日本の株式市場にテスラ・モーターズのような企業が登場しない理由

2017年6月23日 08:20

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 米電気自動車メーカーのテスラ・モーターズ(以下、テスラ)は、時価総額(株価×発行済み総株式数)で、ゼネラル・モーターズ(GM)/フォード・モーター(フォード)を上回った。周知の通りテスラは2003年に米国のベンチャービジネスの聖地:シリコンバレーで産声を上げた企業。対してGM、フォードは100年超の企業。かつ今年第1四半期のテスラの最終損益は日本円にして約366億円の赤字。いかに将来性が評価されているとはいえ赤字企業が斯界の大企業の時価総額を超えるなどというのは、日本ではまずありえない。

【こちらも】Tesla Motorsの時価総額、FordやGMを上回り世界5位に

 だがこうした事態に「米国経済の底力、ダイナミズム」を覚えるのは私だけだろうか!?

 15年の米国株式市場でもてはやされた「FANG(ファング)」なる4文字がある。いずれもいわゆる拡大必至と期待が高かったSNS時代を切り開いていたフェイスブック/アマゾン・ドットコム/ネットフリックス/旧グーグルの頭文字を取った造語である。FANGがしきりに株式市場で問沙汰され時価総額を増幅していった背景には、米国経済を後押しする株式市場特有の力があった。

 対して日本の株式市場の現状はどうか。東証第1部の時価総額上位には、いまとなっては死語ともいえる「三公社五現業」の「民営化後」の社名が並ぶ。NTT(2位)、NTTドコモ(3位)、JT(6位)、ゆうちょ銀行(8位)、日本郵政(9位)といった具合だ。

 「リスクを取りに向かう投資資金、出でよ」というのはたやすい。しかし日本の市場にダイナミズムが感じられないのは、構造的問題による結果といえる。日本の株式運用の主体は中長期運用を軸に据えた、内外の機関投資家。俗にいう「1カイ(買い)2ヤリ(売り)」の個人投資家の存在を否定するものではないが、個人投資家は通年ベースでみると大方が「売り越し」。機関投資家は日経平均株価や東証TOPIXといった代表的な株価指数をベンチマークとし、少しでも上回るパフォーマンスに血道を上げている。これではテスラ登場の余地はない。そして是非論はあろうが、思い起こして欲しいことがある。

 高度成長期に象徴的だった出来事に「増資は買い材料」というセオリー!?があった。「新たな成長のために使われる資金調達」という受け止め方だった。だがいまは「増資は売り材料」とされている。「一株当たり利益が希薄化する」という捉え方だ。これでは次の(成長)段階への備えとして、テスラように赤字企業に資金が向かうはずがない。そろそろ日本の株式市場も「本来の役割」を思い出しても良い時期ではないだろうか。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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