東京電力の行方を見守りつつ、2つの真空を狙う相場=犬丸正寛の相場展望

2011年4月1日 20:03

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

来週(4~8日)は、『東京電力の行方を見守りつつ、2つの真空を狙う相場』が予想される。3月11日の東日本関東大震災から、現在までに起きたマーケットの大きい動きは次の3つではないだろうか。

来週(4~8日)は、『東京電力の行方を見守りつつ、2つの真空を狙う相場』が予想される。3月11日の東日本関東大震災から、現在までに起きたマーケットの大きい動きは次の3つではないだろうか。[写真拡大]

★しばらくは「鬼のいぬ間のひと稼ぎ」

  来週(4~8日)は、『東京電力の行方を見守りつつ、2つの真空を狙う相場』が予想される。3月11日の東日本関東大震災から、現在までに起きたマーケットの大きい動きは次の3つではないだろうか。

(1)東京電力 <9501> の株価が大震災発生前・3月10日の終値2153円から4月1日には400円を割って399円と81.4%の大きな下げとなった。

(2)日経平均も3月10日の終値1万434円から15日には場中・安値8227円まで、わずか3営業日で21.1%も急落した。

(3)東証1部の時価総額が3月10日の321兆3622億円から3月31日には298兆8893億円と22兆4729億円も目減りした。この内、東京電力の時価総額が約2兆6000億円も減少した。とくに、東京電力株は超優良の資産株とみられていただけに影響は大きい。社債も含めると影響は拡大する。

  こうした動きは今後も引きずり、相場の頭を押さえる。とくに、東京電力株は400円を割り、1951年(昭和26年)の上場時につけた393円まで、わずか6円にまで接近している。ここまで下げると、もはや楽観論は通用しない。

  とくに、東京電力については、悩ましい2つの問題がある。

(1)どこまで膨れるか、見通しの全くつかない補償額の問題。 (2)社会への電力供給の問題。とくに、日本の首都・東京をはじめ関東圏への電力供給の必要。

  この2つに目処をつけなくてはいけない大きい問題である。

  この両方を解決することは簡単ではない。思い切って言わせてもらえれば、補償問題等を片付ける会社と、新しく電力を供給する会社という、いわば、新旧型の東京電力が必要となるのではなかろうか。仮に、そうなれば、処理業務を主とする方の会社は残念ながら資産価値は限りなく小さくなっていく。

  一方、「2つの真空」とは、1つは、営業日わずか3日間で日経平均が21.1%も下げたことによる、相場的な真空状態がある。短期的には、相当の投げが出て、投げる向きは投げたという売りの真空状態となっている。したがって、次のまとまった売り物が出るには、よほど大きい材料が出ないといけない。

  その、次なる売り物を呼び起こす材料は何か。それは、景気・企業業績の悪化のはず。ただし、景気・企業業績の悪化が目の前に現れるまでには、まだ余裕がある。この点が、もうひとつの「真空」だ。3月期決算発表まで時間的な真空期間がある。被災額確定まで時間が必要となることから、3月期決算発表は遅れを認めるという方向のようである。このため、3月期決算の本格発表は7月頃までズレ込む可能性がある。

  この時間的真空を逃すことはないと機関投資家等はみているはず。大きく目減りした資産を少しでも取り返さなくてはいけない。しばらくは、「鬼のいぬ間のひと稼ぎ」ということだろう。個別株物色が、かなり活発となるだろう。

  振り返ってみると、大震災発生前の1株利益(日経平均ベース)は660円程度だった。これが、2012年3月期には2ケタ増益見通しから1株利益は750円程度となり、PER16倍の1万2000円目標が今年4~6月の相場シナリオだった。今の状況では2ケタ増益はかなり難しい。逆に、減益見通しにでもなれば、3月15日の安値8227円の維持も危うくなってくる。

  マーケットでは、「もう、東京電力株は諦めて、前向きに稼ぐしかない」(中堅証券)ということになって現れている。(執筆者:犬丸正寛 株式評論家・日本インタビュ新聞社代表)

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