事故ゼロの社会を目指し より安全なADAS・自動運転を実現する最新の半導体技術

2019年6月3日 10:01

印刷

記事提供元:エコノミックニュース

交通事故死者数自体は減少傾向にあるものの、死者全体のうち高齢者の占める割合は上昇傾向にある

交通事故死者数自体は減少傾向にあるものの、死者全体のうち高齢者の占める割合は上昇傾向にある[写真拡大]

 近頃、高齢者の運転による痛ましい自動車事故のニュースが後を絶たない。我が国の高齢化は加速する一方で、2018年にはついに、日本の総人口に占める70歳以上の割合が総人口の2割を超えた。また警察庁の資料によると、75歳以上の免許保有数は約570万人。75歳以上の人口の約3人に1人が免許を保有しているという。

 加齢が進むと、動体視力の低下や判断力の低下が現われ、ハンドルやブレーキ操作に遅れが出ることがある。実際、交通事故死者数自体は減少傾向にあるものの、死者全体のうち高齢者の占める割合は上昇傾向にあり、約半数近くを占めているという。最近では、自ら進んで免許を返納する高齢者も増えているようだが、仕事や生活にどうしても車が必要だから免許を手放せないという人も多い。今後、高齢化が進むにつれ、この問題はさらに大きくなっていくだろう。

 また、高齢者に限らず、疲れやストレスが溜まると、一瞬の判断ミスや操作ミスが命に係わる大事故にもつながりかねない。

 そんな中、便利さだけでなく自動車の安全面において、先進運転支援システム (ADAS)への期待が高まっている。ADASは、運転者がより安全に快適にドライブできるように、そして事故をできる限り未然に防ぐために、自動車自体が周囲の情報を把握し、運転者に的確な表示や警告を行ったり、運転操作を制御する支援機能の総称だ。 米国自動車技術会(SAE)の分類では自動運転のレベル2に相当する。完全自動運転の実現のためにも、より精度の高いADASの導入と普及は欠かせない。

 ADASの導入は、すでに各自動車メーカーも積極的に行っている。例えば、昨年12月に発売されたホンダの新型「インサイト」には、全グレードに衝突軽減ブレーキ(CMBS)や誤発進抑制装置、後方誤発進抑制機能など10項目にわたるADAS機能、「ホンダセンシング(Honda SENSING)」が標準装備されている。また、トヨタも、グレードによるオプション設定ではあるものの、「プリウス」に、前方の車両だけでなく車道にはみ出た歩行者も検知するプリクラッシュセーフティなど、4種の「Toyota Safety Sense 衝突回避支援パッケージ」をラインナップ。日産はリーフに、自動ブレーキ、車線逸脱抑制、誤発進抑制の安全機能パッケージ「サポカーS」の他、自動駐車をアシストするプロパイロットパーキングなども装備している。

 また、ADASの普及に伴って、部品レベルでの安全品質の向上も高度に進化している。とくにADASや自動運転の要となるセンサを司る半導体においては、問題が起きた場合にどのように安全を確保するか(フェイルセーフ)を念頭に置いた製品開発が求められており、ECU(Electronic Control Unit)を中心に自己診断機能など、重大な故障を未然に防ぐ機能安全の実現に貢献する機能が盛り込まれるようになってきた。

 最新の技術では、例えばロームが5月28日に発表したばかりの、電源監視IC「BD39040MUF-C」が良い例だ。このICは自動運転用のセンサやカメラ、ECUなどの電源システムが正しく機能しているかを監視するICで、機能安全に必須とされる電圧監視機能(パワーグッド機能、リセット機能)やECU の周波数監視機能(ウォッチドッグタイマ)などはもちろん、業界で初めて電源監視ICに自己診断機能を組み込んだことで注目を集めている。

 この機能により、既存システムに影響を与えることなく電源監視IC自身の潜在的な故障を検査することができるため、より安全なシステム構築が可能になるという。確かに、監視機能自体が故障などで機能していないと、異常を検出できない危険な状態になる。自己診断機能を内蔵するICは、より高い安全性能が求められるレベル3以降の自動運転実現のためにも必須の技術となるだろう。

 ADASや自動運転の機能安全レベルが向上すれば、高齢化社会でも安全に安心して自動車を利用することができるようになるだろう。技術者たちの弛まない努力によって、自動車事故が限りなくゼロに近い社会が実現する日も、そう遠い未来の話ではないかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

■関連記事
トヨタ、「後付けの踏み間違い加速抑制システム」対象車種拡大、年内に12車種
高齢者の運転免許証自主返納で得られるメリットとは
自動ブレーキ標準化に、さらに近づくか? 国交省によるAEBS認定制度スタート

※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。

関連キーワード

関連記事