【分析】中国CXMTの巨額IPOと国産DUV稼働が韓国半導体株を直撃、KOSPI歴史的急落の背景

2026年7月29日 23:53

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上海の政府支援企業が7月28日、中国の半導体メーカーに初の国産液浸DUV(深紫外線)露光装置を納入した。これを受け、韓国の半導体関連株は1日で約396兆ウォン(約44兆2800億円)の時価総額を失った。KOSPIの時価総額の約半分を占めるサムスン電子とSKハイニックスはいずれも2桁の下落となった。KOSPIが8%安の基準を超えたため、韓国取引所は2026年で8回目となる市場全体のサーキットブレーカーを発動した。終値ベースでは、KOSPIは史上4番目に大きい下落率を記録した。

これは、韓国株にとって単に不調な1日だったという話ではない。中国の半導体工場を先端製造装置から切り離せば、その製造能力を恒久的に制限できるという、西側諸国政府による10年来の輸出規制の前提が、初めて重大な反証に直面した瞬間である。中国企業が国産化して量産を始めた5台の液浸DUVスキャナーが、SMIC、Hua Hong Semiconductor、ChangXin Memory Technologies(CXMT)で順次稼働を開始している。

■中国が独自の露光装置を納入、西側の輸出規制が直面する試練

直接の引き金となったのは27日夜の報道だ。The Informationは、上海の政府支援メーカーが中国初の国産液浸DUV露光装置の量産を始めたと報じた。ロイターやTom's Hardwareを含む複数のメディアも、それぞれ独自にこの報道を確認した。

メーカー名は明らかにされていないが、この事業には政府支援のスタートアップであるShanghai Yuliangsheng Technologyを含む、中国の複数企業からDUV開発チームが集められた。SMICは2025年9月からYuliangshengの液浸装置をテストしてきた。最初の5台は今年中にSMIC、Hua Hong Semiconductor、CXMTへ納入され、2027年には生産台数を約20台に拡大する計画だ。部品の大半は中国国内で調達されているが、一部の重要部品は依然として日本製であり、国内サプライヤーの遅れによって今年の生産台数は制約を受けている。

金融市場がこれほど大きく反応した理由を理解するには、液浸DUV露光技術の仕組みを知る必要がある。この装置は193ナノメートルの波長を使い、レンズとシリコンウェハーの間に薄い水の膜を形成する。水の屈折率は1.44と、空気の1.0より高いため、レンズの開口数を1.0より大きくでき、乾式の193nm露光より微細な回路パターンを解像できる。1回の露光では28nmクラスの回路を形成できる。マルチパターニングと呼ばれる、位置をずらしたマスクで露光を複数回繰り返す技術を使えば、位置合わせ誤差の蓄積や歩留まりの低下と引き換えに、7nmクラスの微細加工も可能になる。

同じ微細な回路を1回の工程で、より高速かつ高い歩留まりで形成できるEUV(極端紫外線)露光装置は、現在の輸出規制下では中国の半導体工場がまったく利用できない。これを可能にするASML製装置は、オランダと米国の輸出規制によって中国への販売が阻止されている。したがって、マルチパターニングと組み合わせた液浸DUVは、中国の半導体メーカーが合法的に入手できる中で最も高性能な装置であり、今回、中国国内の供給源が確保されたことになる。

その意義は構造的だ。中国の半導体開発を標的とする西側の輸出規制は、最終的には、先端チップの製造に必要な物理的装置を中国の半導体工場に渡さないことに依存している。液浸DUVは、従来型のメモリおよびロジック半導体の生産工程に残された最後のボトルネックだった。最初の5台の納入先であるSMIC、Hua Hong、CXMTの3社は、米下院法案8170号でも制限対象企業として挙げられている。しかし、企業を制限対象に指定する法律でも、その企業が自国内で製造された装置を受け取ることまでは阻止できない。

2026年に世界で約130台の液浸システムを納入する計画のASMLは、この報道が出た27日に株価が7%以上下落した。

■CXMTの86億ドルの資金調達と供給過剰の懸念

28日の市場心理をさらに悪化させたのは、そのわずか前日に中国最大のDRAMメーカーが上場し、その規模がソウルの投資家を警戒させたことだ。

ChangXin Memory Technologies(CXMT)は7月27日(月曜日)、上海証券取引所の科創板(STAR Market)に上場した。同社は1株8.66元(約1.28ドル、約210円)で株式を売り出し、579億2000万元(約86億ドル、約1兆4104億円)を調達した。株価は上場初日に466%上昇し、49元(約7.24ドル、約1187円)で取引を終えた。初日の時価総額は約3兆3000億元(約4870億ドル、約79兆8680億円)に達し、一時は中国工商銀行を抜いて、中国本土の取引所に上場する企業で最大となった。このIPOは2026年のアジア最大であり、中国本土の半導体企業による上場としても過去最大だった。

