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火中の栗を拾うのは誰か? 「cat's-paw(猫の手)」が示す搾取の構造
「君にしかできない」という甘い言葉に乗せられ、他人のためにリスクを冒してはいないだろうか。そのとき、相手は自分の手を汚さずに美味しい思いをしようとする「猿」であり、あなたはただ火傷を負わされるだけの「猫」かもしれない。
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英語には、こうした搾取の構造を皮肉った「be made a cat's-paw」というイディオムがある。
■17世紀の寓話が描く搾取の原点
「be made a cat's-paw」は、直訳すれば「猫の手(足)にされる」だが、ここで言う「paw」は可愛らしい肉球のことではない。「誰かの手先になっている」「捨て駒にされている」という意味のイディオムだ。単に「He is a cat's-paw(彼は手先だ)」のように言うこともある。
このイディオムの由来は、17世紀のフランスの詩人、ラ・フォンテーヌの寓話『猿と猫(The Monkey and the Cat)』にある。その内容は、現代にも通じる教訓に満ちたものだ。
ある冬の日、猿と猫が暖炉のそばにいた。火の中では、美味しそうな栗が焼かれている。猿はこの栗を食べたいと思ったが、自分で火の中に手を入れるのは熱くて嫌だった。そこで猿は、言葉巧みに猫をおだてる。
「君のその素早い手さばきなら、火の中の栗だって簡単に取り出せるはずだ。君の才能を見せてくれ」
おだてられた猫は、言われるがままに手を伸ばし、熱さに耐えながら一つ、また一つと栗を取り出した。
猫が火傷を負いながら苦労している間に、猿はどうしたのだろうか?むろん、すべての栗を片っ端から平らげてしまったのだ。
結局、猫は火傷を負っただけで、栗にはありつけなかった。
■「火中の栗を拾う」のもともとの意味
日本語にも「火中の栗を拾う」という慣用句があるが、これはこの寓話が由来である。日本では「他人のためにあえて危険を冒す」といったような、自己犠牲や勇気を称える文脈で使われることがあるが、英語の「cat's-paw」はもっとドライでシビアだ。
そこにあるのは、狡猾な利用者(猿)と騙される愚か者(猫)という構図だけである。したがって、英語圏で誰かを指して「cat's-paw」と呼ぶ場合、そこには「いいように利用されている間抜けな人物」という侮蔑的なニュアンスが含まれるのだ。
この表現は、現代でも政治的な陰謀やビジネスにおける不透明な取引の文脈で頻繁に使用される。
たとえば、汚職事件でトップの代わりに罪を被せられる部下や、大企業の利益のために不利な条件を飲まされる下請け業者などは、まさに典型的な「cat's-paw」と言えるだろう。
例文
He didn't realize he was being made a cat's-paw until the police arrived.
(警察が来るまで、彼は自分が捨て駒にされていることに気づかなかった)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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