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【電機業界の2015年3月期決算】大幅最終増益もあれば、1000~2000億円台の最終赤字もあり、明暗がくっきり
5月14日、不適切な会計処理で発表を6月に延期した東芝を除く電機業界大手7社の2015年3月期本決算が出揃った。業績はバラバラで、最終利益はNECが69.8%、三菱電機が52.9%、パナソニックが49.0%、富士通が23.7%の大幅増益だったのに対し、ソニーは1259億円、シャープは2223億円の最終赤字に陥り、明暗がくっきりと分かれていた。2016年3月期の今期見通しもバラバラで、最終利益の増益、減益が混在し、ソニーは最終損益が黒字転換する見込みだが、シャープは最終損益見通しを公表できなかった。
■IT、産業メカトロ、社会インフラ関連は好調
2015年3月期の実績は、ソニー<6758>は売上高5.8%増、営業利益158.7%増(約2.6倍)、税引前当期純利益54.3%増だが、最終当期純損益はほぼ前期並みの1259億円の赤字。年間配当は前期の25円から0円(無配)に転落した。吉田憲一郎CFOは「リストラの大きな部分は終了したと思っているが、まだ半分は病み上がりのような状況」と説明している。
パナソニック<6752>は売上高0.3%減、営業利益25.2%増、税引前利益11.5%減、当期純利益49.0%増の減収、最終増益。年間配当は前期比5円増の18円だった。繰り延べ税金資産の再計上で大幅な最終増益となった。プラズマテレビからの撤退などリストラ、固定費圧縮が効果をあげての営業利益25%増で、津賀社長は「売上高より利益を重視してきた結果が出た」と述べた。エアコン事業は大きな黒字を計上し、テレビも半導体も赤字縮小。重点を置く「住宅と自動車」の住宅用ソーラーやカーナビ、車載電池が利益拡大に貢献した。
シャープ<6753>は売上高は4.8%減、営業損益は480億円の赤字、経常損益は965億円の赤字、三重県亀山市の液晶工場の減損損失など1456億円の特別損失を計上して当期純損益(最終損益)は2223億円の赤字という大幅な赤字決算。年間配当は前期と同じく0円で3期連続無配だった。本社ビルを売却し、3500人程度の希望退職を募集。1218億円を5億円に減資した後に2250億円の優先株を発行するなど資本増強策を実施する。
日立<6501>は売上高2.1%増、営業利益11.6%増、税引前当期純利益6.6%減、当期純利益0.3%減、最終当期純利益8.9%減の増収、最終減益。営業利益は2ケタ増益で過去最高を更新した。年間配当は前期比1.5円増の12円。情報・通信システム部門の営業利益が2ケタの伸びで、ITと組み合わせたソリューションを武器に中国や新興国向けのエレベーターやプラント向け産業設備なども受注が好調でシナジー効果を発揮。英国の鉄道事業など社会インフラ事業が国内外で伸びた。
三菱電機<6503>は売上高6.6%増、営業利益35.1%増、税引前当期純利益29.7%増、最終当期純利益52.9%増の増収、2ケタ増益。年間配当は前期比10円増の27円だった。国内外で工場自動化のためのFA機器など産業メカトロニクス事業が好調で、円安による為替差益も増益に寄与した。
NEC<6701>は売上高3.5%減、営業利益20.6%増、経常利益62.1%増、当期純利益69.8%増の減収大幅増益。年間配当は前期と同じ4円だった。減収は「ビッグローブ」や携帯電話の販売事業など不採算部門を売却した事業再編に伴うもので、利益の押し上げには貢献している。ITインフラ投資の受注状況は好調に推移している。
富士通<6702>は売上収益0.2%減、営業利益21.3%増、税引前利益23.4%増、当期利益18.9%増、最終当期利益23.7%増の減収増益。年間配当は前期比4円増の8円だった。官公庁、企業向けITサービス事業が堅調に推移した他、スマホ用の大規模LSIも拡販。円安で為替差益の恩恵も受けた。
■得意とする製品、部門で収益の拡大を追求
2016年3月期の通期業績見通しは、ソニー<6758>は売上高3.8%減、営業利益367.2%増(約4.7倍)、税引前当期純利益769.0%増(約8.6倍)、最終当期純損益は1400億円の3年ぶりの黒字転換を見込む。予想年間配当は未定(中間配当10円)。高収益の金融分野に支えられつつ、2100億円を投資するイメージ(画像)センサーの大きな伸びを見込んだデバイス分野が貢献し、さらにコスト削減策が寄与して増益、最終黒字というシナリオ。テレビとスマホについては売上を追わないという。
パナソニック<6752>は売上高3.7%増、営業利益12.6%増、税引前利益64.4%増、当期純利益0.3%増の増収増益を見込む。予想年間配当は未定。津賀社長が「成長優先にカジを切る」と言うように、利益確保のリストラが一段落して「住宅と自動車」を軸とした増収路線にシフトする。テレビ事業は8年ぶりに黒字転換する見込み。
シャープ<6753>は売上高0.5%増、営業損益は800億円の黒字転換を見込む。経常損益、当期純損益(最終損益)の見通しは公表していない。予想年間配当は前期と同じく0円で無配。3カ年の中期経営計画では大規模な構造改革、固定費の削減を進めて2016年度に全部門を営業黒字化して当期純損益を黒字化し、2017年度に売上高営業利益率4.0%を目指すとしている。
日立<6501>は今期から国際会計基準(IFRS)の任意適用を受けるため通期見通しを米国基準の前期と単純に比較できない。売上収益は9兆9500億円、税引前利益は6000億円で前期の営業利益とほぼ同じ。当期利益は4500億円、最終当期利益は3100億円を見込む。予想年間配当は未定。社会インフラ事業は海外のエレベーター、高機能材料は自動車向けが引き続き好調とみている。電力システム事業は構造改革で採算が改善するが、建機は中国で需要が後退する見通し。
三菱電機<6503>は売上高1.1%増、営業利益0.8%増、税引前当期純利益0.9%減、最終当期純利益6.3%増。増収、2期連続で営業利益は最高益でも最終減益を見込む。予想年間配当は未定。稼ぎ頭のFA機器は中国で引き続き好調でも為替差益がなくなり、租税負担も増えることが利益を圧迫する見通し。エレベーターなどインフラ関連は頭打ちとみている。
NEC<6701>は売上高5.6%増、営業利益5.4%増、経常利益7.0%増、当期純利益13.4%増の増収増益を見込む。3期ぶりの増収で最終利益は11年ぶりの高水準。予想年間配当は前期比2円増の6円。マイナンバー関連投資やサイバーセキュリティ対策など官公庁や企業でのIT投資の増加を見込む。
富士通<6702>は売上収益2.0%増、営業利益16.0%減、最終当期利益28.6%減の増収減益を見込む。予想年間配当は前期と同じ8円。ITサービス事業は引き続き拡大する見通しだが、ドル高による米ドル建ての部材調達コストの上昇、ビジネスモデルの変革を加速させるための戦略投資の負担により減益を想定している。(編集担当:寺尾淳)
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