京大など、アクチビンEの肥満解消効果を解明

2018年11月4日 20:33

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アクチビンEのエネルギー代謝亢進作用。(画像:京都大学発表資料より)

アクチビンEのエネルギー代謝亢進作用。(画像:京都大学発表資料より)[写真拡大]

 京都大学などの研究グループが、アクチビンEというタンパク質の肥満解消効果を発見した。アクチビンEは肝臓から分泌され、脂肪を燃焼させる褐色脂肪細胞を活性化し、ベージュ脂肪細胞の増加を促進してエネルギー代謝を亢進させる作用を持つという。

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 研究に携わったのは、京都大学の舟場正幸農学研究科准教授、北里大学の橋本統准教授、奈良先端科学技術大学院大学の栗崎晃教授らの研究グループ。

 アクチビンEは肝臓においてはありふれたタンパク質なのであるが、どういう機能があるのか判明しておらず、実質的に「忘れられた存在」であった。だが、近年の研究で、ホルモンとして作用し脂肪細胞の機能を制御しているのではないかという傍証があがり、今回の研究に繋がったものであるという。

 さて今回の研究では、アクチビンEを過剰に分泌するマウスが作られた。このマウスは通常のマウスと比べて血糖値が低く、インスリン感受性が向上していて、また体温が高くエネルギー代謝が行進していることも分かった。

 さらに、このマウスに高脂肪食を与えたところ、通常のマウスよりも体重増加が抑えられることが分かったのである。

 そこで、このマウスの白色脂肪組織を詳しく調べたところ、ベージュ脂肪や褐色脂肪のタンパク質「Ucp1」の量が増加し、ベージュ脂肪細胞自体も増加していた。つまり、脂肪細胞の代謝が盛んになっていると考えられたのである。

 逆にアクチビンE遺伝子を欠損させたマウスも作ってみたところ、寒さに対する反応が鈍く、低体温の症状が見られた。アクチビンEタンパク質を培養した褐色脂肪細胞に振りかけると、それだけでUcp1の量は増加した。

 つまり、アクチビンEには脂肪細胞の熱産生を直接活性化させる働きがあると証明されたのである。

 この発見から、将来的には、肥満の治療薬の開発に繋がる可能性が期待できる。

 研究の詳細はCell Reportsにオンライン掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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