関連記事
空運業界 JALとANA、2強のバランスは保たれるのか
空運業界は長年、業界トップのJAL(日本航空)が業界2位のANA(全日本空輸)に対し絶対的優位という構図だった。[写真拡大]
空運業界は長年、業界トップのJAL(日本航空)<9201>が業界2位のANA(全日本空輸)<9202>に対し絶対的優位という構図だった。しかし、2010年のJAL倒産、そして再建の5年間で、そのバランス関係は大きく変わっていった。
14年はそれが決定的になった年だったと言えるだろう。5月には、初めて国際線座席キロ数でANAがJALを上回り、8月には次期政府専用機の整備がANAに委託されることも決定した。15年は、ANAがついに手がかかったトップの座をゆるぎないものにできるか、もしくは、JALがそれに対抗できるかが問われる年になりそうだ。両社のこれからの動きから、15年の業界を展望したい。
ANAは、15年中に新設・増便する国際線路線計画を12月に発表した。目玉は、日本の航空会社で初となる成田―ヒューストンの直行便だ。6月から1日1往復での開設を予定している。他にも、成田―クアラルンプール便の14年ぶりの復活や、成田―ホノルル便を1日1便から2便に増やすことも発表された。また、11月に国土交通省から羽田空港の深夜・早朝時間帯の着陸料引き下げという後押しを受けたこともあり、深夜・早朝枠での羽田―シドニー便の新規就航も計画されている。
他には、15年2月1日より、10年振りにCA制服を一新することも発表されている。新制服は、落ち着いたグレーを基調としつつ、ANAカラーであるブルーのラインが映えるデザインだ。「挑戦」、「安心感・信頼感」、「日本のホスピタリティ」をコンセプトに作られたという。
一方JALは、12月20日より中部国際空港―バンコク定期便を4年振りに復活。さらに3月からは、関西空港―ロサンゼルス便も8年半振りに再開する。
JALの15年の新設・増便路線計画は未発表で、昨年と同じタイミングなら1月下旬になると思われる。一部では、成田―シドニー便を羽田―シドニー便に変更し、成田からはオーストラリアへ新路線を開設、さらに成田―クアラルンプール便を1日2便に増やすという計画があると、12月上旬に報じられた。これがそのまま実現すれば、ANAの路線計画と似通った内容になる。実は、14年もJALはANAと似た路線計画を1ヶ月遅れで発表し、価格競争を仕掛けている。15年も同様の戦略をとる可能性も高いだろう。
JALは5年間の経営再建の中で、徹底したコスト削減に努めてきた。その結果、価格面ではANAよりリードしている部分がある。一方、ANAが支持されているのは顧客満足度の高さだ。英格付け会社が発表した国際航空会社のランクでは、ANAは13、14年2年連続で5ツ星を獲得。国際的にもリピーターを多く獲得している。同格付けでJALは4ツ星に留まった。
14年春に行われた羽田空港新規国際線発着枠の割り振りは、ANAが10便・JALが5便と、明らかに偏った。こうした政府優遇も両社収益に大きく影響している。15年もおそらくANA優遇の流れは続くだろう。しかし、過去のJALの倒産は、政府からの優遇を受けた上での経営拡大、業界の寡占が遠因にあった。過去のバランスを正すためにも、しばらくANA優遇になるのは仕方ないかもしれないが、健全な競争が行われなければ、再びバランスが崩れる可能性もある。業界3位だったスカイマーク〈9204〉が業績悪化からANA・JAL両社に業務提携を頼ったことからも、ますます空運業界は2社の寡占状態になっている。ANA・JAL両社のバランスがどう保たれるかが、15年のポイントとなりそうだ。(編集担当:久保田雄城)
■関連記事
・子どもや孫に「就職してほしい企業」、1位はトヨタで上位にGoogleも
・モーダルシフト(Modal Shift)という言葉、ご存じですか? 健全な企業経営のひとつの手段です
・「空の女王」、ルフトハンザが羽田線に投入
・日航・全日空、路線争奪戦が激化
・全日空、5月の国際線実績で初めて日航を上回る
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
スポンサードリンク