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トヨタ、業績絶好調の中 (1) 管理職夏のボーナス削減 「創業家経営者の落とし穴」か?
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■長期視野は創業家経営の長所
「雇われ経営者」「ファンド株主」などの影響で、経営者の視野が目の前の業績に集中する傾向が強く出ている。「今年の配当」である。そのためか業績好調の企業が多いのだが、配当金が増える一方、従業員の給与は上がらない。だから国民の消費が伸びない。これが日本の経済の現実だ。
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しかし創業家の経営者は、100年先とは言わないが「永遠に事業が続けられる」ことを求められている。トヨタの豊田章男社長は、その代表格と言えるだろう。その視野の先は「自動車業界の100年に1度の大改革」にある。5年先ではない、10年20年先まで視野にあると言えるだろう。
だから創業家経営の企業は、従業員にとっても生活設計が出来る長所があると言えるのだ。これまでの「終身雇用制度」とまでは言えなくとも、3年先までも考えられないような、不安定な環境ではないことがうらやましい限りだ。
■経営陣と従業員の乖離、「創業家経営者の落とし穴」
トヨタの業績は「絶好調」と言える状態だが、「この夏の管理職のボーナス」が4~5%削られるという。これは、現経営陣が「強い危機感」を持っているからだ。
アメリカ・テスラ、グーグル、中国・テンセントなどとし烈な競争にさらされている現実がある。これらの企業との争いは、これまでの日産、VW、GMなどの競合とは次元が違う争いとなっているのだ。
多くはIT技術の発展で、通信企業やネットサービス業とのコラボを実現しなければならず、「造り方」によって利益を出してきたこれまでの自動車産業とは異次元の、「サービス業」との競合が目の前で展開されているのだ。
そのため、「新規技術開発」に資金を投下していかねばならない時期であり、トヨタは毎年1兆円規模の投資を続けている。それでも、これまでの製造業の「売上高に占める開発費の割合」など参考にならない巨大な投資が求められているのだ。
そこで「サービス業のプラットフォーマーになる」とした方針を掲げ、これまで異業種と思われてきた企業との協業を進めているのであろう。そこに、ソフトバンクの孫正義社長の影が常に現れ、「どうせならソフトバンクと協業しよう」となり、トヨタとソフトバンクで新会社を立ち上げることにまでなっているのだ。
このような変化に対して、経営陣は強い危機感を抱いているのだが、「従業員の心のありよう」はかなり遅れていると言わねばなるまい。これがひどい乖離であると、これまでひた向きに努力してきた従業員の心が、現経営陣から離れてしまう危険が感じられる。これが「創業家経営者の落とし穴」にならなければ良いがと危惧する。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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