梅原猛生誕100年を機に創設された「梅原猛人類哲学賞」第一回受賞者は写真家・志賀理江子さんに決定 3月に京都市の梅原猛邸にて授賞式を行います

プレスリリース発表元企業:一般財団法人梅原記念財団

配信日時: 2026-01-21 15:00:00

受賞者・志賀理江子氏(写真家)

梅原猛

志賀理江子作品 「なぬもかぬも」(写真絵巻からの抜粋) 2025年

一般財団法人梅原記念財団は、芸術を愛し、独創的な「梅原日本学」を築いた故・梅原猛(哲学者)の生誕100年を機に当財団が創設した「梅原猛人類哲学賞」の第一回受賞者が、写真家・志賀理江子さんに決定したことをお知らせします。

この賞は、西洋の思想哲学を乗り越える「人類哲学」を提唱した晩年の梅原の遺志を継ぎ、既存の考え方にとらわれず、人類の持続性に豊かな地平を拓く学術的冒険や芸術的冒険に挑む個人等に授賞し、正賞と副賞100万円が贈られます。2026年3月20日(金・祝)に京都市の梅原邸で、関係者による授賞式を行います。

梅原記念財団 ホームページ: https://umehara-memorial-foundation.jp/


■受賞者・志賀理江子氏(写真家)
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/568882/LL_img_568882_1.jpg
受賞者・志賀理江子氏(写真家)

写真家。1980年、愛知県生まれ。ロンドンで学ぶ。写真集『CANARY』で木村伊兵衛写真賞受賞。2008年、宮城県へ移住し東日本大震災で被災。その地に暮らす人々との出会い、人間社会と自然の関わり、何代にもわたる記憶を追求し、震災以降の「復興」への煩悶、人間精神の根源への遡及を表現。主な個展に「螺旋海岸」(せんだいメディアテーク、2012年)、「カナリア」(アムステルダム、2013年)、「ブラインドデート」(猪熊弦一郎現代美術館、2017年)、「ヒューマン・スプリング」(東京都写真美術館、2019年)等。2025年には東京・アーティゾン美術館「ジャム・セッション『漂着』」を山城知佳子氏と共に開催。

◎受賞の言葉(志賀理江子)
梅原猛人類哲学賞、第1回目の賞をくださるとのこと、大変に驚きました。
私が一体、何かをできてきたのだろうか、全くもって謎で不安です。
しかしながら、梅原猛、という哲学者の名前を聞き、また彼が今から100年前に宮城県で生まれたと知って、今、とても近しく感じる人がいます。私は宮城県石巻市を拠点に制作活動をしていますが、同じ石巻市牡鹿半島の「桃浦漁港」には、梅原さんより4歳若く、今年2月に97歳を迎える現役漁師、甲谷強さんという方が住んでおり、私はこの方の話を聞くため、三陸の漁師の生業を学ぶため、頻繁にお家に通っているのでした。
甲谷さんが生きてきた時代は、激動なる約100年です。彼は着物を着て暮らしていた3歳頃からの記憶がはっきりとあって、その頃を昨日のことのように語ります。甲谷さんと話していると、約100年前の三陸世界、桃浦集落の生活と人々、思春期まで続いた戦争の内実、激変した社会と自然、遠洋漁業の航路で出会った国々と人々の様子、厳しい生業、、、それらがどのような怒涛なる時空で、彼というひとりの人間を通り抜けていったのか、生々しく感じることができます。そして、そのすべてが複雑な因果となって「今」の時代を生み出し続けていることも。
私にとっては、甲谷さんの生の声で聞く言葉ひとつひとつが、私に何事をも深く深く考えさせるという意味で「哲学」です。
今はもう、天にいる梅原猛さん、少しの間でいい、あなたが生まれた宮城県にその魂を戻し、東北の地で繰り広げられる、東日本大震災後の復興政策がもたらした光景を今一度ご覧になってください。そして、梅原さんはどう思うのか、何をここから考えるのか、改めて私たちに語ってくれないでしょうか。私は、ここに生きる私の葛藤ともがきを、人々と自然の痛みを、梅原猛という哲学者にぶつけてみたかった。
梅原記念財団と選考委員の皆さま、私とその作品について関心を持ってくださり、感謝申し上げます。これまで制作してこれた作品とは、私に強く影響を与え、もっと自分の頭で深く考えよと諭してくださった、沢山の方々の存在から成ります。


