安倍首相、外国人労働者拡大検討を指示の疑問点

2018年2月24日 11:43

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 安倍首相は20日の経済財政諮問会議で関係閣僚に対し、「専門的な技能を持つ外国人労働者の受け入れ拡大の検討を行うよう」指示した。6月ごろにまとまる「骨太方針」に盛り込む予定だとされている。少子化で低迷する生産性の向上につなげる目的であることは論を待たない。

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 現在、外務省が発行している「就業ビザ(就労目的で日本の滞在を認めるビザ)」は「学者業」「法務業」「医療業」など14種の専門的従業者に発行されている。首相の意向を忖度し大手新聞の政治部記者は、「農業や建設分野にも拡大し、在留資格取得のための要件を緩和する方向」と咀嚼する。内閣府の資料によると、日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は2000年を100とした場合15年時点で89・8と1割減少している。対して米国は113・5、英国は108・8と1割前後増えている。少子高齢化社会の進捗が不可避の状況下では確かに、対策は必要である。

 だが対策の具体化に際し、問題点を内包していることも事実である。

 首相の意向を受け茂木敏充経済再生担当相は、受け入れ拡大の検討対象として「介護」「農業」「建設」「運輸」を上げたが、例えば「介護」に関しては外務省の「就業ビザ」発行の対象となっている。但し「専門職」という観点から「介護福祉士の資格を持つ介護士」といった縛りがかけられている。介護関連の仕事への関心は若者・高齢者を中心に高まっている。「彼らの就労チャンスを奪ってしまいはしないか」という懸念が残る。それは農業・建設・運輸の分野でも同様のことが言える。

 また「そもそも論」の見直し・検討をせず、ただただ「拡充」では画餅に終わりかねない。介護職など、その典型といえよう。厚労省によると17年11月末時点で要介護認定者数は約642万人。一方で介護福祉士の数は150万人弱にとどまる。何故か。要は介護職員の待遇の低さにある。厚労省の16年の調査によるとその平均給与は月額約26万2000円。全産業平均の約36万2000円を10万円下回っている。

 国内労働人口の減少に対し、施策を講じるのは当然。だが記した様な構造的問題にも抜本的対策が執られて当然であろう。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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