映画スターが最高裁判所と内務省を襲撃 対立激化するベネズエラ 

2017年6月30日 12:03

印刷

記事提供元:フィスコ


*12:03JST 映画スターが最高裁判所と内務省を襲撃 対立激化するベネズエラ 
 南アメリカ北部の国ベネズエラでは、反体制派と警官隊の衝突が続いている。首都カラカスで27日、最高裁判所と内務省の建物が警察ヘリコプターに攻撃された。マドゥロ大統領は「テロ攻撃だ」と非難する声明を発表し、犯行を計画・実行したのは、警官で映画スターのオスカル・ペレス氏だと名指しした。


 一機の警察用ヘリが同国最高裁判所内に向けて手榴弾を2個投げ落とし、ライフルで掃射した。政府の発表によると、死傷者はいないという。


 いっぽう、政府の自作自演ではないかと疑いもある。最高裁敷地内に攻撃したのは、警察の塗装が施されたヘリコプターだった。政府の特殊部隊は「テロリスト」拘束のために出動し、犯行に使用されたというヘリの写真を、ツイッターに投稿した。


 マドゥロ氏は、今回のペレス氏らの攻撃について「米国が背景にある」と主張している。反体制派はこれを否定し、大統領が今年度実施される地方選挙を遅らせるための口実だと非難し、デモ行動を続ける構えを示した。


 ペレス氏は声明を発表する動画を、ソーシャルサイト「インスタグラム」に投稿している。ペレス氏と部下たちは「我々は軍人、警察、一般市民からなる部隊だ。独裁的で卑劣な政府に対抗する」「私たちは愛国者だ、憲法体制の擁護者だ」と主張した。別の写真には、ベネズエラ憲法350条「公民不服従(抵抗権)」を意図するとされる「自由第350条」と書かれたカードを掲げたヘリのパイロットが映っている。

■マドゥロ大統領は武力で応戦する姿勢


 ベネズエラ最高裁はマドゥロ大統領の権力を強める一連の判決を出し、一方で反体制派のコントロールする立法機関の権限を削減していることから、反体制派からは権力の手先と目されている。


 過去3カ月の間、マドゥロ政権は数多くの抗議活動に直面してきた。警官隊の鎮圧により75の死者と千人近い負傷者が出るほか、千人以上が逮捕された。


 マドゥロ大統領は先日、もし反対派の国民が政権を倒そうとするのであれば、彼はその支持者とともに応戦する姿勢を示している。「我々は戦闘する。決してあきらめない。投票で成し遂げることができなければ、我々は武力でもって祖国を解放する」と主張した。

■崩壊寸前のベネズエラ経済 政権維持に疑問符


 社会主義のマドゥロ政権が誕生してから4年、政策の失敗と石油価格の下落が相まって経済危機に直面している。石油の輸出に頼るモノカルチャー経済は原油価格の下落により、ベネズエラの貨幣価値は暴落、タダ同然となった。食料品や医薬品の供給も停止したため、民衆は必需品を求めて各地で暴動を起こし、商店街は略奪の標的となった。


 しかしマドゥロ氏は国民の意思を問うことなく、自身の権力を強化するために憲法改正を発議した。今年7月下旬には憲法制定国民大会を実施する予定だ。


 政権内部からもマドゥロー氏に対する異議の声が上がる。ベネズエラ情報部元責任者のロドリゴ氏は27日の記者会見で、マドゥロー氏が事前の国民投票を経ずに憲法改正を推し進めたことは、政府にとっての大きな痛手だと話した。ロドリゴ氏は「政府は憲法を回避して問題の解決を図ったが、国民が忘れ去られた。危機はますます拡大している」と話し、国民を尊重することを呼びかけた。

(翻訳編集・文亮)

【ニュース提供・大紀元】《FA》

関連記事