■選考について
下記6名の選考委員が各々3名以内の候補者を推薦、第一回選考委員会にて全6名に絞り込み、著作・作品・関連資料を読み込んだうえ第二回選考委員会にて受賞者1名を決定した。

山極壽一(総合地球環境学研究所所長) ※委員長
奥野克巳(立教大学教授)
長谷川祐子(キュレーター、京都大学経営管理大学院客員教授)
福岡伸一(青山学院大学教授)
細川俊夫(作曲家)
鷲田清一(大阪大学・京都市立芸術大学名誉教授)

◎授賞理由(梅原猛人類哲学賞選考委員会)
志賀理江子は呻吟する作家である。これまでずっと、世界というものの閉塞に全身をぶつけてきた。
写真集『CANARY』で木村伊兵衛賞を受賞した志賀は、二〇〇八年、宮城県名取市北釜に移住したが、二〇一一年の大震災で村ごと津波に襲われた。被災後、生き残った地元の方々と避難、避難所・仮設住宅でともに暮らすなか、流出した家族のスナップ写真の洗浄にとりかかり、同時にせんだいメディアテークで被災と自身の制作との関係についての煩悶をそのまま市民らの前で連続レクチャーの形でおこなうという“無謀”な試みを果たす。集落のなかで他の人たちとともに生きることの意味は何か? 震災における被災よりもそこからの復興過程がむしろより破壊的な暴力であったのはなぜか? そうした問いに向きあうなかで生まれたのが写真集ならびに写真展《螺旋海岸》である。
村民やボランティア・スタッフらを巻き込んだ制作であった。
その間、自分のイメージで世界を“制覇”する『CANARY』から、共同体、とくに民俗的伝承の水面下に潜り込んでの制作へと、大きな転換があったが、そのイメージのただならぬ強度には微塵の変化もない。死や喪失といった契機を深く内蔵する生命の根源へ降りてゆくことと、もろもろの制度や消費に蝕まれてきた精神の極限状態への問いとが交叉する地点で、写真のみならず映像作品、野外でのインスタレーション、さらには個展《ヒューマン・スプリング》(東京都写真美術館、二〇一九年)など、国内外の大がかりな展覧会にも取り組む。
コロナ禍の渦中での発言「ステイホーム、その内へのこもり方が中途半端だった」との発言もふくめ、そのイメージ喚起力と、問いを根元にまで突きつめる構えとにうかがわれるその破格的な強度において、「梅原猛」を記念する賞にふさわしい仕事と思われた。
選考委員一同、授賞が決まってから知ったのだが、彼女が現在、制作の拠点を置く宮城県石巻市は、梅原猛の生母の故郷である。はからずも本賞創設の巡りあわせかとおもう。


■第一回授賞式開催概要
日時:令和8年3月20日(金・祝)14時30分~17時30分(祝宴を含む)
会場:梅原猛邸内 妙喜山荘(京都市左京区若王子)
内容:授賞式、受賞者スピーチ、質疑応答、祝宴
出席:受賞者、メディア関係者、選考委員、梅原記念財団関係者

※授賞式を取材いただく場合は事務局担当まで予めご連絡下さい。
会場アクセス方法など詳細をご連絡いたします。


【参考資料】
■梅原猛人類哲学賞実施概要
<趣旨>
独創的な「梅原日本学」を築き2019年に逝去した哲学者・梅原猛は、京都市立芸術大学学長を務め、国際日本文化研究センターを創設し初代所長に就いた。
これまでの常識を打ち破り、新たな歴史解釈や哲学の再考を試みるとともに、新たな歌舞伎・能・狂言の戯曲等も手掛け、日本ペンクラブの会長を務めた。
東日本大震災を“文明災”と呼び、西洋の思想を乗り越える新たな「人類哲学」の必要性を説いたが、志半ばで生涯を閉じた。
氏の営為と遺志を次代に継ぎ、人類の未来へ豊かな地平を拓く哲学の探求を旨に、学術・芸術という広い分野における画期的な取組みに対し授賞する。