ソウルの投資家にとって、この上場は祝うべき出来事ではなく、警戒材料だった。CXMTのIPO目論見書によると、同社は2025年末時点で世界のDRAM市場の約7.67%を占めていた。調達した86億ドルの大半は、半導体工場の増設やウェハー生産量の拡大など、生産能力の増強に充てられる。Counterpoint Researchは、CXMTの世界DRAM市場シェアが2028年までに約11%へ達すると予測している。CXMT自身も目論見書で、最終需要が変化したり需給バランスが逆転したりすれば、2026年上半期の収益性を維持できない可能性があると認めている。

この留保は、すでに供給過剰のリスクを織り込みつつあった市場に重くのしかかった。メモリ半導体は市況変動の激しいコモディティーであり、供給が需要を上回ると価格が急落してきた。CXMTの2026年第1四半期の売上高は508億元(約75億ドル、約1兆2300億円)に達し、前年同期比で700%以上増加した。大手3社がAI向けに不可欠な広帯域メモリ(HBM)へ生産能力を振り向けたことで汎用DRAMに供給不足が生じ、CXMTがその不足を積極的に埋めたことが成長を支えた。

ブルッキングス研究所で中国の技術政策を専門とするフェローのKyle Chan氏は、CXMTが中国のAI推進において重要な役割を果たし、中国が将来、国産HBMの製造能力を獲得するうえで現在最も有力な存在だと確認した。ただし、CXMTのビット当たりコストは既存大手より30%以上高く、HBMの商業生産にもまだ至っていない。HBM3Eの量産開始は早くても2027年を目標としており、サムスンやSKハイニックスより1〜2製品世代遅れている。

■なぜKOSPIは他市場よりも大きく下落したのか

サムスン電子は28日に13%以上下落し、同社にとって近年最大級の1日当たり下落率となった。SKハイニックスは14%以上下落した。この2社だけでKOSPIの時価総額の約半分を占めるという構造が、半導体セクターに始まった売りを指数全体の危機へ発展させた。

数字が示す打撃は深刻だ。28日の取引では、メイン市場で上昇した銘柄はごくわずかで、大半が下落した。外国人投資家は終日、一貫して売り越した。SKハイニックスの米国上場株(ティッカー:SKHY)は130ドルを割り込み、わずか数週間前に完了した265億ドル(約4兆3460億円)規模のナスダック上場における売り出し価格を下回った。この上場は、ナスダック史上最大の外国企業上場だった。

日本の日経平均株価は3.95%安の6万2364.92円で取引を終え、5月以来の安値となった。東京市場ではキオクシアが18%以上急落し、台湾の主要株価指数も大幅に下落した。為替市場では、ドル・ウォン相場が1ドル=1467ウォン近辺で推移し、取引中のウォン安は小幅にとどまった。これは、外国為替市場では株式市場ほどのシステミックなストレスがまだ織り込まれていないことを示唆している。

第3の要因は、AI投資に対する懐疑論だ。エヌビディアの株価は、AI関連の資金調達スキームにおける同社の財務上の関与が拡大しているとの懸念から、27日の米国市場で下落していた。ハイパースケーラーと半導体メーカーの間を行き来する巨額の相互投資が、実際の最終需要を反映するのではなく、需要を示すシグナルを膨らませているのではないかという「ラウンドトリップ」を巡る見方が、AI半導体のサプライチェーン全体の重荷となった。

■国産DUVでまだできないこと

DUVにおける進展は現実のものだ。しかし、サムスンとSKハイニックスの最も収益性の高い製品に対する短期的な影響は、より限定的である。

広帯域メモリ(HBM)における韓国の支配的な地位は、汎用DRAMにおける地位とは構造的に異なる。HBMは複数のDRAMダイを垂直に積層し、シリコンを貫通する数千本の配線を介して相互接続する。この技術はシリコン貫通電極(TSV)と呼ばれる。パッケージング工程には、高度なウェハー接合、精密なTSV形成、さらにCXMTが完全には管理できていないサプライチェーンに依存する特定のDRAMプロセスノードが必要となる。

2026年半ばの時点で、CXMTのウェハー生産能力のうちHBM向けに割り当てられているのは約2%にすぎない。SKハイニックスとサムスンが現在出荷しているHBM4より1世代前のHBM3Eを量産するという目標も、実現は早くても2027年になる。

