リアル店舗とネット店舗が融合してグループ形成、アマゾンの対抗軸は生まれるのか?

2018年4月13日 09:32

印刷

 アマゾンの猛攻が、リアル店舗の雄であるイオンを突き動かしている。イオンがソフトバンク、ヤフーと共同でネット通販事業へ進出することになった。

【こちらも】本の流通に巻き起こる激しい変革 (1)アマゾンは本の流通をどう変えようとしているのか?

 イオンもテナントのネット通販の入り口としての「イオンモールオンライン」と、イオングループの企業を集めた「イオンドットコム」サイトを運営してきたが、「イオンモールオンライン」は利用状況の向上が進まないため1月末に閉鎖に至った。もう一つの「イオンドットコム」も数百万品目に及ぶ数多くの取扱商品を扱っているものの、先行するアマゾンや楽天と比較できる状況にはなっていない。インターネットを利用することが当たり前の時代に、特定のSCに入居しているテナントサイトへの入り口を設定しても、利用が低迷するのはやむを得ない。イオンのグループ企業を集めても、スマホであらゆるメーカーのあらゆる商品が購入できる現代では、消費者の支持を広げることにはつながらない。イオンはそれに気づいたからこそ、ソフトバンクとマーケットプレイス(仮想商店街)を構築し、幅広い専門店を集わせて集客力を向上させる思惑だ。

 マーケットプレイスで先行する楽天は、ウォルマート子会社の西友と共同で新会社を設立し、「楽天西友ネットスーパー」をスタートさせ、西友店舗から加工食品や生鮮品を配送する。ネットスーパー専用の配送拠点も年内に開設する。コンビニのセブン&アイと通販のアスクルも生鮮食品の宅配を始める。リアル店舗を持つイオンが有利なのか、ネットで先行する楽天が有利なのか、街角の利便性で断トツのセブンが抜け出すのか、勝負の帰趨を見届ける時期はしばらく先になる。

 巨艦のリアル店舗を持つイオンは、現下の人手不足状況を睨んで売場にロボットを配置することも検討中だ。ソフトバンクの人工知能(AI)技術やロボットに係る先行技術を、どうリアル店舗に組み込むかが見どころだ。

 従来、生鮮品は傷みやすい食品としての特性から、自分の目で鮮度や商品の状態を確かめたいという消費者が大勢で、宅配の鬼門と言われていた。在庫と受注をどうコントロールするのか、傷みやすい食品の廃棄率はどうなるのか、天候不順による作柄の悪化にどう対応するのかという、新たに直面する問題をどう克服するのか、課題は多い。

 しかし、国内市場は働く女性や、シニア層・単身世帯の増加という社会構造の変化が進んでいる。営業時間内に買い物に行けない人たちや、限られた時間を買い物で減らしたくないという人たちのニーズが高まり、生鮮品をネットで注文するライフスタイルが、徐々に増加するという期待もある。反面、物流ドライバーの人手不足の拡大も、大きなコストアップ要因として懸念されているところであり、折り合いを付けられるフトコロの広さを持つのがどのグループか、アマゾンの対抗軸に名乗りを上げるのがどのグループか、試される時でもある。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事