<対象(選考基準)>
以下を満たす個人やグループの、特定の成果を軸とした近年の営為に対し授賞する。
〇主題
この世界の新しい解釈や人間の生き方を、古今東西の思想等を横断し、広く社会一般に訴える平明さをもって提起しながら、既存の考え方を大胆につくりかえ、人類の持続性に豊かな地平を拓く、学術的もしくは芸術的な冒険。
〇領域
学術および芸術(文芸・美術・造形・音楽・映像・舞台作品などジャンル不問)
〇成果
近年に日本で公表された書籍、作品、催事、番組等。

<賞>
領域(学術・芸術)を限らず、原則的に毎年1名(組)に授賞する。副賞100万円。

<主催>
一般財団法人梅原記念財団 (協力:新潮社)

<選考委員> ※五十音順
委員長 山極壽一(人類学) 総合地球環境学研究所所長
委員 奥野克巳(文化人類学) 立教大学教授
長谷川祐子(芸術) キュレーター、京都大学経営管理大学院客員教授
福岡伸一(生物学) 青山学院大学教授、作家
細川俊夫(音楽) 作曲家
鷲田清一(哲学) 大阪大学・京都市立芸術大学名誉教授

■梅原猛 略歴
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/568882/LL_img_568882_2.jpg
梅原猛

哲学者。1925年宮城県生まれ。京都大学文学部哲学科卒。立命館大学教授、京都市立芸術大学学長を経て、国際日本文化研究センターの創設に尽力し初代所長に。1999年、文化勲章を受章。縄文時代から近代までを視野に収め、文学・歴史・宗教等を包括し日本文化の深層を解明する営為が「梅原日本学」と呼ばれる。2019年逝去。著書に『地獄の思想』『隠された十字架―法隆寺論』『水底の歌―柿本人麻呂論』『日本の深層―縄文・蝦夷文化を探る』『世阿弥の神秘』『人類哲学序説』『親鸞「四つの謎」を解く』など。1986年初演のスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」はじめ、新たな歌舞伎・能・狂言の戯曲等も手掛け、日本ペンクラブ会長を務めた。


■志賀理江子氏作品例
●「なぬもかぬも」(写真絵巻からの抜粋) 2025年
●インスタレーション風景 1(「なぬもかぬも」より) 2025年
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着」(アーティゾン美術館)
●インスタレーション風景 2(「なぬもかぬも」より) 2025年
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着」(アーティゾン美術館)
●インスタレーション風景 3(「なぬもかぬも」)より 2025年
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着」(アーティゾン美術館)
●インスタレーション風景 4(「なぬもかぬも」より) 2025年
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着」(アーティゾン美術館)
●インスタレーション風景 5(「なぬもかぬも」より) 2025年
「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着」(アーティゾン美術館)
●「悲しみのすべて」 2024年
展覧会「作家の現在 これまでとこれから」(東京都写真美術館)より
●「海に雪が降る日、波打ち際には蛇の道があらわれる その先を歩いていくと、もうここにはいない、近しいあの人たちに会える」 2023年
展覧会「作家の現在 これまでとこれから」(東京都写真美術館)より
●「あの夜の繋がるところ」 2023年
展覧会Tokyo Contemporary Art Award2021年−2023年受賞記念展「さばかれえぬ私へ/Waiting for the Wind 竹内公太・志賀理江子」展 (東京都現代美術館)より
●「絶句」 2019年
展覧会「HUMAN SPRING」より
●「内側から壊れていく」 2019年
展覧会「HUMAN SPRING」より
●「皆違う歌を歌う」 2019年
展覧会「HUMAN SPRING」より
●「藤島旅館」 2016年
展覧会「ブラインドデート」より
●「螺旋海岸45」 2011年
展覧会「螺旋海岸」(せんだいメディアテーク)より
●「螺旋海岸28」 2011年
展覧会「螺旋海岸」(せんだいメディアテーク)より
●「肉は肉、魚は魚」 2009年
展覧会「螺旋海岸」(せんだいメディアテーク)より
●「ブラインド・デート」 2008年
写真集「ブラインドデート」より
●「ドミニク」 2008年
写真集「カナリア」より
●「私の夫」 2006年
写真集「カナリア」より
●「覚えているか?」 2006年
写真集「カナリア」より


詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press