アナリストらは、生産規模、プロセス歩留まり、エコシステムの成熟度が依然として障壁になると指摘している。ここでいうエコシステムには、装置を利用できるだけの状態から、競争力のある歩留まりでウェハーを生産できる状態へ移行するために必要なマスク、化学材料、計測装置、技術者チームを含むサプライチェーン全体が含まれる。こうした障壁は、装置を生産するだけでは取り除けない。ASMLが世界で年間約130台を生産するのに対し、中国の今年の目標は5台にとどまる。中国製装置も、一部の重要部品では依然として日本からの輸入に頼っている。

投資家にとっての問題は、中国の半導体メーカーが最終的にこうした格差を埋めるかどうかではない。より差し迫った問題は、複数のアナリストが市況サイクル上の価格のピークになり得るとみる時期に、CXMTがIPOで得た86億ドルを汎用DRAMの生産能力増強へ投じることで、HBMの技術格差にかかわらず、業界全体に利益率の圧迫が生じるかどうかである。

■韓国の個人投資家のレバレッジが調整を危機に変えた背景

28日の取引は、それ以前の状況を抜きにしては十分に理解できない。KOSPIは2026年上半期に2倍以上となり、一時は世界で最も好調な主要株価指数の一つだった。サムスンとSKハイニックスは、AIがけん引するHBM需要の急増を背景に、巨額の資金を集めた。そこには、レバレッジ商品を利用して投資額を膨らませた韓国の個人投資家による積極的な参加も含まれていた。

市場心理が反転すると、その巻き戻しは急速に進んだ。韓国の金融監督院(FSS)は以前の急落局面について、120万を超えるレバレッジ口座で追加証拠金の請求が発生したと報告していた。これは韓国の成人のおよそ30人に1人に相当し、数十万口座が強制的に決済された。

韓国の金融委員会(FSC)は7月中旬、個別株を対象とするレバレッジETFの新規上場を停止し、個人投資家がこうした商品へ投資する際に必要な最低現金残高を3倍に引き上げた。韓国銀行は過熱した市場環境への対応として、基準金利を2.50%から2.75%へ引き上げた。利上げは2023年初頭以来初めてだった。こうした措置でも市場心理が完全には安定しないうちに、28日の複数の悪材料が重なった。

2026年6月22日のピークから28日の取引前までの25営業日で、KOSPIは短期間の反発を挟みながらすでに34%下落していた。同指数では2026年だけで8回、サーキットブレーカーが発動している。これは、2000年代初頭のドットコム・バブル崩壊後に制度が導入されてから2025年までに記録された計6回を上回る。

■韓国のHBMにおける優位性は中国との競争を乗り越えられるか

28日の急落の背景にあるより本質的な論点は、CXMTと中国による広範な半導体産業の増強が、サムスンとSKハイニックスにとって存続を脅かす競争上の脅威となるのか、それとも少なくとも今後2〜3年は韓国メーカーの戦略的優位性を維持したまま訪れる、市況サイクル上のタイミングが重なった課題なのかという点だ。

CXMTの世界DRAM市場シェアは7.67%で、サムスンの約38%、SKハイニックスの約30%を大きく下回る。さらに重要なのは、CXMTを含む中国の半導体メーカーが、高い利益率をもたらし、AIアクセラレーターに搭載されるHBMの商業生産をまだ実現していないことだ。高度なパッケージング、TSV形成、そして10年以上にわたり蓄積されたプロセス技術の上に築かれた韓国のHBMにおける優位性は、中国のどの競合企業も商業規模では再現できていない。

サムスンは2026年度に総額100兆ウォン(約680億ドル、約11兆1520億円)を超える設備投資を計画している。サムスンとSKハイニックスはともに、過去の水準を上回る設備投資計画を示している。戦略上の問題は、こうした支出によって両社の優位性が強まるのか、それとも競争が激化する市場で事業を続けるためのコストが上がるだけなのかということだ。

28日の出来事によって明確になったのは、市場が中国の半導体産業への野心を、もはや遠い将来の理論上のリスクとして評価していないことだ。86億ドルのIPO資金を得たCXMTによる生産能力の拡大は現実に進んでいる。国産DUV生産計画も、単に特許を出願する段階ではなく、実際に装置を納入している。メモリ価格が市況サイクルのピークに達している可能性がある時期に増産が進めば、汎用DRAMの供給増加と価格下落が同時に起きる可能性がある。これは歴史的に、新規参入企業だけでなく業界全体の利益率を圧迫してきた組み合わせだ。

