【東芝】高圧ガス保安法に準拠した高圧水素を製造するPEM水電解評価装置を開発し、従来比1/10の省イリジウム触媒で安定動作を実証
配信日時: 2026-03-13 11:14:19



2026-3-13
株式会社 東芝
高圧ガス保安法に準拠した高圧水素を製造するPEM水電解評価装置を開発し、
従来比1/10の省イリジウム触媒で安定動作を実証
-水素貯蔵・輸送の効率化と希少金属枯渇リスクの低減を両立し、水素社会の実現に貢献-
概要
当社は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の電力を水素などに変換し、貯蔵・輸送を可能にするPower to Gas(以下、P2G)技術の高度化に向けて、高圧下で水素を製造・評価できる「PEM(固体高分子膜)水電解」方式の水電解評価装置を新たに開発しました。
本装置は、高圧ガス保安法に準拠して設計され、国内において5 MPa以下の差圧条件下での水電解評価を可能とするものです。本装置を用いて、3.5 MPaの差圧条件下で、当社が開発したイリジウム使用量を従来比1/10に低減した省イリジウム電極触媒を組み込んだMEA(膜電極接合体)の評価を行った結果、高圧と常圧を繰り返す条件下においても、1500時間を超える安定した連続運転を実証しました。
本成果により、水素貯蔵・輸送の効率化と希少金属であるイリジウムの枯渇リスク低減を両立し、持続可能な水素社会の実現に貢献します。
当社は、本技術の詳細を、3月17日~19日に東京理科大学 野田キャンパスで開催される電気化学に関する国内学会「電気化学会第93回大会」にて発表します。
開発の背景
再エネの導入拡大に伴い、天候や時間帯によって発生する余剰電力をエネルギーとして貯蔵・活用する手段として、水素が注目されています。当社は、再エネ由来の電力を用いて水を水素と酸素に電気分解(水電解)する水素製造技術において、触媒として用いるイリジウムの使用量を1/10に低減するとともに、電極の大型化を可能とする技術を開発してきました(*1)。
一方で、製造した水素を実用的に活用するために、貯蔵・輸送の観点から3~5 MPaの高圧水素を得ることが求められます。従来は、水素を常圧で製造した後に別途圧縮する方式が一般的でしたが、この方式ではエネルギー損失や設備の複雑化が課題となっていました。そのため、セル内で直接高圧水素を製造できる高圧水電解が、欧米を中心に実用技術として標準となりつつあります。
しかし、国内において高圧条件での評価を行うためには、高圧ガス保安法に基づいた設計・届け出が必要であり、研究開発上の大きな障壁となっていました。特に、省イリジウム触媒が高圧条件下で十分な耐久性を有するかについては、検証環境が限られていました。
本技術の特長
PEM水電解では、電解質膜と電極が一体化したMEA(膜電極接合体:Membrane Electrode Assembly)を用いて水を電気分解して水素を製造します(図1)。本研究では、当社が開発したスパッタリグ法(図2)で形成した省イリジウムアノード触媒を用いたMEAを、高圧PEM水電解評価装置に組み込み、評価を行いました。本装置では、生成した水素を排出する配管を閉じることで(図3)カソード側を最大5 MPa、アノード側を常圧とする差圧条件を実現しています。この条件下で、電流密度2 A/cm²において1500時間を超える連続運転、および、高圧と常圧を繰り返す圧力サイクル試験(図4)を実施しました。その結果、いずれの試験においても、電圧の顕著な上昇は見られず、安定した電圧特性を示しました。これにより、当社が開発したイリジウム使用量を大幅に低減した電極触媒であっても、高圧・変動圧力環境下で劣化しにくい特性をもつことを確認しました(図5)。
また当社は、高圧ガス保安法上に準拠した高圧PEM水電解評価装置を当社総合研究所内(神奈川県川崎市)に構築し、本実証に用いました(図6)。高圧ガス保安法では、安全確保の観点から、高圧部の圧力と容積の組み合わせに応じて設備の設計や検査方法が定められています。本技術では、高圧部の内容積を極小化する設計とすることで、5 MPaという高い圧力条件下での評価を、法令を考慮した形で実施することを可能としました。また、内容積の小型化により、小型MEAにおいても数十分程度の短時間で昇圧・降圧の圧力サイクル試験が可能となり、実運用を想定した加圧条件での評価を効率的に実施できるようになりました。
本成果は、日本国内において高圧PEM水電解装置を開発し、省イリジウム電極触媒を用いたMEAが加圧環境下でも十分な耐久性を有することを実証した点に特長があります。
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1398/130559/350_227_2026031310490369b36d0f6e908.jpg
図1:MEAの構成概略図
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1398/130559/350_230_2026031310491469b36d1ae7a4d.jpg
図2:スパッタリング法の原理図
[画像3]https://digitalpr.jp/simg/1398/130559/350_163_2026031310492269b36d2239d2a.jpg
図3:高圧PEM水電解評価装置の構成図
[画像4]https://digitalpr.jp/simg/1398/130559/350_239_2026031310493369b36d2d1cdae.jpg
図4:圧力サイクル試験プロファイル
「3.5 MPa差圧 ↔ 常圧」の繰り返し(横軸:時間、左縦軸:圧力、右縦軸:電流密度)
[画像5]https://digitalpr.jp/simg/1398/130559/350_308_2026031310494369b36d37d69eb.jpg
図5:電圧の時間変化(2 A/cm²、3.5 MPa差圧)
一定の圧力下での「連続試験」と昇圧と常圧を繰り返す「圧力サイクル試験」時の電圧を比較したもの。1000時間を超えても安定した電圧特性を示し、動作の安定を確認
[画像6]https://digitalpr.jp/simg/1398/130559/350_263_2026031310495469b36d429f3c5.jpg
図6:高圧PEM水電解評価装置の外観
今後の展望
当社は、今回開発した高圧ガス保安法に準拠した高圧PEM水電解評価装置を活用し、より高圧下での耐久性の検証や、水素製造効率向上を目指したMEAの技術の高度化を進めます。これらの取り組みを通じて、高圧水電解技術の実用化を加速し、再エネ由来の水素の普及と水素社会の実現に貢献してまいります。
*1 https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/rdc/rd/topics/22/2210-01.html
以上
プレスリリース情報提供元:Digital PR Platform
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