ガソリンエンジンが良い! (3) ダウンサイジング、ストイキ燃焼での熱効率向上の努力

2019年3月29日 08:08

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 現在までのところ、火花燃焼に十分なガソリン混合気を吸い込んで燃焼させる(現状のほとんどのエンジン)「ストイキ燃焼」を前提に技術開発が進められてきている。その中で、熱効率は30%前後から40%台にまで上がってきている。燃費は約2倍と効率的になってきており、多くの涙ぐましい努力が続いている。

【前回は】ガソリンエンジンが良い! (2) 逆転の可能性、石油採掘から走行まで(Well to Wheel)見よ

 これから展開される「スーパーリーンバーン(超希薄燃焼)」や、さらに薄い混合気で燃焼させる「HCCI (Homogeneous-Charge Compression Ignition)予混合圧縮着火)」は、現状の「ストイキ燃焼」の1/2程度のガソリン噴射量で、低温で安定して燃焼させる技術だ。しかしそれを見る前に、燃費向上の全体像を「ストイキ燃焼」においての努力で見ておこう。

■ストイキ燃焼での熱効率向上の努力
 1973年に第1次オイルショックが起きて、それまでのガソリンエンジンに対する要求が一気に変化した。それまでガソリンエンジンに求められていたのは、「アメリカンエンジン」に代表されるあこがれの「大馬力」だった。

 その中でも、ヨーロッパ諸国と日本は、「小排気量で大馬力」の方向性であった。アメリカは「大馬力が欲しければ大排気量にすればよい」として、安い石油を背景に、「OHVでも大排気量エンジン」を長いこと使用してきた。一方欧州と日本は、「DOHC、ターボ」など高い技術レベルのメカニズムを取り入れて、小さな排気量でも「大馬力」を実現しようとしてきた。

 それが、石油ショックで世界の様相は一転したのだ。「省燃費」の方向だ。そして「有毒排気ガスの除去」を、前提とすることとなった。さらに「地球温暖化防止」が叫ばれるようになり、CO2の排出量を減らすことを、現在まで求められ続けている。それはつまり、「燃費」を良くすることだった。

■排気量を少なくする(ダウンサイジング)
 CO2の排出量を少なくするためには、単純に「排気量を小さくすれば叶えられる」と考え、しかし「排気量を小さくして」も「実用性の高い高出力」を得ようと努力してきた。「ダウンサイジングターボ」と言われる技術が進められて、排気タービンの実用化が進められてきている。

 「排気タービン」の歴史は古い。太平洋戦時中、日本本土爆撃に用いられたボーイング・B29によって日本は苦しめられたが、B29はその当時では最新鋭の排気タービンを搭載していた。終戦間際には日本でも研究が進められていたが、チタンなど熱に強く軽量な材料がなかったこともあり、日本では実用にならず終戦を迎えている。

 B29の排気タービンは、空気の薄い高高度でもエンジンの吸気を正常に行い、出力が落ちないことを目指していた。それは同時に、地上でも大きな出力を得ることが可能となり、自動車への応用が始まっていた。

 当初は、日産・ブルーバードSSSなどに搭載された。しかし航空機では問題にならなかった「ターボラグ」、つまり、アクセルの操作に対してタイムラグが生じる現象が激しく、自動車としてはしばらく実用にならなかった。

 石油ショックが起こり、排気量そのものを減らす必要が生じて「排気タービン」が再び注目されたのだが、今度は「燃費」が悪く、すぐには使えなかった。つまり「過給」することで、馬力・トルクは上がるのだが、燃料を食うのだ。これではダウンサイジングしても無意味で、過給に対して無用な燃料を必要としない「燃料噴射」技術が必要だったのだ。

 アクセルも排して、吸気バルブ開閉のタイミングを調整しアクセルの替わりとする技術などが開発されてきた。これはすなわち、ディーゼルエンジンの技術でもある。

 現在では、ツインターボや48V電動スーパーチャージャー、バッテリー容量を限ったマイルドハイブリッドなどのモーターのサポートを受けて、排気量を小さくし、燃費もよく、低速トルクもきわめて強力なシステムが完成してきている。さらにモーターのサポートを受けなくとも、低回転でのトルクが十分以上で高速での伸びもよい、小排気量化されたターボチャージャー装備のダウンサイジング・ガソリンエンジンが世界各国で開発されている。

 加えて、ハイブリッド用発電エンジンなども効率が極めて高くなってきており、必ずしも「純EV」の必要性はなく、燃費向上がなされてきているのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: ガソリンエンジンが良い! (4) ミッション多段化、CVTの高効率回転域で運転

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