■今後の展望

報道によると、韓国のFSCは28日の取引を受け、レバレッジ取引に対する追加規制を検討している。投資家は金融政策上の重要な1週間を迎える。米連邦準備制度理事会(FRB)、日本銀行、イングランド銀行はいずれも数日中に政策金利を決定する予定であり、特にFRBが示す金融緩和のペースは、半導体株に対する投資家のリスク選好に大きく影響する。

サムスンとSKハイニックスにとって目先の焦点は、引き続き堅調なHBM需要を反映すると予想される今四半期の決算によって、長期的な競争環境はなお対応可能だと投資家を安心させられるかどうかである。両社は過去の水準を上回る設備投資計画を示し、サムスンは2026年度に100兆ウォン(約680億ドル、約11兆1520億円)を超える総設備投資を計画している。この支出が両社の優位性を強めるのか、それとも競争が激化する市場で事業を続けるコストを高めるだけなのか。この問題が現在、韓国株を動かし、さらには世界の半導体取引にも影響を及ぼしつつある。

■注目ポイントQ&A

●2026年7月28日にサムスンとSKハイニックスの株価が急落したのはなぜですか?

3つの要因が同時に重なったためです。上海の政府支援メーカーが、中国初の国産液浸DUV露光装置をSMIC、Hua Hong、CXMTへ納入し始めたことが確認され、中国の半導体製造能力を抑える西側の輸出規制戦略が揺らぎました。同時に、前日に実施されたCXMTの86億ドル規模のIPOは、価格が市況サイクルのピークにある可能性がある時期に、中国のDRAM生産能力拡大へ巨額の資金が投じられることを示しました。さらに、ハイパースケーラーによるAI設備投資が、半導体株の高い評価を維持できるだけの収益を生むのかという投資家の懐疑論も背景にありました。サムスンとSKハイニックスでKOSPIの時価総額の約半分を占めるため、両社の2桁下落によって指数全体も10.84%下落し、史上4番目に大きい下落率を記録しました。

●中国はEUVの代わりにDUV露光装置で競争力のあるチップを製造できるのですか?

一定の制約はありますが、可能です。液浸DUV装置は193nm波長の光を使い、レンズとウェハーの間に水の膜を設けることで、1回の露光で28nmクラスの回路を形成できます。さらに、位置をずらしたマスクで露光を繰り返すマルチパターニングを使えば、SMICがN+1プロセスで実証したように、7nmクラスのチップも製造できます。ただし、EUVによる1回の露光と比べて処理能力が低く、工程数が増え、欠陥率も高くなるという代償があります。このため先端ノードではコスト競争力が劣りますが、CXMTが参入する汎用DRAMやロジック半導体の市場では商業的に成立します。

●中国のDUVの進展は、西側の半導体輸出規制にとって何を意味しますか?

輸出規制戦略に対する初の重大な構造的課題となります。規制は、中国の半導体工場が先端製造装置を入手できないようにし、規制可能な西側サプライヤーへの依存を維持させることを目的としていました。国産の液浸DUVスキャナーを生産することで、中国は従来型半導体の生産におけるその依存を取り除きました。最初の5台の納入先であるSMIC、Hua Hong、CXMTの3社は、米下院法案8170号でも制限対象企業として挙げられていますが、国内で製造された装置の受け取りを米国の法律で阻止することはできません。中国がまだ製造できないEUV露光装置は先端製品向けには依然として入手できませんが、CXMTが競争する汎用DRAM市場では、輸出規制上のボトルネックが回避されたことになります。

●中国はAIアクセラレーターに使われる広帯域メモリ(HBM)を製造していますか?

商業規模ではまだ製造していません。HBMは複数のDRAMダイを垂直に積層し、シリコンを貫通する数千本の配線で接続する必要があります。この工程には高度なパッケージング能力と特定のプロセスノードが求められますが、CXMTはまだその体制を構築している段階です。2026年半ばの時点で、CXMTのウェハー生産能力のうちHBM向けは2%未満です。同社がHBM3Eの量産を始める目標時期は早くても2027年で、SKハイニックスやサムスンが現在出荷するHBM4より1〜2世代遅れています。韓国のHBMにおける優位性は少なくとも今後2〜3年は維持されるとみられており、アナリストがHBMの利益率を、AI時代に中国との競争からサムスンとSKハイニックスを守る主要な要因とみているのはそのためです。

元記事: Samsung, SK Hynix Plunge as China’s DUV Lithography Machines Enter Service

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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