世界最高性能の酸化グラフェン燃料電池開発に成功
配信日時: 2026-01-23 10:11:05
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(ポイント)
・酸化グラフェン*1を固体電解質*2とした燃料電池において、酸化グラフェン膜と電極との界面抵抗を低減する手法を開発し、燃料電池性能を大幅に向上させることに成功しました。
・作製した燃料電池は、40 ℃で最大0.7 W cm−2の出力密度を達成し、ナノシートを電解質に用いた燃料電池の世界最高性能を実現しました。
・フッ素を使用せず、環境負荷の小さい高性能な燃料電池開発の加速が期待されます。
(概要説明)
熊本大学産業ナノマテリアル研究所の畠山一翔助教と伊田進太郎教授らの研究グループは、酸化グラフェンを固体電解質とした燃料電池の膜-電極界面の設計手法を開発し、燃料電池性能を大幅に向上させることに成功しました。酸化グラフェン膜は、高いプロトン伝導性と水素ガスバリア特性を併せ持ち、次世代のプロトン交換膜として期待されています。しかし、高いプロトン伝導性を示すにもかかわらず、これまでは最大でも0.25 W cm−2の出力密度しか得られていませんでした。本研究では、界面設計により、酸化グラフェン膜と電極との間の界面抵抗を大きく減少させることに成功し、酸化グラフェンを固体電解質とした燃料電池の最大出力密度を0.7 W cm−2まで向上させることに成功しました。この値は、ナノシートを固体電解質とした燃料電池の中では最高の値であり、同条件で測定した市販のフッ素系高分子膜(25 μm)を用いた燃料電池の出力密度に匹敵します。
本研究成果は令和8年1月6日に英国王立化学会が発行する科学雑誌「Journal of Materials Chemistry A」にオンライン掲載されました。
なお、本研究は防衛装備庁安全保障技術研究推進制度、科学技術振興機構先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)、日本学術振興会科学研究費助成事業(研究課題/領域番号:23H00314)の援助を受けて行われました。
(今後の展開)
ここで提案した界面設計手法は、酸化グラフェン膜以外のナノシート膜や、高分子膜でも効果があることがわかり、高出力の燃料電池を得るための有効な手段であることが示されました。今後、本技術が様々な固体電解質に導入されることで、燃料電池の高性能化が期待できます。
[用語説明]
*1酸化グラフェン
グラフェン骨格に酸素官能基を多数有する、グラフェンの酸化体。イオン伝導特性や溶媒への高分散特性など、グラフェンとは異なる特徴を持つ。数マイクロサイズの横幅を持ちながら、厚さは1 nm程度であり、いわゆるナノシートの1つである。水に高分散し、分散液を吸引ろ過や容器中で乾燥させることで、大面積の酸化グラフェン膜を作製することができる。
*2固体電解質
イオンを伝導する性質を持つ固体のこと。通常の固体は原子やイオンが固定されており動くことができないが、固体電解質の場合は電圧印加によりイオンを伝導させることができる。室温作動する燃料電池の固体電解質では主にプロトン(水素イオン、H+)が伝導する。
(論文情報)
論文名:Interface-Engineered Graphene Oxide Membranes for High-Performance Fluorine-Free Fuel Cells
著者:Tatsuki Tsugawa, Kazuto Hatakeyama*, Kanako Oka, Kaito Takegami, Yuichi Sakuda, Michio Koinuma, Norihiro Moriyama, and Shintaro Ida*
掲載誌:Journal of Materials Chemistry A
doi:10.1039/D5TA09184E
URL:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2026/ta/d5ta09184e/unauth
【プレスリリース】(PDF373KB)
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