ダイハツ・コペンが売れているワケ

2014年10月8日 18:16

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ダイハツ工業のフルオープン2シータスポーツカー「コペン」

ダイハツ工業のフルオープン2シータスポーツカー「コペン」[写真拡大]

 「今、コペンが熱い」と巷では評判だ。この車両のメーカーはダイハツで、初代は2002年から約10年間製造された。規格は軽自動車だが2シータのスポーツタイプで、アクティブトップと呼ばれる自動式のルーフ開閉装置がついているフルオープンカーだ。

 この時期、自動車業界は二つの大きな曲がり角にいた。一つはバブル経済が崩壊してしばらくたち、新車販売が不振に陥っていたということだ。もうひとつは、自動車が「完成品化」しつつあったということである。それまで、自動車はメカニカルな製品であったため、新車を購入したあとにユーザーが、様々な部品の取り付け・交換をしてカスタマイズすることが可能であった。しかし、電子部品の導入やトータルデザイン化が進むことによって、そういったことが行われなくなりつつあったわけだ。言い換えれば、マニア的なユーザーは減少傾向にあったというわけだ。

 ところが、軽自動車のフルオープン2シータスポーツカーというのは、マニアックな車両である。すなわち、時代に合致していないと判断するのが妥当だ。さらに、当時同社の親会社であるトヨタの会長であり、経団連の会長を務めていた奥田碩氏が、軽自動車について論議を投げかけていた時期である。そのような中で、初代コペンが製造・販売されたということは快挙として称えられた。結果的には、10年間の総生産台数がおおよそ6万5千台余りで、この種の車両としては大成功であったと言われている。

 さて、今回話題になっているのは2014年から製造を開始した二代目だ。初代コペンの製造終了はある意味「(特徴ある軽自動車からの)撤退ではないか」と見る向きもあった。初代コペンの開発時期より、自動車業界を取り巻く環境は厳しくなっているし、マニアックな車両を求める市場も縮んでいる。しかし、初代の製造終了から1年半後には2代目を東京モーターショーに出展し、その半年後から販売を開始した。要するに、同社の中で2台目の開発計画は比較的早いうちから検討されていたわけだ。

 もっとも、いくら「売れている」と言っても、絶対的な台数は決して多いといえるものではない。2014年9月のデータでは月間販売台数は1千台足らずで、同社のヒット商品タントの1万2千台には遠く及ばないのだ。従来、自動車業界はひとつのブランドで、より多くのユーザーの支持を得ようとする考え方が主流であった。しかし、ユーザーニーズが多様化して、そういったマーケティング手法が通用しなくなっている。そこで、細分化されたマーケットの求めるものを正確につかみ、それに応じた製品を見合うコストで製造するというやり方を取る必要が出てくるわけだ。

 そのような細分化されたマーケットの中で、不況期でも一定のマーケットを持つのが「嗜好品市場」だ。自動車は電子部品化やトータルデザイン化されることで、そういった要素が薄れつつある。自動車が「嗜好品=おもちゃ」という、「趣味」や「遊び」の要素を持ち続けるためにも、コペンが狙うマニアックな市場は必要不可欠な要素なのだ。トヨタや日産といった大企業が君臨する業界で、コペンはダイハツが生き残るための試金石的な位置づけにあると言っても過言ではないだろう。(記事:松平智敬・記事一覧を見る

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