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最低保証年俸の設定で産業構造の転換とイノベーションを(4/5)
■どのような行動をとることになるのか
この最低年俸の保証により起こると、筆者が期待している行動の変化を説明しよう。
恐らく45歳までの間で、以下の様な思考と行動がされるのではないか。
最も大きい変化は45歳で起こる。説明したように、46歳で国が負担する50%が無くなるからだ。45歳まではだれでも675万円が保証されていたのだが、翌年からは345万円となる。ほぼ半減だ。これが突然実施されるわけではなく、全ての勤労者に対して公知の制度として展開されていたと仮定しよう。するとどうなるか?
業務に関わらず、自分の真の実力とその実力に対して支払われている一般的な市場価値を意識するような働き方を、30代くらいから意識するようになるだろう。
仮に勤務先が、30代後半くらいから勤務を継続しても、最低保証以上の年俸はだせないというメッセージを送っていたらどうなるか。その場合は、少しでも最低保証年俸よりは高い職場を、46歳を待たずして社外に機会を探すようになるのではないか。
結局2つの選択しかなくなる。同じ勤務先で報酬と待遇ダウンを受け入れるか、または多少なりとも多い報酬や良い待遇を提示してくれる企業を先に見つけるかのどちらかになる。
既に転職市場では40代の転職の活性化が見られるという。実はこうした最低保証年俸という仕組がなくとも、役職が上がらない現状では同じような状況になっている。違いは、企業側が40代後半以降の待遇について、全く明示しない雇用慣行であることだ。
これが成長期に作られた年功序列と長期雇用の罠だ。長期雇用により、多様性というよりは、個々の企業の風土文化が優先し、企業特有の社内人間関係や業務経緯をより多く必要な人が評価され、30代で「俺もまだまだ行ける」という幻想を抱かせることで、やる気やモチベーションを引き出していた古い運営だ。
ところがこうした会社が今、一斉に「ごめん、あなたの仕事、もう無いんだわ。評価さえもできない」と言い始め、人事部付の「追い出し部屋」に社内転職を強要をするような時代だ。これがフェアといえるだろうか。それよりは、45歳での最低保証年俸半額、それを全体で制度化しながら、次のステップを見つけることを制度化するほうが、国全体として必要な産業や職能への移転を促進できるのではないだろうか。
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