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産学官連携プロジェクトが各地で盛ん。そのメリットは?
近年、産学官連携プロジェクトという言葉を耳にする機会が増えたが、産学官でプロジェクトを進めるメリットは何だろう。
産学官連携の大きなメリットとしては、企業側にとってはまず、若い人材の確保と設備の確保にあるのではないだろうか。様々な分野にわたって最先端の研究をしている大学には、分野ごとに設備が完備されている。産学連携の前提があれば、これを利用することができる。また、新しい研究開発には多額の費用が必要になるが、企業と大学が連携することで助成金なども活用しやすくなる。
大学側にとっても、学生たちの研究能力や経営能力の向上などの人材育成につながるとともに、ネットワークの構築につながるのは、他では得難い利点だ。
産学官連携の例としては、たとえば、2013年に信州大学工学部の呼びかけで発足した「食・農産業の先端学際研究会」(略称:FAID(フェイド)学際研究会)などがある。これは、工学的知見で農業を成長産業へ導くことを目標に生産者や食品メーカー、農業団体、農業機械メーカーなど計60以上の団体が参加している研究会だ。これまでに、高品質四季成り性イチゴ品種「信大BS8-9」を利用した周年栽培の試みや、大学のバイオテクノロジーやプロセス技術を駆使し、長野県産素材にこだわった、健康で美味しい高付加価値食品の商品開発などを進めている。
また、東海大学では、農学部が地元企業と連携し、高アントシアニン含有のサツマイモ品種である「ムラサキマサリ」を用いた廃棄物ゼロの完全循環型醸造技術の確立を目指す研究を行っている。具体的には、ムラサキマサリで醸造した焼酎「阿蘇の魂」の製造過程で生じた焼酎かすを使って、もろみ酢醸造試験などを実施している。
九州大学は2015年12月、糸島市、住友理工<5191>と「健康」「医療」「介護」事業の連携協力に関する3者協定に調印した。この連携は超高齢社会に突入した日本において、高齢者が地域で長く生き生きと暮らせるまちづくりを産官学の協働によって実現させようというもの。手始めとして、糸島市の公共施設「糸島市健康福祉センターふれあい」に九州大学が入居し、九州大学と同社の実証研究などを推進するオープンラボ「九州大学ヘルスケアシステム LABO 糸島」を設置する。また、同施設には九州大学や住友理工の研究者が常駐し、開発中の製品の実用化などに向けた実証実験などを行う予定で、来春の開所を目指して準備がすすめられている。
産学官連携のもう一つの大きなメリットは、視点の多角化ではないだろうか。一つの研究や開発を行う際、一つの視点だけでそれを行うのではなく、いくつかの立場からの多角的な視点がある方がよりスムーズに進み、内容も深く、濃くなる。日本国内はもちろん、世界に通用するような商品やサービスも生まれやすくなるだろう。日本経済を活性化するような産学官プロジェクトに期待したい。(編集担当:石井絢子)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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