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メーカーの下請けいじめ! 「あるに決まってるだろう!」(1) さかのぼって値引き
■コストダウン要求とは別次元の現実
「メーカーの下請けいじめ」があるのかないのか?の議論だが、「あるに決まっているだろうに!」と言っておきたい。たしかに「コストダウン要求」は激しいのだが、それが正常な商取引の範囲ならば良いのだ。しかし、そうばかりはいかないケースが多々ある。発注元の経営者が正常であることと、その組織運営が正常になされていなければ、「なんでもあり」なのが下請けの世界だ。「正当なコストダウン要求を誤解している」などとした議論は「きれいごと」にして、メーカー擁護をしているのだろう。厳しい現実の事実を認めることだ。
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まず、上場企業の経営者がみな株主に対する配当責任を持っていることが、何をしてもよい「正当な理由」にはならない。また、配当が十分でない企業の取締役が、そのやり方に問題がなければ必ずしも、株主から訴えられるわけではない。株主配当のためなら、“コストダウン要求にかこつけて何をしてもよいわけではない”のは知れたことで、それは権限を握った人材のモラルの要素が大きいのだ。そして現状は、社員の立場より株主の権利を優先する経営者が多くなった。それを疑問に感じていない取締役が大多数となった。労働組合が衰退し、ファンドなどの活動が先鋭化する中では、下請けの立場、権利をまともに捉えている取締役も珍しくなってきた。
しかしそれは、必ずしも親会社(発注元)の健全な発展を促すわけではなく、取締役も自分の企業の将来を見通している訳でもなく、えてして矛盾した言動をしていることが見受けられる。多くは、短期的利益と中・長期的計画との乖離であろう。
■さかのぼって値引き
下請けいじめの極端な事例では、下請け(サプライヤー)が親会社(発注元)に「決算書」を示す場合、決算書を見て後から値引きすることはよく見かけることだ。これは違法行為だが、値引きがどの会計年度分であるのか区別がつかないので、公正取引委員会などに告発するのは難しい。
私が経験した事例のことだ。私の会社が「多種少量生産」に移行しようと製造・生産技術開発に取り組み、部分的だが、「行程結合」に成功して著しく利益率が上がり始めたときがあった。そのため、「内部留保」を決算上では厚くして、次の革命的改善の設備投資・技術開発資金需要に備えていた。しかし、その金額の大きさに親会社の経理部長が気付き、値下げ要求をしてきた。値引きは次年度の分とされ、さかのぼっての値引きではないと言われれば言いようがないのだ。その時の親会社の姿勢は、「そんなに儲けていやがるのか」といった「いじめ」の感覚があからさまであった。つまり、結果として下請けの「革新的技術改革」は、全て「親会社(発注元)の利益にしろ」と言っているのだ。
「いじめ」としか考えられない行為だが、実際の原因としては、「製造業」全般についての親会社経営陣の知識不足、理解能力欠如の結果なのだ。その証拠に「多種少量生産の技術」は盗もうとはしなかった。
さかのぼっての値引きを言い出した当時の親会社の社長も常務も経理部長も、製造・生産技術に疎く、経理の数字だけに頼ってみている人物だった。「多種少量生産」の威力を理解できず、理論を説明しても、また当社が大幅なコストダウンに成功した事例を見せても、「値段が高かった」としか考えなかったのだ。ファブレス経営に近い親会社の単価決定部門は、元々製造・生産技術に疎く、“技術は下請けに任せっぱなし”なのだ。つまり価格査定能力がないのだ。その当時、親会社は東大出身の経営陣だったが、巨大企業で育った、業種が違う出身者が多かった。「決算数字から経営努力を見る癖が強く」、さらに深く理由を探して現場の地道な「製造・生産技術開発」の努力と「コスト・資金効率の関係性」を理解できなかったのだ。
それは、私からの「多種少量生産」への『革命提案』を受け入れなかったことで、全ては証明されている。現在では世界中の量産企業で当然とされる「多種少量生産」が理解できずに、M&Aを見ていたことによるものだった。M&Aを「規模の拡大、相対的に間接費の節減」、程度にしか見ることが出来ず、「目標とするビジネスモデル」を「メカニズム」として想定できないのだ。いや、「5年で資金回収する短期投資計画」では想定していないのであり、近視眼的になってしまう短期投資計画では想定する必要がないのだ。つまり、ビジネスモデルを理解し、長期投資計画を立てる必要がない短期投資計画では、ビジネスモデルは「製造業」ではなく「投機」なのだ。
次は、現実の世界から目を背けないことだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)
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