【超々ジュラルミン鍛造ホイール(下)】RAYSアルミで市販 トヨタの現場・現物主義につながる部分

2017年12月6日 15:50

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■トヨタの現場・現物主義につながる部分

 この堀越二郎の手法で気付かされるのは、どれほどシミュレータ技術が発展しても、計算で出ない部分は膨大にあり、シミュレーションでは結論づけられない部分があることを示している。特に、経験によるデータがない技術開発ではシミュレーションが出来ないので、現物による実際のテスト結果が必要だ。

【前回は】【超々ジュラルミン鍛造ホイール(上)】RAYSアルミで市販 ゼロ戦・堀越二郎との関係

 それは「設計通り加工できない」ことにも対応できる重要なポイントだ。現在、北朝鮮が行っている核爆発やミサイル技術などの実験を見れば分る。核戦力先進国で、実際に核爆発させなくとも「臨界前核実験」が多数行うことができるのは、既にデータがありシミュレーション出来るからだ。しかしデータもない新技術の開発では、設計通り造れないことを前提にしており、シミュレーションだけで済まない部分が残るのが当然なのだ。これがトヨタの現場・現物主義の根拠であり、不良品を作らない製品づくりの進め方なのだ。

 ゼロ戦は、軽量化のため急降下していくとバラバラに空中分解する欠点があり、それを知ったアメリカ軍はゼロ戦に遭遇すると、自機が高度が高い場合は急降下して「一撃離脱」戦法で逃げていった。高度が同等以下の場合は、戦闘せずに急降下して逃げたと言われている。捕獲したゼロ戦を調べて弱点を見つけていたのだった。参考に、ゼロ戦の外板は場所によって0.1mmであったと言われるが、米のグラマンF6Fは4mmとも6mmとも言われている。

■鍛造・肉抜き・切削加工技術

 市販のアルミホイールでは鋳造と鍛造がある。【鋳造】は材料を一旦溶かして型に流し込んで造る。【鍛造】は板材や丸棒などの型鋼をプレスして形にする。型打ちすることもある。それを【肉抜き】加工をして軽量化する。また、鋳造・鍛造とも【機械加工】して仕上げる。それは、主に余計な部分を削り取り軽量化をするためだが、その時バランスをとることは絶対の条件である。

 【鍛造】といってもそれは【精密鍛造】で、かなりバランスも考えられている。しかし、200km/hなど高速で走るときの「ホイールバランス」はかなり難しいのだが、機械加工においては、レイズ「TE037 DURA」「TE037 6061」は難しい方であるだろう。通常のアルミホイールの機械加工はそれほど難しい部類ではないと思うが、肉抜き加工を同時に行うには精度が必要であるようだ。マシニングセンターなどを使った加工であるはずだが、問題は材料と製品の重心をどこにするのかだ。材料の形の歪がかなりのバラつきがある場合、製品の形状を削り出そうとしても、中心が外れて部分的にはみ出してしまうのだ。レイズのホイールでは、調整がどれほど自動化できているのか興味がある。

 今回市販されたRAYS(レイズ)製品の「TE037 DURA」「TE037 6061」の、徹底的に無駄な肉をそぎ落とした加工方法は圧巻であり、現在のマシニングセンター加工技術の高さを見る思いだ。レーシングマニアであれば見ているだけでほれぼれする製品であり、飾って鑑賞していても満足できるものなのだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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