天の川銀河の中心で1000万年前に大爆発 早大などの研究

2018年8月7日 21:58

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「フェルミ・バブルと巨大ループ構造、太陽系の位置関係」(画像: 早稲田大学の発表資料より)

「フェルミ・バブルと巨大ループ構造、太陽系の位置関係」(画像: 早稲田大学の発表資料より)[写真拡大]

 天の川銀河の中心からは、巨大ガンマ線バブル(フェルミ・バブル)が噴出しているが、これは1,000万年前に大爆発があった証だということが、早稲田大学らの研究により突き止められた。研究グループは、大爆発の起源について、1,000万年前に銀河中心付近で大量の星形成、あるいは活動銀河ジェットに類似したエネルギーにより、一気に形成されたと考えられると発表した。

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 研究は、早稲田大学理工学術院の片岡淳教授ら、東京大学、理化学研究所、金沢大学の共同研究チームの5年に渡る成果であり、この研究結果は「Astrophysical Journal」に掲載されている。

 我々の住む太陽系を含む天の川銀河は、現在はとても穏やかで休火山のような状態の銀河となっている。銀河の中心にある巨大ブラックホールも周りの星を飲み込むような活動は休止している。ところが最近では、過去、天の川銀河がとても激しく活動していたとする様々な痕跡が発見されている。

 フェルミガンマ線宇宙望遠鏡により、2010年に銀河の中央から上下に5万光年(銀河系の半分の大きさ)という、巨大なガンマ線の泡が出ていることが発見された。これをフェルミ・バブルという。もしもこのフェルミ・バブルが、爆発的に一気に作られたものであるなら、大昔の天の川銀河は、今より1億倍も明るかったと推測される。

 そこでグループは、ガンマ線以外の痕跡を調べるために、レントゲン(X線)を調べることに着目した。日本のX線天文衛星「すざく」や米国のスウィフト衛星を使用して、フェルミ・バブルを包む高温ガスや巨大ループ構造をX線で観測した。2013年から140カ所という、世界的にも類をみない計測プロジェクトを行い、その距離や起源を決定付けることに成功した。

 銀河全体を包む高温ガス(銀河ハロー)は200万度と一様であるが、フェルミ・バブルを覆うように広がる巨大ループは、300万度と50%高く、X線強度からガスの密度も2、3倍濃くなっていることがわかった。

 もしも銀河中心での爆発の衝撃波により周囲の銀河ハローを加圧、加熱したとすると、その衝撃波は毎秒300キロメートルの速度で広がり、現在のフェルミ・バブルの大きさになるのに約1,000万年かかると計算された。

 つまり1,000万年前に銀河中心付近で大量の星形成、あるいは活動銀河ジェットに類似したエネルギーにより、一気にフェルミ・バブルとその外側の巨大ループが形成されたと考えられる。このことを確認するため、グループは流体シュミレーションを使い1,000万年前の爆発を模擬した計算機実験を行った。その結果、一般的な超新星爆発の10万倍という巨大なエネルギーだったことが判明したという。

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