【小倉正男の経済コラム】ビール安売り規制、ガンバレ河内屋

2017年6月23日 10:53

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■守るべき酒屋さんはどこに存在するのか?

 行政が歪められているのかいないのか、ビール安売り規制が行われている。確かに、新ジャンルをはじめビール類は値上がりしている。

 アメリカが北朝鮮に空母、潜水艦、爆撃機で攻撃すれば、北朝鮮も抵抗するかもしれない。「危機管理」――そんなことでビール、焼酎、水などを買ったのは、つい最近のことである。

 安売り規制ということでまたビール、発泡酒、新ジャンルなどを買い込んだ。そしてまた値上げ後も買っているではないか。このあたりは、行政に見透かされているというしかない。

 大手スーパー、ディスカウンターなどが安売りで大量に販売すると、酒類小売店が対抗できない――。地域の酒類小売店(=酒屋さん)を守るというのが、安売り規制の大義名分ということだ。

 しかし、首都圏などでは、酒屋さんといったお店はほとんどというか、まったくというか存在しないのが実体だ。選挙の票が目当てともいわれるが、はたして・・・。

 昔みたいにビンビールを自転車で宅配してくれる酒屋さんというスタイルはすでになくなっている。そうした酒屋さんは、コンビニなどに酒類販売の免許を売り、リタイヤメントを遂げている。守るべき酒屋さんはどこに存在するのか?

■河内屋=安売りの旗は降ろさない

 その昔、20年ぐらい前のことだが、河内屋の創業者・樋口行雄氏(当時=社長)と銀座の居酒屋で一杯やりながら、取材したことがある。セッティングしてくれたのは、化粧品業界雑誌の創業者Y氏(当時=社長)。この取材が、滅茶苦茶に面白かったのを覚えている。

 樋口行雄氏は、お酒のディスカウンターとして有名な存在だったが、「ウチ(=河内屋)は、お酒は赤字で販売している」と言い放ったのである。 「ウチは、ビールは日本でいちばん販売している。河内屋は、ビール販売量で日本一の会社だ。だが、ビール販売は赤字だ」

 では、何のためにビジネスをやっているのか。収益・黒字はどこから出しているのか――。

 「河内屋は、安売りの旗を掲げてやってきている。安売りの旗は降ろさない。資生堂とは、化粧品安売りで訴訟となっているが、河内屋は化粧品販売から収益を出している」

■樋口行雄氏の魂を忘れてはならない

 実は、河内屋は商売人(=ネゴシエートル)である。ビールは、赤字販売は赤字販売だが、メーカーからのリベート(販売奨励金)収入が入り、最終的には黒字だったというのが真相のようだ。

 ビールメーカーもディスカウンターの安売りがなければ、やっていけない。リベートを出しているのだから、売ってほしいということである。メーカーも売り上げがなければ、所帯を賄えないわけである。

 いまネゴシエートル・樋口行雄氏がいたら、ゼーゼーと息苦しく増税を迫る行政にどのように一撃を加えていただろうか。

 国が規制を強めても、それをかい潜ってあの手この手でお客さまのニーズに対応するのが商売人である。ガンバレ河内屋――、樋口行雄氏の魂を忘れてはならない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社編集局で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事、日本IR協議会IR優良企業賞選考委員などを歴任して現職)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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