IT時代のバリアフリーを考える

2019年7月2日 12:45

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 5月22日のライフ欄に記した「座席を譲る会」の存在を教えてくれた女性記者に、またしても叱られた。「障害者に対する認識が甘すぎます」と。そして今回も自ら取材し記した2本の記事を目の前に突き付けられた。そこには、こんな内容が掲載されていた。

【こちらも】「座席譲りを広める会」をご存知だろうか!?

 東京・高田馬場に「日本点字図書館」がある。女性記者の取材に応じた全盲の女性スタッフ(図書製作部展示政策課)はこう語ったという。「以前は晴眼者(せいがんしゃ:眼の見える人)と同様には行かなかった。ひとつひとつの音声を聞き、ピンを触りながら操作するのでどうしても時間がかかる。でも(晴眼者と)同じスピードでという目標はあった」とし、「以前は文章のやり取りは点字だけしか手段がなかったが、(ITの進化で)今は点訳者を介さず点字が読めない人ともコミュニケーションがとれる。音声読み上げソフト等の開発にITの進化を実感している」とも語ったという。

 だが件の女性記者は全盲者の前向きな姿勢に打たれたのだろう。「視覚障害者の二大不便の一つ(読み書き)には光明が差してきているが、いま一つの不便“バリア”への対応は未だ不十分」と告発している。

 ★多くのオフィスビルや公共交通機関などの「バリアフリー」は、車椅子ユーザー向けを想定している。が、それは視覚障害にはバリアフリーとは言い難い。

 ★トイレ然り。多目的トイレは広すぎてどこに何があるのか分かりづらく、狭いトイレの方が使いやすい。が、最新の洗浄装置も見えなければボタンを正しく押し活用することが難しい。

 ★広範な部分で点字案内が不備だ。

 ★日本点字図書館の創始者:本間一夫氏は「権利において、義務において、晴盲二つの世界が公平でなければならぬ」としている。公平を実現するのは我々の義務だ。環境整備と並行し、視覚障害者を自然に受け入れられる社会を我々一人ひとりが意識して創り上げていかなくてはならない。

 東京都・港区の日本財団を取材した。半世紀以上に亘り公益活動・障害者支援を行っている。取材に応じたスタッフの話は、まさに「目から鱗が落ちる」だった。こう語った。「障害者にもできる仕事はたくさんある。ビル管理一つでみても受付・清掃と様々。が、障害者ということで身構えてしまう人がまだまだ多い。障害者という単語がなくなることが理想。まだまだ時間がかかるだろうが、いつの日か子供に“障害者って何”と問われた大人が“昔はそういう言葉もあったけど今は要らない単語”という社会になるよう努力したい」。

 つくづく頷かされた。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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