けていたことが判明している者が、その後も含めて合計9名いることだ。指名委員会が後継者候補としてリストしている10名の中に、西川社長の場合と同様に、本人の希望しない嵩上げされたSAR受領権の配分を受けていた人物がいる可能性がある。
本人に何ら落ち度がないにしても、当該人物を後継者に選任することは、ゴーン被告とケリー被告に恰好の標的を提供するようなものだ。
指名委員会の豊田正和委員長は、後任者の条件として、世界の自動車産業やルノー・三菱とのアライアンスへの精通、理解をあげているが、”SAR受領権の配分を受けていない人物”という暗黙の条件を加えると、選択の幅はそれほど広くない。日産の社内から選任されることになれば、”○○人抜きの大抜擢”という可能性だって出て来る。
カリスマに例えられる超絶した権力を掌握したゴーン被告に、直言したものは職を追われてきた。情報の漏洩を危惧すると、取締役会での動議を検討することすらできなかった。
しかし、ゴーン被告には司法取引をするだけの不正行為があったから、西川社長以下のごく限られたメンバーだけが隠密で調査を進めた。このままでは日産は終生ゴーン被告のキャッシュカードにされてしまうという危機感が、その後の行動に進ませる動機だった。
西川社長の辞任を仏紙は”ブルータス”に例えて報道している。反逆者としての例えであれば、日本では明智光秀ということになるのだろうか。貧乏くじを引かされたようなものだが、西川社長自身は自分にある種の色が付いたことを自覚していた。
長く続けられないという認識を持っていたからこそ、取締役会の退任勧告も平常心で受け止めただろう。誰が選任されるにしても、後任者の果たすべき役割は大きく、重い。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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