次世代パワー半導体“最有力素材”の新規技術を確立~世界初「酸化ガリウム」成長技術でEV、再エネ、宇宙開発を加速~
配信日時: 2026-03-13 11:20:06
【本研究のポイント】
・高密度酸素ラジカル源(HD-ORS)を開発し、分子線エピタキシー(MBE)注1)・物理蒸着法(PVD)注2)で原子状酸素密度を従来比2倍に向上。
・HD-ORSを用いたMBEで、300℃、1 µm/hにて次世代パワー化合物半導体注3)である酸化ガリウム(Ga₂O₃)注4)の高速ホモエピタキシャル成長注5)を実現。
・PVDにおいてもHD-ORSを活用することにより、1 µm/h超の高速成長で安定した(001)面ホモエピタキシャル膜を実現。
・Si基板の酸化防止法としてウェット洗浄とGaラングミュア吸着注6)による前処理技術を確立。
・これまで実現できなかったヘテロエピタキシャル成長注7)に世界で初めて成功した。HD-ORS を用いて低コストなSi(100)基板上へGa₂O₃を成長させ、熱処理により単結晶化を確認。
→次世代パワー化合物半導体Ga₂O₃の熱伝導性の大幅な向上と低コスト化が可能。
・NiO拡散層によるp型Ga系半導体注8)形成プロセスを深化し、pn接合作製に成功。
・本研究成果群を名大発スタートアップNU-Rei㈱が実用化。次世代パワーデバイスの形成技術を支える材料成長プロセス整備のさらなる前進が期待される。
【研究概要】
名古屋大学低温プラズマ科学研究センターの堀 勝 特任教授、小田 修 特任教授、清水 尚博 特任教授らの研究グループおよびNU-Rei株式会社の研究グループは、2026年3月15日〜18日に開催される応用物理学会 春季学術講演会において、酸化ガリウム(Ga₂O₃)のエピタキシャル成長に関する 6 件の研究成果を発表します。
今回の成果群は、名古屋大学が開発を進めてきた高密度酸素ラジカル源(High-Density Oxygen Radical Source: HD-ORS)を中心に、MBE・PVD・Si基板前処理・ヘテロエピタキシー・p型形成など、酸化ガリウムのパワーデバイス注9)基盤となる成長プロセスを体系的に高度化したものです。
また、名古屋大学は昨年、NiO拡散層を用いた酸化ガリウムのp型制御技術を報告注10)しており、今回の一連の成果は、こうしたデバイス形成技術を支える材料成長プロセスの整備をさらに前進させるものです。
【今回発表する主な成果】
1. High-Density Oxygen Radical Source (HD-ORS) for MBE and PVD
•O₃–O₂混合ガスにより、原子状酸素密度が従来比 2倍
•Ga₂O → Ga₂O₃ の酸化反応を強力に促進
•MBE・PVD双方で利用可能な高効率酸素源を確立
•成長速度の律速となるGa₂Oの揮発を抑制し、高速成長を実現
2. Homoepitaxial Growth of β Ga₂O₃ on Sn doped Ga₂O₃ Substrates Using HD ORS for MBE
•300℃という低温で1 µm/h の高速MBE成長を達成
•XRDで(001)面成長を確認
•HD-ORSにより、低温でも揮発性Ga₂Oの完全酸化が進み、成長速度が大幅に向上
3. 高密度酸素ラジカル源(HD-ORS)を用いたPVDによるSnドープGa₂O₃基板上でのβ-Ga₂O₃ホモエピタキシャル成長
•PVDにHD-ORSを適用し、(001)面ホモエピタキシャル膜の安定成長を実現
•成長速度は1 µm/h超 と、一般的なMBEの10倍に迫る
•産業応用に直結する高スループット成長技術
4. Si基板の酸化防止のためのウェット洗浄とラングミュア吸着(エピタキシャル成長前処理)
•RCAベース+NH4Fのウェット洗浄により自然酸化膜を除去
•Ga単原子層のラングミュア吸着により、昇温時の酸化を防止
•Si基板上でのGa₂O₃成長に不可欠な前処理技術を確立
•Si基板を用いたヘテロエピタキシャル成長に成功
5. Hetero Epitaxial Growth of Ga₂O₃ on Si(100) Substrates
•2インチSi(100)基板上でヘテロエピタキシャル成長に成功
•熱処理により単結晶化を実現
•Si基板上でのGa₂O₃デバイス統合に向けた重要なステップ
•Siの高熱伝導性を生かした高耐圧デバイスへの応用を期待
6. p型Ga系半導体の創成におけるNiOドープ拡散層の考察
•Niイオン注入+酸素プラズマアニール+RTAにより 緩やかなNiO拡散層(p型特性)を形成
•Ga₂O₃およびGaN基板でpn接合特性を確認
•Niショットキーダイオードの2倍の電流密度を達成
•p型形成が困難なGa系材料に対し、新たなアプローチを提示
【成果の意義】
•酸化ガリウムの成長速度・結晶性・基板適合性を同時に改善
•p型形成技術と組み合わせることで、デバイス実装に向けた基盤がさらに強化
•MBE・PVD・Si基板など多様なプロセスに対応
•産学連携(名古屋大学 × NU-Rei)による実用化指向の研究体制
•EV・電力変換・宇宙電源など、次世代パワーデバイスへの応用が加速
HD-ORSを中心とした薄膜成長技術は、酸化ガリウムデバイスの量産化に向けた重要な基盤となります。今後は、企業との共同研究を通じて、高耐圧デバイス・高周波デバイス・Si集積化デバイスなどへの応用を進めていきます。
【用語説明】
注1)分子線エピタキシー(MBE):
超高真空中で分子線(原子線)を基板に照射し、単結晶薄膜を成長させる手法。
注2)物理蒸着法(PVD):
材料を物理的に蒸発・スパッタリング等により気化させ、基板上に薄膜を形成する技術。
注3)化合物半導体:
単体半導体であるSiと異なり、化合物を半導体とするもので、既にGaAs、GaP、InP、SiC、CdTeなどが実用化されている。
注4)酸化ガリウム(Ga₂O₃):
ガリウムと酸素の化合物。さまざまな多形があるが、β- Ga₂O₃が最も多く使われている。
注5)ホモエピタキシャル成長:
同一材料の基板上に、結晶方位を揃えて結晶成長させること。
注6)ラングミュア吸着:
化学ポテンシャル(圧力など)を調整して所定の元素の吸着だけが実現できる。
注7)ヘテロエピタキシャル成長:
異なる物質の結晶を、基板となる結晶の結晶構造を継承するように薄膜として成長させる技術。
注8)p型半導体:
p型伝導を有する半導体で、n型と組み合わせることによりpn接合ができパワー半導体に必須な材料。
注9)パワーデバイス:
省エネに必須な半導体でこれまでSi、GaAs、GaN、SiCなどが実用化されてきている。
注10)NiO拡散層を用いた酸化ガリウムのp型制御技術を報告:
2025年9月1日プレスリリース
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2025/09/-2-3.html
▼本件に関する問い合わせ先
名古屋大学総務部広報課
TEL:052-558-9735
FAX:052-788-6272
メール:nu_research@t.mail.nagoya-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/
プレスリリース情報提供元:Digital PR Platform
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