東北電、電力の小売自由化や送配電分離をチャンスとし成長へ挑む

2019年9月8日 20:11

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 東北電力は9月2日、秋田火力発電所3号機を9月1日より廃止したと発表した。主に需要が高まる夏場や冬季のピーク時の供給力として活用してきたが、経年化に加え、今後の需要や新規火力電源の開発計画を踏まえ、廃止としたものである。

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 東北電力は、1951年、電力の鬼と言われた松永安左エ門の尽力でGHQポツダム政令により、東北配電株式会社と日本発送電株式会社が東北地区主体に統合され、設立された。

 営業地域は、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、新潟県の広大な範囲で、水力209カ所、火力12カ所、地熱4カ所、原子力2カ所など多くの発電設備を抱える東北電力の動きを見ていこう。

■前期(2019年3月期)実績と今期見通し

 前期売上高は2兆2,443億円(前年比8.3%増)、経常利益は226億円減の657億円(同25.7%減)、純利益は464億円(同1.6%減)だった。減益の要因としては、企業グループ一体となって経費削減に努めたが、渇水による水力発電の稼働減と燃料価格の上昇により経常費用が増加したことである。

 今期は売上高2兆3,900億円(同6.5%増)、経常利益は最新鋭の能代火力発電所3号機の発電開始による燃料費低減効果などにより730億円(同11.0%増)、純利益は450億円(同3.2%減)を見込んでいる。

■中期経営方針(2018年3月期~2021年3月期)による推進戦略

 2016年の電力市場の小売全面自由化、2017年のガス小売全面自由化、2020年に予定されている送配電部門の法的分離など、急激な変化をチャンスに変えて、さらなる成長を目指して次の戦略を推進する。

●1. 地域社会との共栄で利益創出力を強化

 ・顧客ニーズに沿った提案力強化: 太陽光発電と蓄電、買い取りサービスの組合せ、事業者向けエネルギーマネジメントの提供など地域の暮らしサポート。
 ・最適な電源構成によるコスト競争力の強化: 高効率電源の開発に合わせて経年火力を入れ替え。
 ・原子力再稼働に向けた着実な取り組み: 2020年に女川原子力発電所2号機の安全対策工事、2021年度に東通原子力発電所1号機の安全対策工事などを完了予定。

●2. 新たな事業機会への挑戦

 ・再生可能エネルギー事業の拡大: 風力を主軸に東北、新潟エリアで、水力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギー事業で200万kWの開発。
 ・海外事業の拡大: インドネシアの「ランタウ地熱事業」に出資参画、ベトナムの「ギソン2石炭火力発電事業」への出資参画。
 ・ガス事業の強化: 地域のガス事業者との連携強化とガス販売専任部署の設置。
 ・デジタルイノベーションの取り組み: オープンイノベーションを活用し、新規事業、新規サービスの創出や従来の電気事業の収益拡大推進と新ビジネスモデルの構築。
 ・電力、燃料のトレーディング事業の展開: 電力、燃料の総合的なトレーディングを通じて、事業リスクを的確に管理するトレーディング新会社設立。

●3. 変革実現により強固な経営基盤を確立

 ・財務体質のさらなる改善: 前期自己資本比率18%を2021年3月期に25%へ改善。
 ・競争に立ち向かう組織への変革: 送配電部門の法的分離に向けて、各事業が自律的に運営するカンパニー制を導入し、「コスト」中心から「利益」中心の管理に移行。
 ・企業の社会的責任(CSR)の着実な取り組み: 「東北電力グループCSR方針」「東北電力グループ行動指針」を策定し、CSR活動を推進。

 小売自由化、送配電分離による自由競争時代の到来で、正念場を迎えた東北電力の動きに注目したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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